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龍の血を引く者  作者: また太び
10章 龍族の侵略(続)
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偶然の出会い

「あっれ~持ってきたよね、私」



瑠璃は無事更衣室に戻るなり自分のバックを漁っていた。



「あ!あったあった!」



中から黒いケースを見つけて中を確認する。そこには渡辺に選んで貰ったカメラがちゃんと入っていた。



「よしよし!戻ろう!」



ウキウキの気分で更衣室から出て走り出すとカメラに注意が行っていたせいか、人とぶつかってしまった。



「お?いてぇな」


「あっ!ご、ごめんなさい!」


「ん?どうしたよ?」


「うは!すっげぇ可愛い子じゃん!」



肌が見事に焼けた男3人組みが一斉に振り返って瑠璃を見る。



『うわ…チャラい……』



瑠璃が半眼になってしまうほどで、皆ちゃんと耳にピアスを着けており瑠璃を舐め回すように見ていた。



「なぁなぁ君一人?」


「え?えっと、彼氏と来ていますけど」


「かー!彼氏いんのかよ!」


「いやいや、こんな可愛い彼女放っておくなんて酷い彼氏じゃね?なぁ俺達と遊ぼうぜ」


「いや、えーっと…」


『だるいなぁ……どうしよ…これ急いでいるって言っても諦めないパターンだよね…』



瑠璃を必死に誘う彼らに目もくれず彼女は辺りを見渡す。



『だ、誰か待ち合わせに使えそうな人は…』



だが、周りには花火の場所取りをした親子やカップルばかり。今更動いてくれそうな人などいそうにない。



『………………ッ!!いたあああああ!!』



そして瑠璃は一人の少年を見つけた。

誰かを探している素振りを見せる少年は瑠璃が求める最高の条件相手だ。



「あ!いたいた!ごめんねー!彼氏迎えに来てたみたいだから、じゃあね~!」


「ちっ、やっぱいたのかよ」


「あ~あもう行こうぜ」


「だな、他の子見つけに行こうぜ」



瑠璃はダッシュしてその少年に向かうのを見るなり男たちは舌打ちして去って行く。



「ごめん!待った!?」



その少年とは―――――。



瑠璃が彼を発見する少し前。

彼、その名も辰己紘一。彼は章仁たちの都合でこちらにまで来ており『せっかく海があるんだから遊びましょう』という綾香の提案で知佳、綾香、グランベスと遊びに来ていた。

しかし、彼女たちに振り回され続けた紘一はいつの間にか3人を見失ってしまった。

例え怪しい人が寄って来ても武道に心得がある綾香と龍族のグランベスがいるので大事には至らないと思うが、何より知佳が気がかりだった。



「やばい、完全に見失ってしまった……。携帯も持ち歩いていないしなぁ……困った困った。3人を見つけた時のための文句でも考えておくか」



その時紘一の右腕に軟らかい感触が当たる。



「ごめん!待った!?」


『胸でか!?じゃなくて!!』


「え!?待った!?」


「ごめん、今ちょっとナンパされてて……彼氏の振りしてね…」


「あぁ……なるほど…」



紘一は一瞬目を白黒させると瑠璃から少し離れた先にいる3人組の姿を認めて状況を理解する。



「もうどこ行ってたんだよ。こっちは走り回っていたんだぜ?」


「ごめんごめん、カメラ探すのに手間取っちゃって」



実際紘一も探し人なわけで、3人に出会った時の文句は既に準備していたのがまさかここで役に立つとは思わなかった。



「ほら、行こ?花火見るでしょ?」


「あ、あぁそうだな」



彼女など出来た事がない紘一は用意していたセリフ以外となると急にドギマギしてしまい、少し言葉に詰まってしまった。



「で、俺はどこまで送れば?」


「私の彼氏の近くまでお願いしようかな。また絡まれたら嫌だし」


「まぁそうだよな……」



3人組の姿が消えると紘一は瑠璃に尋ねていた。

こちらも3人を探しているわけで、余り時間を食いたくなかった。



「君の名前は?」


「あ、えっと、辰己紘一って言うんだけど」


「なるほど、辰己くんか~。さて次は私の番だね!驚くなよ~。何と私は須野原瑠璃なのです!」



えっへんと胸を張る瑠璃に紘一はポカーンとしてしまった。



『やばい…頭が変な人に絡まれた…』



「まぁ幻術かけているから辰己くんには黒髪の女の子にしか見えないだろうけどね~」



ポカーンとしている紘一を見て瑠璃はくすくすと笑う。



「紅くんのところまで連れて行ってくれたらお礼に少しの間だけ顔を見せてあげるよ。だから、それまで私をエスコートしてね、彼氏さん」


「う、うっす!」



悪戯っぽく笑う瑠璃に紘一は顔を赤くしながら返事をした。

例え相手が本物のアイドル須野原瑠璃じゃなくとも何せそれでも綺麗な女の子なわけだし、彼氏という言葉が紘一の頭の中にやけに響いた。



「そう言えば、辰己くん見つけた時、君も誰か探している様子だったね」


「えっと、連れが3人いたんだけど、3人とはぐれちゃって…」


「うわぁ……この人盛りの中はぐれちゃったら、なかなか見つけるのは難しいと思うけど」


「あいつらが俺を引きずり回すのはいけないんだ………あれ?なんで笑っているの?」


「いや、ちょっと私の彼氏に似ていてさ」


「瑠璃さんの彼氏さんに?」


「うん。私とか、他の子皆に連れ回されるような男の子でね。それでいっつもクタクタになっているんだ~」


「あぁ……その人と俺いい友達になれそうだ…」


「かもね。辰己くん、なんだか紅くんと雰囲気似ているから」


「紅くん……その人の名前は?」


「えっと…秘密だよ?これ他の人に言ったら永久幻術かけちゃうからね?」



割と本気でそう言っている瑠璃に紘一は何度も無言で首を縦に振る。



「火神崎紅哉。それが私の彼氏だよ」


「火神崎……紅哉…」



章仁から聞いた龍人の名。

そしてもし目の前の人物が本当に須野原瑠璃ならばこの人も龍人となる。

紘一は以前章仁にこう言われていた。


『君の正体は出来るだけ隠しておきたいんだ。まぁ偶然バッタリ須野原さんや紅哉君や舞香さんに会ってしまったら仕方がないんだけどね。彼らも龍人、もしかしたら君の正体を知ってしまうかもしれない』


と、言われていた。

紘一の額に嫌な汗が滲む。自分の正体がバレているのか、それともバレていないのか。



「どうしたの?汗びっしょりだよ?」


「い、いや!なんでもない!」



顔を覗きこまれて紘一は綾香の拳を避けるが如く素早く後方へ下がる。


ザァアアア―――!!!と擬音がつきそうなくらい勢いよく下がったもので、瑠璃はそれを不思議そうに見ていた。



「さ、先を急ごう。歩いていたら俺も3人と会うかもしれないし」


「そうだね。花火まで余り時間がないし、早く紅くんの所まで戻らなきゃ」



幸い瑠璃はそれ以上追及してこなかった。

瑠璃自身も早く紅哉の所に戻りたいのは同じ。別に紘一の怪しい行動をこれ以上追及する意味などなかった。



「やっぱりここらへんが花火が一番よく見れる場所なのかな。人いっぱいでなかなか進めないよ」


「そうだなぁ……はぐれないように気を付けて行こう」


「うん!なら、こうしなくちゃね」


「いッ!?な、ななななにを!?」


「え?はぐれないように手を繋ごうって事だよ?紅くんに会うまで辰己くんは私の彼氏さんだからね」



瑠璃と手を繋いだ紘一の心臓は爆発寸前だった。

隣では機嫌がいいのか、瑠璃は鼻歌などしている。


実際瑠璃は紘一の反応を面白がっているだけなのだが、当の紘一は心臓が過労死してしまうほど心臓がバクバク動いていた。



「ん~……この辺だったと思うんだけどなぁ…」


「こ、この辺っすか!ど、どこでしょうね!」


「辰己くんどうしたの?挙動不審だけど」


「な、なんでもないよ!あはは!あはははは!」



紘一も紅哉の姿を探すが、それよりも紘一の手を握る瑠璃のせいで全然集中できていない。

しばらくそんなやり取りを続けていると、瑠璃の表情が輝く。



「あ!見つけた!」


「ホントか!?良かったな!」


「うん!ありがとね、辰己くん」


「い、いや、俺はただついていただけだし」


「ふふ、それでも私は辰己くんに感謝するよ。さて、最初に言った約束だね」



瑠璃は紘一に『私が目を閉じてって言ったら5秒間目を瞑っていてね』と言う。



「わ、分かった」


「それじゃ、目を瞑ってね」



紘一は言われた通り目を瞑った。



「認識対象から辰己紘一を外すっと」



そんな瑠璃の声が紘一の耳に届いてから5秒間。なんだかやたら長く感じたが、しっかりと心の中で5秒数えてから目を開けるとそこには―――。



「やっほ、これで信じて貰えたかな?私がアイドル!須野原瑠璃でーす!」


「ッ!?ほ、本物!?う、嘘…マジで!?」


「うんうん、マジマジ。ん~辰己くんが携帯持っていたら写メ撮らせてあげたんだけど、残念だったね」


「い、いや!俺は見れただけ十分だ!すげぇ!感動する!」


「ありがと~。それじゃあね。辰己くんも早く3人見つかるといいね」


「うっす!」



瑠璃は最後に紘一へウィンクすると座っている人たちの間を通りながら火神崎紅哉がいる元へ帰って行った。



「さて、俺も早く3人見つけるとしますか」



彼女の姿が見えなくなるまで紘一は目で追っていた。

そして彼女の姿が見えなくなるとこれから3人を探す手間にため息をつきながらも、本物の須野原瑠璃と手を繋いだという出来事に思わずにやける。



「あ!紘一さーん!!探しましたよー!」


「紘一お兄ちゃん、やっと見つけた」


「全くどこを歩いていたのだ。屋台巡りを中断してお前を探していたのだぞ」


「それはこっちのセリフだ。こっちは走り回っていたんだぞ」



当初より予定していたセリフを出せて紘一は内心で苦笑いをする。



「なんだか面白い奴と歩いていたようだが、紘一」


「おい、グランベス」


「分かっている。これは紘一と私の秘密だな」


「あー!隠し事は駄目なんですよー!アヴェンジャーズは皆家族です!」


「隠し事よくないよ」


「いや!大したことじゃないって!それよりもそろそろ花火が始まるそうだ。早いとこ場所見つけて見ようぜ」



瑠璃が歩いて行った先をグランベスは面白そうに見ながら腕を組んでいた。

その様子を見ていた綾香と知佳が頬を膨らませて紘一に抗議するが、さっさと切り上げたい紘一は花火の話題を出して回避する。



「そうでした!紘一さんを探していてすっかり忘れていましたよ!」


「私も花火見たいな~。花火なんて久しぶり」


「知識では知っているが、見るのは初めてだな」


「さっき歩いていたらいい場所を見つけたんだ。そこに行こうぜ」



紘一は知佳と綾香から焼きそばやたこ焼きが入ったビニール袋を持ちながら3人を連れて歩いて行った。




「ただいまー!やっと帰って来れたよ~!」


「お、帰って来たか。いま豊姫と話していたんだが、間に合わないと思っていたんだ」


「そうですね。それに祭りですから、瑠璃先輩絡まれていないかと心配で」


「大丈夫大丈夫!絡まれたけど優しい男の人にここまで連れて来てもらったんだ~」


「ほう?そいつは良い奴だな」


「紅くんと雰囲気似ててね。ここに来るまで少し話していたんだけど、よく女の人に連れ回されている感じがバッチリ出てた!」


「女難の相か……そいつとは良い友達になれそうだな…」


「年上でした?」


「うんとね~。歳は私達と余り変わらないかな~。むしろ年下に見えた。一言でなかなか言えないような人だったけど、また会えるといいな~」



瑠璃はカメラを脇に起きながら座る。



「そうだな。瑠璃、また会ったら連絡先聞いておいてくれよ。なんだか聞いた限りでは俺と同じ苦悩を持っているかもしれない」


「紅哉くんがそこまで言うなんて珍しいね。私も人見知りだけど、瑠璃先輩がそこまで言う人にちょっと興味が出て来たかも」


「だよね。また会えたら紅くんの家に連れて来よう!



瑠璃がガッツポーズを挙げた瞬間時刻は8時となり、海の彼方から夜空へ花火が打ち上がり始めた。



「お!始まったな!」


「シャッターチャーンス!だよ!」


「わぁ、綺麗。やっぱり花火はいいものだね」



その時誰もが夜空を見上げていた。

夜空に大輪を咲かせる花火は美しくも儚く、まるでこの世界の命の灯が消える事を表しているようだった。

今日私の地域で花火大会があったのですが、やっぱり花火はいいものですね。

花火が上がる際、アナウンスが流れますよね『続きまして~株式会社○○』とか。

あれすっ飛ばしてさっさとあげなさい、と言いたいです。

まぁ提供して貰っているのですから文句は言えませんが、その待ち時間が惜しいほど花火の美しさは異常ですね。

前日雨があり、今日も雨が降る感じだったので予定より早く花火が打ちあがりました。

しかし、天気は空気を読んだのか雨が降らず今年も夏の風物詩を見ることが出来ました。

家とかでやる花火もいいですが、やっぱりどかーんとでかいのがいいですよね。

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