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魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。  作者: 暁真
第三部 魔法少女を貫き通すって話。
55/60

無事に終わる過去回想などないって話。


『では緊急対策会議を始めます。先日午後14:10に出現し破壊活動を開始した巨大生命体……コードネーム「ティフォン」。現在はあの裂け目のような空間を通じて別の場所に移動したようですが活動箇所の被害は極めて甚大であり……』



「……忘れもしません。あの日、奴は唐突に現れ平和だったケイオスに破壊と混沌を招いた。去った後に残るのは街だった残骸のみ、母さんが奴を封印するまで誰もが奴に怯える毎日でした」

「……」


 テルスさんから見せてもらった写真だけだと大きさややり口がよく分からなかったけど実際目にしてみると……酷い、としか言いようがない。


『奴は破壊こそすれど捕食活動を一切行わない……何が目的だ?』

『遊び感覚で訪れた可能性もあるが……』

『それにしては徹底的に周辺地域を壊滅させている、別の目的があると見て……』



「当初ティフォンが襲来した目的は不明でした。捕食目的にしては生物の死体を放置しているし、娯楽目的にしては綿密かつ確実に全てを破壊していく」

「……分かったんですか、それは?」

「ええ、そしてそれを解明したのは……母です」


 次の景色はロムルスさんと2人でパソコンを叩いてるレムスさん。心なしか顔がやつれている。


『……ティフォンが暴れた地域周辺の魔力密度が異様なまでに減少してる。ほぼ0に近い』

『ティフォンに吸われた……?だが吸うだけなら此処まで破壊する必要も』

『生命体は死亡すると体内に蓄えていた魔力を外部に放出する、もしティフォンが魔力を吸収……ううん、捕食していると考えるのなら少しでも量を増やすために根こそぎ殺しているって考えた方が速い』

『だが直接食わないのはどう説明する?』

『多分だけど……ティフォンは魔力「だけ」を食べているんだと思う。選り好みなのかそういう生態なのかは分からないけど』

『何処までもふざけた怪物だ……!』


「……ティフォンは魔力のみを捕食する生物だったんです。そして生命体以外にもケイオスは魔力を用いた機械や仕組みが多い。奴にとっては良い狩場だったのでしょう」

「……レムスさんが封印するまで、何もできなかったんですか?」

「無論何もしてなかった訳ではありません、当時のタルタロスも総力を以て襲来したティフォンに対抗しました。父さんと母さんも駆り出される事が多くなって……」


 ……ほんとだ、次の景色にも2人が居る。なんならシルウィアさんも。司令室みたいな所でちょっと窮屈そう。



雷霆(ケラウノス)、1番から10番まで命中!』

『効果確認!』

『右腕部の負傷を……待ってください、何が、何が起きてるんです!?』


『治った……!?』

修復(リカバー)……いや違う、何もなかったかのように右腕が回復した。というか……負傷した痕跡がない』

『……レムス』

『うん、あれはただの呪文(アーツ)じゃない。時間そのものを巻き戻してる』

『……あの怪物がそれほど強力な呪文(アーツ)を扱えるとは』

『時を止めることや加速させることはほぼ実証済みだったけど巻き戻す事は無理と諦められてた、人間には到達できない呪文(アーツ)の境地……時間遡行(リバース)とでも呼ぼうか』

『……どーすんですかこれ。あれどうにかしないとこっちの攻撃何一つ通りませんよ』

『流石に魔力はかなり使うと思う、使わせ続ければあるいは……と言いたいけど雷霆(ケラウノス)を10発撃ってやっと1回。無理な仮定だね』

『現状……打つ手なし、か』


「どれだけ手傷を負わせてもティフォンは負った傷を時間を巻き戻す呪文(アーツ)で回復し、何事もなかったかのように活動を再開する。魔力切れは捕食しながら戦う奴に期待できるはずがない……端的に言って状況は詰みでした」


 それをどうにかしたのがレムスさん……ってテルスさんは言っていた。記憶を見る感じクロノデバイスはティフォンが来る前から作られてたみたいだし一体何処でレムスさんが使う事に?見ていけば分かる事なんだろうけど……ひとまず次に行こう。ちょうど2人きりの場面だし何か分かるかも。


『ロムルス』

『レムス、どうした?休憩なら……』

『違う、ちょっと相談がしたい』

『珍しいな、君からとは』

『……デチューンしたクロノデバイスで、ティフォンに勝てると思う?』

『無理だ、だがこのままでは適合者(デヴァイサー)が見つからないままだ。無理にでもデチューンしなければ到底間に合わん』

『だよね、だから相談したいんだ』

『先のあれが相談では……ないのか?』

『うん。そのね……見つかったんだ。クロノデバイスに適合できる人間が』

『本当かっ!?今すぐ書類を!この非常時によく……』

『ロムルス、その適合者は……』



『私、なんだ』

『……は?』



「……」

「……まあ、困惑、しますよね。自分の家族が唯一ティフォンと戦えるかもしれないって」

「どんな思いで父さんが母さんをティフォンの元へ向かわせたかは、はっきりとは知りません。けど……行かせたくなかったのは、確かだと思います」

「……」


 目の前の景色は気付けばちょっとした口論になってる。まだレムスさんが適合者(デヴァイサー)になったかはわからなそうだ、次に行こう。


『ダメだ。やっぱりデチューンすると時間凍結(クロノフリーズ)は使えない、時間遡行(リバース)を封じるにはあれしかないのに』

『君以外の適合者(デヴァイサー)はまだ見つからないが……このままでは時間はない』

『私が行くか、無謀でもデチューンしたデバイスを使って時間稼ぎするか、だね……皆総出でも作業は1週間はかかると思う、やっぱり私が』

『それは最後の手段にしてくれ。私は……君を失いたくない』

『……そう言ってられない状況になるまでになんとかなれば、だけど』


 ……そりゃあ、そうだろう。誰だって家族を失いたくはない。レムスさんが戦おうとすればロムルスさんが無理矢理にでも止めている、それが動いた理由……は……


『パテルッ!?なんで、この、傷……!?』

『あは、は……しくじり、ました。エンネアは、無事、ですよね……?』

『喋るな!今応急処置を!』

『お母、さん?』


 ……2人の後輩、パテルさんが酷い傷でエンネアを抱きしめて倒れ込んでいる。部屋自体は何もない様子だし何処からか転移(ワープ)で避難してきたんだと思う。もしかして……


『ロムルスさん、多分私……ダメ、です。修復(リカバー)も……間に合わないと……』

『諦めるな!君が死んだらエンネアはどうなる!?』

『確かに、旦那に任せるのは、不安、っすけど……こう、しなきゃ、エンネア、死んで、て……』

『お母さん!?』

『ごめん、エンネア……私、ダメな、お母さん、で……』

『パテル!』


 ……ちっちゃいエンネアが、お母さんに縋りついてる。こんな経験があってよくああなれたな……って、流石にそれは言っちゃいけないかな。


『せん、ぱい……』

『……パテル』

『あと、頼み、ました……あの、ばけものを……』

『……分かった』

『ふふ、安心、し……』

『……』


 ……事切れたパテルさん。泣いて崩れ落ちるエンネア。壁に拳を叩きつけるロムルスさん。そして……何かを決意したように拳を握りしめるレムスさん。決意したのなら、多分、此処だろう。


「……エンネアとお父さんに関係があるのは本人から聞いていましたが、これは……」

「……ちょっとくらいは許してあげたほうがいいですね。いつものあれ」

「それは別問題では……」


 もうちょっとエンネアには優しくしてあげよう。そんな事を思いながら次の景色へと進んでいく。


 

『ロムルス、最適化(フォーマット)……やろう』

『レムス……』

『分かってるよ、貴方が私を戦わせたくないなんてこと、分かってる。それに私はヒーローなんて柄じゃない』

『ああ、そうだ。私は『でも!』……』

『私はパテルの願いを無碍にする臆病者でいたくない!エンネアちゃんの涙を見て何も思わないほど薄情者でもない!』

『……止めても、聞かないな』

『分かってるなら、やって。私が……クロノデバイスを、使う』

『……ああ、だが、約束してくれ』

『何を?』

『君まで……君まで生きるのを諦めないでくれ。絶対に差し違えようなんて思うな、帰ってこい!シルウィアと……私が待ってるんだ!』

『……うん』


 ……やっぱりパテルさんの死が2人の決意を固めさせたみたいだ。あれだけ反対していたロムルスさんが折れて受け入れる、というか絶対に生かして返す、っていう覚悟を決めた目をしてる。これが、レムスさんが適合者(デヴァイサー)になった経緯。


最適化(フォーマット)は体内の魔力機関をデバイスと接続しやすいよう全身に魔力の血管を生成する処置、と言えばいいのでしょうか。身体能力の増加はあくまで副次効果、三葉さんたちのデバイスは逆にデバイス側が人間の魔力機関に合わせて最適化されています」

「……危険性とかは?」

「今はありませんが……お母さんの時代の最適化(フォーマット)は大掛かりなものでした。麻酔がなければ痛みでショック死しかねないレベルだったらしいです」

「……それくらいの、覚悟で」

「ええ……多分、次で最後です。行きましょう」


 経緯は分かった、後はティフォンをどうやって封印したかと……何故この記憶が弍乃さんの中にあるのか。それさえ分かれば何とでもなるはず、最後の……ティフォンとの戦いを、見よう。





『……っ!』

炸裂(バースト)の効果は!?』

『効いてはいる、けど身体が大きすぎて一部位しか効果がない!何度も繰り返すしか……!』


 最後の景色、ティフォンと空中戦を繰り広げる変身したレムスさんの姿。ユスティアともサトゥルヌスともまた違う……見たことのない姿だ。


時間凍結(クロノフリーズ)以外の呪文(アーツ)は使うな、時間と魔力の無駄だ!』

『分かってる、そうでもしないと間に合わない……!』


 得物は鎌ではなく長槍だけど戦い方は弍乃さんによく似ている。やっぱり……そういう事なんだろうか。


『っ、最初の時間凍結(クロノフリーズ)が切れた……!?』

『今チャージは!?』

(エイト)カウント……ダメね』

『レムス!』

『ええ……幾ら時間を止めて時間遡行(リバース)を阻止しても、これじゃキリがない』


 ……エキドナさんと戦った時と同じだ。相手が大きすぎて時間停止が間に合ってない。


「ぁ……」

「シルウィアさん?」

「大丈夫、です、平気、ですよ……」


 何か思い出したくないものを思い出したかのようにシルウィアさんの顔が険しくなった。何か、というのは薄々察した。だから敢えて何も言わない。


『だから……使う。限界強化機構オーバーマキシムファンクション!』

『なっ……何故それを!?』

『クロノデバイスの呪文(アーツ)関連を手がけたのは私……それに貴方の事だからこれだけは自動詠唱不可能にしてると思ってた』

『最終手段だそれはっ!だから……!』

『でも、これ以外に手はない。貴方も分かってる筈』

『っ……!』


「オーバー……マキシム……」


 ……あの時弍乃さんが使った、奥の手。全ての魔力を費やして放つ呪文(アーツ)


時間(クロノ)……凍結(フリーズ)ッ!』

『……!!!!!!』

『っ……この、感覚、時間遡行(リバース)を、私、に……!』


 2つの呪文(アーツ)がぶつかり合って……段々とレムスさんの髪が黒く染まっていく。頭の中の仮定がどんどん繋がっていく、というか、繋がってしまう。


『……ロムルス、シルウィアをお願い。私は人間にはなれても、母親にはなれなかった』

『そんな事あるものかっ!君は最初から人間だ!そして立派な母親だとも!』

『……昔から変わらないね、ロムルス。だからこそ、惚れたのかも』

『だから戻ってこい!絶対に、絶対にだ!』

『うん……ロムルス、シルウィア』

『……』


 辺りがあの時のような眩い閃光に包まれる中、徐にレムスさんは取り外したクロノデバイスを何処かに転移(ワープ)させて。


『愛してる。ずっと、永遠に』


 周囲が真っ白になって、記録が、終わる。


「……お母、さん。貴方は……」


 ……思考は、纏まった。それと、確信。記憶には、まだまだ先がある。


「行きましょう、シルウィアさん」

「……ええ」

「此処からは……多分」


 意を決して歩き出せば、新たな風景が描かれる。


「此処は……」

「病院……」


 ケイオスのものとは思えない設備……この世界の病院だ。


『っ、ん……』

『よかった、起きた!』

『ん……?』


 病室のベッドに居たのは頭や腕に包帯が巻かれたちっちゃい女の子。保護者みたいに2人の大人が付き添ってる。


『ここ、は?』

『えーっと、その。突然空から君が落ちてきて、傷だらけだったから病院に……そうだ、ねえ君、名前は!?お母さんとお父さんの名前、言える!?』

『なま、え……』


 ……なんとなく、面影を感じる。というか、無機質な瞳はユスティアの時のあの人そっくりだ。


『わから、ない』

『……そっか、じゃあ、君の名前は?』

『それも、わから、ない』

『……え?』

『自分の名前も……?』


 だから確信した。


『わたしは……』


 この女の子が……


『わたしは、だれなの?』


 幼い弍乃さんで……時間遡行(リバース)で若返ったレムスさんなんだ。

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