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龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略(続)
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家族の絆

「あ、お父さん。今ちょっと大丈夫?」



次の日、豊姫は父親であるアディーニに電話をしていた。

これから会えないか、と。



「お母さんとかお兄ちゃん、今日はお仕事だよね」


『そうだ。少ししか時間が取れないが、構わないか?』


「うん、少しだけあれば十分だよ。あと私の他にもう一人お客さん連れて行くね」


『分かった。家で待っているぞ』



豊姫は電話を切ると丁度そこへ翡翠の夏用の制服を着た舞香が部屋に入って来た。



「あなたのお父さんと予定は取れたかしら」


「少しの間会社から来てくれるって」


「分かったわ。さて、場所を教えなさい。転移で飛ぶから」



豊姫は自分の住所を舞香に言うと彼女はすぐさま携帯を操作して場所を特定する。

そこの地域を頭に入れると舞香は端末携帯を見ながら術式を描き始めた。



「か、片手でしちゃうんだ…」


「私がよく行く場所程度なら高速詠唱で行けるわよ。ただ今回は初めて行く場所だから仕方なく作ってやっているのよ」


「あ、そう言えば舞香さんを家に呼ぶのは初めてだったね」


「そうね。さ、行くわよ。私の手を掴んで」


「う、うん」



相変わらずの一流っぷりに舌を巻く豊姫に気付かず舞香は携帯をポケットに入れると術式を起動した。



「着いたわよ。ここでいいのね?」


「わぁ、転移なんて初めてだけど、本当に一瞬なんだね」


「私の話し聞いてないわね……まぁ合っているようだし、いいか…」



転移に驚く豊姫に舞香は呆れる。

本当にこれから死んでいく者のテンションなのだろうか。



「お父さんはまだ来てないっぽいね。車ないし」


「そう、なら中で待ちましょうか。暑くて敵わないわ」



自分の家のように舞香は門を開けて中へ入って行く。

豊姫はその行動に舞香らしさを感じてくすりと笑う。



「なんだか和風ね。私の家は西洋のお屋敷だけれど、あなたの家は和風なのね」


「元の家はお母さんの家だからね。そこにお父さんがやってきて、三原財閥が大きくなった時にリフォームしたの」


「もう原型ないような気もするけれど」



玄関で靴を脱ぐと舞香は漆塗りの木の床や木の壁を見て感心する。



「こっちだよ」



柱時計を見ていた舞香に先へ行った豊姫が呼びかける。

舞香は豊姫に案内されて和室に入ると、すぐに豊姫は舞香にお茶を出した。



「ここはお客様が来た時に使う部屋なの。まぁ大体来るのはお父さんの会社の関係者ばっかだけどね」


「良い部屋ね。ここで一日中ゲームしていたいわ」


「あはは……舞香さんらしいね」



出された煎餅とお茶をすする舞香はご満悦のようだ。

そこから数分後、玄関の扉が開く音がした。



「あ、お父さんだ。呼んでくるね」


「ええ、行ってらっしゃい」



そして豊姫はアディーニを連れて部屋に入って来た。

豊姫は舞香の隣に座り、アディーニは彼女たちの向かいに座る。



「どうも、私は豊姫の父である三原アディーニだ」


「こんにちは。私は火神崎舞香と言います」


「いつも娘とよくして頂いてこちらとしては感謝の言葉しかありません」



アディーニは社交辞令を済ませるとサングラスの奥で豊姫を見た。



「あのねお父さん、落ち着いて聞いてね」


「私からもお願いします。どうか、彼女が最後まで言い終えるまで何も言わずに聞いていてください」


「分かった。言ってみろ」



豊姫だけじゃ頼りないと思った舞香もアディーニに頭を下げてお願いする。

実際アディーニも舞香が何か言わなかったら『内容によっては』と言いかけていた事もあり、舞香の援護射撃は大きかったようだ。


そこから豊姫は舞香に説明した時よりも詳しく、玲奈の天狐が告げた宣告、未来視について説明した。

その間アディーニは何も言わずに彼女が言い終えるまでしっかりと聞いていた。



「こんな感じなんだ…」


「……舞香殿、これは本当ですか?迷信などではないですか?」


「本当です。アディーニさんも魔術師である以上神話の獣、魔物について多少なり知識はあると存じます。そこで申し上げますが、神話の時代に生きた獣には現代では到底説明が付かないような能力を持っているものがたくさんいるのです。私のパートナーリヴァイアサンは冥界の扉を開く事だって出来ます。それがどのような原理で起きているのか、そんな事一生かかっても分からないだろうし、娘さんのペガサスの加護も同じです。何故同じ攻撃に対して耐性を得ることができるのか。それに倣い未来視だってこれからの延長線上にあるのです」


「ふむ……お前と舞香殿が私を騙そうとしているわけではないようだな」


「だ、騙したって何の得もないよ」



豊姫のこの時本当に舞香を連れてきて正解だと思った。

あの理屈でしか通らないような父親が納得したのだ。きっと自分の力だけでは怒られて終わりだっただろう。



「分かった……とりあえずその天狐の予言を信じるとしよう………それは外れないのか…?」


「外れません。天狐は神の領域にまで昇った狐です。お告げを聞く神の使者として嘘偽りを言える立場ではないのです」


「……豊姫…お前はどうしたいのだ…?何故私にこの事を知らせたのだ…」


「お父さんに頼みがあるの。お父さんは紅哉くんを知っているよね?」


「あぁ……一度だけ家に遊びに来た少年だろう?」



豊姫の言葉を聞くアディーニは辛そうだ。

それも無理はないだろう。娘が死ぬことが既に決まっているなど、親が聞きたくもないはずだ。



「私と紅哉くん、結婚するつもりだったんだ」


「………そうか……そうかそうか…」



アディーニは俯いて身体が震えだした。

見えにくいが、舞香の位置から見えた彼は泣いていた。



「もう結婚できないようだけどね。でも、まだやれることはあるんだ」


「やれることだと…?」


「確率は物凄く低いけど、大丈夫だと思う。なんだか分からないけど、成功すると思うんだ」


「それはなんだ…?お前がやりたいことなら何でも協力するぞ」


「あのね、お父さん。舞香さんに代理出産を頼みたいと思うの」


「代理出産…?」



舞香はその時あの夜に豊姫が言った言葉を思い出した。



『なら、舞香さん。私の代わりに紅哉くんの子供を産んでくれる?』



そう彼女は言った。



「私の受精卵を冷凍保存してもらうの。私が死んじゃったら……未来にいる私の子供…理沙が最初からいなかった事になっちゃうからね…」


「可能なのか…」


「はい。今日の午前に知り合いの医者に聞きましたが、今の日本の技術なら10年間中身の受精卵を死滅させずに保存しておくことが可能のようです。ですが……そのためには莫大なお金が……」


「金の事なら心配するな。このアディーニ、やっとお前の力になれるようだ…」


「お父さん……」



顔を上げたアディーニは豊姫を見た。



「いつも仕事ばかりで遊んでやれず、お前が三原財閥の事を嫌っていた事はよく覚えている。だが、やっと使い道のないあの紙切れが意味を成す時が来たようだ」


「アディーニさん。私が以前からお世話になっている腕のいい医者を紹介します。きっと彼なら豊姫の願いを叶えてくれるはずです」


「あぁ、分かった。舞香殿、娘の願いを聞いてくれてありがとう…!本当に…!」


「わ、私はただお兄様の悲しんだ顔が見たくなかったのと親友の力になりたかっただけですよ」



アディーニは社交辞令のような下げ方ではなく、本当に心から感謝が籠った頭の下げ方に舞香は柄もなく慌ててしまう。



「お父さん」


「なんだ」


「大好きだよ。私を産んでくれてありがとう」



いつも浮かべている笑顔ではなく、肉親にだけ見せる本当の笑顔を舞香は見た。



「う、うおおおおおお!!豊姫えええええ!!」


「わっ!?お、お父さん痛いよ」



テーブルを倒してアディーニは豊姫を抱きしめた。

言葉では嫌がっているように見えるが、豊姫は満面の笑みを浮かべて自分の父親と抱擁を交わした。

今まではまらなかったパズルのピースがやっと自分のあるべき場所へ戻った。

そして完成した絵は家族の絆だった。


舞香は抱き合っている二人を穏やかな表情を浮かべてみていた。



『いいものね。家族ってものは』


『舞香……』


『私たちもいつか戻れるかしら』


『ええ、その時はもうすぐですよ』


『ふふ、そうね』



今日も1日が過ぎて行く。

それは明確な復活の狼煙が上がり始めている事を示していた。

この龍者を書き始めてから1年ですかね。あの時は本当にただ書きたい事を書き綴っていましたが、今では色々なキャラクターを魅せることや、少しくすりとするような笑いを入れるようになった?と思います。

まだまだ若輩者ですが、私が自分の書いた小説に成長させられているんだなぁって改めて思いました。まぁ誤字とかいまだにありますが……。

小説を書くことがこんなにも楽しいと感じ始めたのは本当に最近のような気もします。

色々なキャラクターが笑いあったり、戦いあったり、悲しみあったりと自分だけの物語が今自分が書いているのだ、と。明確に意識したら急にやる気が盛り上がってきて『絶対に完結させてやる!!龍者をより多くの人に見て貰うために!』となんだか恥ずかしいくらいやる気に満ちていましたよ。

あれ、なんだか最終話の後書きのようになっていますが、どうもこの話のせいですね。

豊姫が迫りくる自分の死にどう立ち向かっていくか、終わりに向かう彼女は悲観などせずに最後まで笑い続ける。

彼女の強さが見えた話だったと思います。見えなかったら私の力不足ですね……まだまだ精進が足りないです。

では、今回もここらへんでドロンさせていただきます。

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