紘一の新しいスクールライフ
紘一は決して頭がいいわけではない。
よって転校先の高校も極平凡の学校であり、東京にいくつもある公立の学校でしかなかった。
『ここが紘一の学校か。ふむ、昨日のところに比べれば数段劣るな』
『あそこは仕方がない。なんつったってあそこはエリート育成学校だからな』
校内では一部の除きパートナー呼び出しになっているため、紘一は朝からグランベスを呼び出さずにこうやって脳内での会話にとどめていた。
新しい制服を着こんだ紘一は『よし!』とネクタイを掴んで気持ちを入れ替えると堂々と歩きだした。
「失礼します。今日転校してきた辰己紘一と言うんですが」
「あぁ、聞いているよ。一度校長と挨拶をしてくれないかな」
「あ、分かりました」
職員室に足を運んだ紘一は恐らく教頭あたりの人物に連れられて校長室に入った。
「校長、辰己君がお見えになりました」
「おや?登校時間にはちょっと早すぎるんじゃないかな?まだ部活の朝練をしている生徒しかおらんよ」
「初日から遅刻はまずいと思いまして」
「いい心がけだ。君は我が校には珍しいAランク魔術師だ。是非その力を振るってほしい」
「はい!」
「よろしい。ところで辰己君はもう校舎内は見て回ったかね?」
「いえ、パンフレット程度です」
「なら、まだ君の担任の教師は来てないから少し歩き回ってみるといい」
「分かりました。では、失礼します」
紘一は校内地図を頼りに色々な場所を歩き回っていた。
『ふむ、これが一般の魔術育成学校なのだな。普通だ』
『あんな黒曜みたいな豪華さを求めるなよ。机だってこれでも良い方なんだぞ』
自分の教室となる1年1組に入る。
前いた教室は木の机であり、こんな綺麗なアルミの机ではない。
『それにこのアルミ式はな、下にローラーがついていて掃除のときはいちいち椅子を机に上げずとも押してやるだけで簡単に運べてしまうハイテク機能なんだ』
『ほう、なかなか面白い技術だな。人間はそこまでして楽をしたいか』
『楽をしたいんだよ。だから、機械だって生まれたんだ。』
『紘一にしてはなかなか真実を突いた言葉だな』
『た、たまには俺も言うさ』
グランベスに褒められた?紘一は少し照れながら窓際まで歩く。
『普通だけどこれがいいんだよ。俺が今いる場所だって普通じゃないんだしさ』
『なりいきでアヴェンジャーズに入ったが、今の心境はどうだ?』
『入って良かったと思っているさ。もちろん章仁さんがやっている事は社会的に見れば誰しもが悪と言うだろうね。それでも俺は章仁さんに力を貸したいと思う。いつか章仁さんが作る社会をこの目で見てみたいんだ』
『そうか。ならば私もお前に力を貸そう。前任者のグリフォンの代わりに私はなれない。だが、精一杯お前のパートナーとしての役目を果たそう』
『グランベスと出会えたのもグリフォンのおかげだと思っているよ。最後までデレなかったけど、グランベスと引き合わせてくれたことに俺は感謝している』
『紘一は面白い人間だ。このような人間いるからニルもリアも心を許したのだろうな』
『ニル?リア?』
『いや、私の独り言だ』
『まぁいいけど、そろそろ戻ろうか。時間が時間だ。この教室にも人が来る頃だろうし』
『知らない生徒が自分の教室にいたら不気味だ。職員室に戻るのだな?』
『あぁ、流石に担任の先生はもう来ているだろ』
紘一はポケットに手を突っ込みながら教室を後にした。
この学校で自分はもう一度やり直せるのか少し不安だったが、グランベスとならどんな事も乗り越えられる気がした。
「校長から話は聞いていたよ。お前、結構早く来ていたんだってな」
「はい。まぁ学校内を探索出来たので暇を持て余したわけじゃないです」
「ならいいけどよ」
担任は体育を担当する若い男の先生だった。
「俺はお前の担任となる花房凱だ。気軽に凱先生と呼んでくれ」
熱血ではなさそうだ。いや、熱血が好きというわけではないが、どこにでもいる普通の先生と言った所だ。
テンプレの挨拶と言っては失礼だが、もっとこう捻りを効かせた挨拶はないのだろうか。
「しかし、親の都合で転校してきたのか。なかなか大変だな。岡山からだろ?何かあったらすぐに俺に頼るんだぞ」
「その時は頼りにしますね」
章仁の筋書きだと紘一はどうやら親の転勤でここに転校してきた事になっているらしい。
親は既にいないが、沖田は何かと出張するためギリギリ合っていない事もないか。
色々とこの学校の説明を受けた紘一は遂に自分のクラスに入る事になった。
「では、俺が後から呼ぶからちょっと待っていてくれ」
しかしまぁ、転校生の噂はどこから漏れるのか、既に教室内から転校生の話しが紘一の耳まで届いてくる。
『お前ら静かにしろー!』
『凱先生!今日転校生来るんですよね!』
『お?そうだが、お前らどこで知ったんだ?』
『まぁまぁそれはいいから早く呼んでよ!』
『うむ、まぁ外でいつまでも待たせるのは悪いからな。おーい!入ってきていいぞ!』
遂に来た。
紘一は深呼吸をすると教室の扉を開けて中に入った。
先ほど騒いでいた喧騒はどこに行ったのやら、今はクラスメイトからの視線を一線に浴びている。
「んじゃ、軽い自己紹介をしてくれ」
「はい」
紘一はチョークを借りて黒板に自分の名前を書く。
「辰己紘一です。えーと、誕生日は6月3日で趣味は運動です。何か味気ない自己紹介ですが、これからよろしくお願いします!」
最後は声を大きくして頭を下げた。
クラスからは溢れんばかりの拍手が巻き起こり、紘一を優しく迎えてくれた。
「1時間目はホームルームだ。辰己に質問がある奴はじゃんじゃん質問していけ」
「え!?ナニソレ!?」
「はいはーい!辰己くんって彼女いるの?」
「い、いない!」
「運動って何してんの?」
「基本全般的に。筋トレやら、マラソンやら、球技も」
「兄弟はいる?」
「いないけど、従妹と一緒に暮らしている」
「は~い!ねぇねぇ!――――」
こうして紘一は高校デビューを果たした。
「ふぅ、やっと一日が終わったか……」
『これが授業というものか。また人間についての知識が深まったな』
「お前は楽しそうだったな。要塞崩しの時も皆に驚かれてたし」
「まぁな。人間の姿になれる魔物は少ないからだろう」
「おいおい、校内では食堂を除き、他はパートナー召喚禁止だぞ」
「まぁまぁ細かい事を言うな」
元から勉強が余り好きではなかった紘一は初日からダウンしていた。
もう夕方になっており、外では野球部なのか、元気のいい掛け声が聞こえてくる。
紘一の学校である月見高等学校の制服に身を包んだグランベスは窓から顔を出す。
先生に見られたりしたら咎められないか一瞬怖くなったが、今の姿は人間なのでそこまで気にすることもないかと紘一は一人で納得する。
「要塞崩しに然り、人間の作った遊びは面白いものだ。それにお前のクラスの女子からこんなにたくさんの飴を貰った」
「そりゃ魔物とは言え、こんな美少女だったら誰だって興味が出るさ」
「ふふっ、もっと褒めてもいいんだぞ?」
悪戯っぽい笑みを浮かべてグランベスは机に突っ伏している紘一に顔を近づけた。
「からかうなよ」
「紘一、お前照れてるな?」
「う、うるさい」
「光栄に思う事だな。私が美少女で。私の龍族の中ではもちろんブサイクな奴もいたからな」
「あ、さいですか……」
携帯のバイブが鳴り、紘一は端末を開いた。
そこには綾香が『知佳さんと校門で待ってます!一緒に帰りましょう!』という短い文が書いてあった。
「知佳と綾香さんが待っているそうだ。帰ろうぜ」
「うむ。では、行くとしよう」
グランベスはもう一度だけ夕日に照らされた校庭を見てから霊体化した。
紘一は机の横に掛けていたカバンを手に持つと欠伸をしながら教室を出て行った。
紘一の新しい生活は始まったばかりだ。
では、今回も私が思いついた事を淡々と語っていく後書きです。
先の話を見たい、という方は次の話しへゴー!です。
では、物好きな皆さんのためにも今回も何か愚痴りましょうかね。
私が小説を読んでいる時にしていることについて一つ話します。
私は小学生のころからラノベを読んでいるような暇人だったのですが、あぁ、運動は出来ますよ。小学は6年間サッカーの中学はバレーボール3年間やってましたから。
えと、話がそれた。
それで高校生あたりから『ただ読むだけじゃつまらないな』と何故かそう思った私は、まずヒロインや主人公の登場人物に対して脳内でセリフを変換して読んでいたのですが、ここ最近は更に場面ごとの場所によってBGMを付け足すという荒業?まで出来るようになりました。
いや~これがなかなか面白くてですね。セリフじゃない文はFateの言峰さんのようなボイスで変換して楽しむのも面白いものです。
皆さんもただ小説を読むだけでなく、好きなBGMやナレーションを付けて自分の世界を展開しながら読むとさらに楽しめるのではないでしょうか。




