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龍の血を引く者  作者: また太び
10.5章 新たな龍人
132/162

日常から非日常へ

「え?グランベスが制服を着たい?」


「ええ、まぁ……俺の制服姿が気に入ったらしく、自分も着たいと」


「着させろ」



アヴェンジャーズ生活2日目の紘一は、章仁がいる幹部の部屋を訪れていた。

一応上司という事で敬語を使う紘一は少し慣れていない様子だ。



「そうだね~グランベスの今の服はちょっと味気ないもんね」


「龍の里の服だからな。龍族にファッションを求める時点で間違っているぞ」


「うんうん、大分この世界の事を理解してきたようだね。確かにその服だと街中に出た時目立っちゃうよね。それじゃ、紘一君の学校の制服でいいかな?一緒に頼んでおくから、後でお菊さんにサイズ測ってもらっておいてね」


「了解した」


「そういう資金どこから落ちて来るんですか…」


「ん?秘密だよ」



ここでまた秘密と言われた紘一は納得こそ行っていないが、納得した表情で部屋を出て行こうとした時、章仁に呼び止められた。



「何でしょうか?」


「紘一君の家系が物凄く厄介な事になっているから、こちらで全て済ませて来たよ。借金が8000万とかこれどうしたんだい?まぁ金の心配はいらないけどさ」


「え……そんなに膨らんでいたんですか…?」


「紘一君の親御さん。闇金掴まされたっぽくてね、これ酷い契約内容だよ。利子率の項目が最後の下の方に小さく書いてあったのは笑えたもんだけどさ。まぁ本田さんに立ち会い人になって貰って相手の方々にはきついお仕置きと、本当の返済額を払って来たからこれで君はもう借金に悩むことはない」


「ありがとうございますッ!」


「これじゃ人生まるまる全部借金地獄になる所だったね。君が払ってもそれを超える利子率で結局増額される悪徳商売だ」



紘一は章仁になんと言っていいか分からなくなってしまった。

毎日来る日も来る日も借金に追い立てられ、ストレスが溜まる日々。それがもう来ない。



「あと、君の一応伯父さんと会って来たけど、あの人も酷かったね。借金上等の構えだったし、社会に復帰しようとする気が全くない」


「俺の親族は全員ダメな人達ばかりですけど、従妹のあいつを残してきた事が少し心残りです」


「あぁ、知佳ちかちゃんだっけ?確か綾香ちゃんと同い年だったね」


「はい。知佳も俺と同じ境遇でして、苦しい貧乏生活が続いています」


「ん~……助けたいのは山々だ。少し嫌な言い方になるけど、君の場合両親が亡くなっているからあっさり僕らの組織に来れた。でも、知佳ちゃんの場合はまだ両親が生きている。彼女はきっと酷い親だろうと自分の親を見捨てるような事はしないはずだ」


「それは分かっています。だから、何とかしてあげたいのですが…」



章仁は少し考えていると、何か閃いたのか紘一に向き直った。



「なら、働けばいいよ」


「働く?」


「僕らの組織はもちろんボランティア団体じゃない。幹部にだって給料は出るし、団員にだって給料は出る。綾香ちゃんの場合は小遣い的な感じになっちゃってるけど、君は高校生だ。そこで少し働いてもらおうかな」


「具体的には何をすればいいんですか?」


「グランベスは確かオリハルコンを生成できるんだよね」


「無論だ。消す事も出す事も可能だ」


「オリハルコンを僕らに分けてくれないか?紘一君と君の制服代や施設費やらを含めると軽くこんな感じに――――」


「なんつう額だ…!社長クラスでも払えるかどうか怪しいぞ!?」


「ふむ……まぁお前らが悪用しないのであれば提供してやらん事もない。それに私がダメだと判断したら分かっているな?」


「うん、それは承知している。君のオリハルコンの価値は1グラム5万円に匹敵すると考えている。それを弾薬にするだけで強力な武器になるし、今まで後回しにしていた遺跡探索も一気に捗るようになる」


「5万……」


「紘一君はグランベスが生み出すオリハルコンを運ぶ仕事だ。ささ、こちらでリィナには話をつけておくから行っておいで。君の給料で知佳ちゃんを助けるんだ」


「はい!俺頑張ります!」


「章仁、制服の件を忘れるなよ」



二人が出て行くと、章仁は外の景色を眺めた。



「紘一君とグランベスのおかげで僕らの組織はいずれ来る敵との戦いに大きな打点を持つようになれた。そして何より気になる点は、沖田さんの手紙には紘一君という人物はいなかったこと。これは………未来が変わっているのか、な…?」






「やぁやぁ!よく来てくれたよ!話は章仁から聞いたぞ。早速で悪いが、オリハルコンというものを見せて貰おうか」



機械音が常に鳴り響く開発部に足を運ぶと、上機嫌なリィナがグランベスに飴をあげながらポンポンと頭を撫でる。



「いいだろう」



グランベスは手の平を書類だらけの机にかざすと、何もない虚空から光の反射で七色に輝きを放つ鋼色の鉱石が落ちてきた。



『おおおおおおッ!』



リィナを含む研究員全員が声をあげた。



「チーフ、こんな鉱石見たことがないですよ!」


「あぁ、私もだ…!皆!早速解析に入れ!」


「はッ!さぁ!皆やる気を出せ!久しぶりの大仕事だぞ!!」


「ちなみに10キロだ。計算しておけよ」


「案外守銭奴なんだな……」



リィナにビシッ!と人差し指を突きだしてドヤ顔をするグランベスに紘一は呆れた。





「グランベス、これは何℃で溶ける?」


「熱では溶けんぞ。いいか、これを普通の金属だと思うな。これは全く別の私が生み出したオリジナルの鉱石だ。今から書くことをメモっておけ」



グランベスはない胸を張ってホワイトボードに綺麗な字で研究者たちにオリハルコンの扱い方を説明していた。



「私の鉱石を加工するためには熱ではなく、酸が必要になる。それも強力な酸だ」


「あぁ、この前の虫と戦ったとき溶けていたもんな」


「ただの鉱石だけでは意味がないからな。幸い私がいた龍の里には酸を吐き出す龍族が多く存在していた。だから、加工も容易だったのだが、人間世界に私の鉱石を溶かすほどの酸が存在するか、それは分からんな」


「ふむふむ……まずは酸性の液体からの調達になるか……酸となれば扱いがさらに難しくなるな。加工後も気を付けねばならない」


「そうだ。加工後の酸に触れれば瞬く間に手など消滅するぞ。溶かすと言えば簡単だが、そう簡単に私の鉱石を扱えると思うなよ」


「OKOK。私の知り合いの研究者に掛け合ってみよう。そうなると、酸性にも耐えれる新しい製鉄所が必要になるな。ふぅ、やることだらけでお姉さん嬉しくて涙が出るよ」



リィナは一通りグランベスが書いた事をメモすると、立ち上がって研究者たちに指示を出し始めた。



「加工後の酸の浄化は熱する事で完全に消える。つまり、弾薬を作りたれば、まずは型を取ってから一気に2000℃の炎で仕上げる事だ」


「分かった。それを含めて加工に移るとしよう。幸い酸に強い鉄ならばこの世に数多く存在している。鉄まで溶かす酸となればなかなか難しい話になるが、時間をかけてゆっくり溶かせば問題はないはずだ」


「うむ。ひとまずはそれでいいだろう」



忙しそうに研究室内を走り回る研究者たちの顔は生き生きとしていた。

グランベスは製鉄に興味があったのか、それとも彼女の故郷では鍛冶師だったのか、再び自分の鉱石を加工できる事に嬉しがっているように見える。

口元釣り上がっているし。



「大量生産が難しくなる事は仕方がないな。これは隠し武器シークレットウェポンとして扱うことにしよう」


「チーフ!機材発注は10日後になるとのことです!」


「なに!?遅すぎる!5日で済ませろ!」


「む、無理ですよ!」


「いいからやれ!これが実用段階になるかならないかで8月1日の命運が決まるんだぞ!」


「わ、分かりました!」


「8月1日?リィナさん。何かあるんですか?」


「おう?紘一君は章仁から聞いていないのかい?」


「えっと…何も言われていないですね」



リィナは一瞬言っていいものか悩んだが、グランベスがいる事から言ってもいいと判断した。



「8月1日にバハムートっていう龍族の王が攻めて来るらしいんだよ」


「なに…?覇龍王がか?」


「グランベス、それはなんだ?王様って聞こえたけど」


「文字通り我ら龍族の頂点に立つ龍王だ。それが何故………」


「私にも分からないけどさ、章仁とあっちの龍人は迎え撃つつもりなんだよ。だから、今こうしてオリハルコンの早く実用段階に持っていかなきゃならないんだ」


「ほう、私の他に龍族が生きているのか」


「あぁ、ファーヴニル使いの火神崎紅哉とリヴァイアサン使いの火神崎舞香っていう男と女だ」


「ニルとリアが生きていたか!はっはっは!面白い!僅か2体で龍王に挑むか!いいぞいいぞ!私もバハムートは昔から嫌っていたものでな。バハムート討伐、私も全力で協力しよう!」


「詳しい話は章仁に聞きに行け。今日の所は準備で全て終わりそうだから、君達はもう下がっていいよ」



とリィナに言われた二人は再び章仁がいる幹部の部屋を訪れた。



「言い忘れていたね、ごめんごめん」


「章仁、ニルとリアだけで勝てると思っているのか?」


「ん?龍族はファーヴニルとリヴァイアサンだけじゃないよ?情報によるとあとヴリトラ、神龍、グリンデル、アジダハーカがいるようだ」


「ほう、龍神に邪龍王か。名持ちの有名な奴ばかり揃っているな」


「それに君を加えればそれなりに勝機はあると僕は見ている。神の攻撃でも壊れなかった建造物を作った君だ。バハムートの攻撃も防げるんだろう?」


「無論だ。欠けはするだろうが、防ぐ事なら出来るぞ」


「十分だ。でも、大量生産は難しいんだってね?そうなると、部隊長クラスにしか持たせられないか……」


「私と同じ鉄に精通している龍がいたが、彼はもうこの世にはいない。もし、彼がこの場にいたのなら大量生産も可能だった」


「ちなみに名前は?」


「鉄鋼龍ヴァルガン。全身鋼鉄に覆われている鋼の龍でな。私が生み出したオリハルコンを溶かして彼が物を作っていた。素晴らしい鍛冶師だったよ」


「聞いたことがないね……海外にいる僕の仲間にも連絡しておくよ。もしかしたら君みたいにまだ見つかっていないだけで、眠っているのかもしれない」


「見つかればいい程度だ。ここの人間の技術は素晴らしい。ヴァルガンがいなくともそれなりの数は作れるだろう」



グランベスは一瞬だけ悲しそうな表情を見せた。



「では、失礼します」



バハムート襲撃を知った二人は自室まで終始無言だった。

紘一は昨日まで一般人だったわけで、こういう非日常に対して絶対的に耐性が足りていなかったのだ。

いきなり章仁から『バハムート止められなかったら人類(ぼくら)終わりだね』なんて言われて頭が追いつくわけがない。


自室に戻るなり紘一はベッドにダイブすると枕に顔をうずめた。

グランベスは椅子に座って先ほどから考え事をしているようだし、紘一は自分はとんでもない事に巻き込まれつつあることを再認識する。



「ところで紘一。お前の従妹の知佳という人間はどこに住んでいるのだ?」


「なんだよ藪から棒に…………知佳は秋葉に住んでいるよ」


「秋葉か………近いではないか。会いに行かないのか?」


「会いに行ってどうするんだよ」


「いやなに、お前が悩んでいる様子だったからな。今自分が置かれている状況をもう一度確認するためにも気分転換として外に出てみては、と提案しているだけだ」


「気分転換のためだけに知佳に会いに行けるかよ……秋葉だぞ?電車乗って行かなきゃダメじゃないか。俺がそんな金持っているかよ」


「ふむ、ここの通帳には結構な額があるように見えるが」


「なんだって!?ちょ!それ貸して!」



グランベスが座っている椅子の机には一通の手紙と通帳とカードが置いてあった。

紛れもない八十八銀行のカードだった。


グランベスはそれらを手に取って紘一に渡すと一緒に読むためにベッドに腰掛けた。



「なんて書いてあるのだ?」


「待て待て、俺が今読む」



やぁ紘一君。君には幹部としての軍資金をプレゼントしたいと思う。君には相当な額を既にかけちゃっているわけだけど、龍がもたらす価値は人間のお金には当てはまらない程の価値が生まれると僕は考えている。

そこでお小遣いってわけじゃないけど、紘一君には軍資金として200万円が入ったカードと通帳を渡すよ。自己管理はもちろんだけど、無駄遣いはご法度だ。

今度から君の働きによって振り込まれる額が変わって来る予定だから、たまに通帳を通して残高を確認しておくといいよ。

んじゃ、君の働きに期待している。篝 章仁より



「なるほど……軍資金ってわけか」


「まぁとりあえずこれで秋葉には行けるのだろう?」


「行ける…か………2年3年会ってないけど、行ってみるのもいいかもな」


「では、行くとしよう。行動は早めに起こすべきだ」


「そうだね。よし!外出許可を取ってくる!」



本日3度目の章仁との会話を終えた紘一は、このアジトの出入りする方法を綾香に教えて貰うと同時に着いて来てもらう事になった。

幹部と言っても新人には変わりはない。変に後をつけられてアジトの場所が発覚などしたりしたら目も当てられない。



「ここですよ。ここの転移術式で出て行くんです」


「これどこに出るんだ?」



車庫の中央に巨大な魔法陣が淡く輝いていた。

綾香に連れられて魔法陣の上に立つと、紘一はどこに出るのか猛烈に気になった。



「え?ランダムですよ?何度も同じ人がその場所に出入りしていたら怪しまれるじゃないですか。だから、東京の街全土に小型の術式を貼ったカードを何枚も壁に貼り付けておいて、どこに出るのか分からなくさせるんです」


「ん~……あんまりややこしい場所に出なければいいけどな……」


「それはちょっと保証が出来ないですね。ホント私でも困っているくらいにランダム性が凄いですから」



綾香はそう言って紘一の手を握った。

生まれてこの方従妹にしか手を握られた事がない紘一は不覚にもドキリとしてしまい、顔が赤くなるのを感じる。



「どうかしましたか?」


「い、いや!なんでもない!それより早く行こう!」


「はい!では、転移!!」



綾香の掛け声と同時に紘一は奇妙な浮遊感と共にアジトを後にした。


確かダンガンロンパで日常編と非日常編でわかれていたな~と思いながらタイトルを考えていたまた太びです。

私アニメは見てなくて小説版、ゲームの1と2を読んだ、プレイした者ですが、1の衝撃は凄かったなァと今でも思い出せます。みんな個性ある人たちばかりで、お前……消えるのか……?と思うキャラも多かったです。

何より捜索タイムと裁判時のBGMの熱さは異常でしたね。私がこの事件を解いてやる!ってやる気に満ちていました。

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