追加戦士初登場回は正式加入しないのが大半って話。
「呪文詠唱111、閃熱!」
「二重詠唱、結界、流体」
閃光による衝撃は流体化した結界を身に纏い受け流す、あれの厄介な所は単純に防御しても余波で多少ダメージを貰うところだ。だが実体のない爆発ならこうして受け流す事でノーダメージ、2年前に編み出した閃熱の対抗方法である。
「んなっ、無傷!?」
「付与詠唱、変形」
すかさず変形で大鎌を薙刀状に変形。機獣相手ならともかく魔導士相手は奥の手無しではすばしっこくて鎌を振り抜くまでに避けられる、すぐに振れる薙刀の方が戦いやすい。
「っ、付与詠唱033、拡散!」
「へえ、そう来るの」
近づかせまいと弓を乱射してくるが……収束がブレブレだ、魔導士としては新人と見た。
「やり方は悪くないけど……腕はまだ未熟のようね」
「はあ!?」
迷わずに駆け出し当たりそうな矢だけを弾いて最接近、アポロとディアナの錬成は弓に特化している、申し訳程度の刃と矢だけでは近接戦に持ち堪えられまい。
「シイっ!」
「クソっ!なんでよりにもよってお前が……機獣共は何やってたのさ!」
「あら、しっかりと足留めはされてたわよ?秒で片付けただけで」
「はあぁ!?」
薙刀の突きは残念な事に弓での防御が間に合ってしまった。とはいえ此方の間合いだ、壁際なこともあってそう簡単には抜け出せないだろう。
「私を数分足留めしたいならいつぞやの龍型とかライオン型でも持ってくることね」
「こんな世界のためにわざわざ使う理由もないっ!」
「なら諦めなさい」
こいつ無駄に反応速度が速い。薙刀の連続突きを全部弾いてくる……ならこうだな。
「付与詠唱、双化」
「数を増やせば直撃するとでも思ってるの!?」
「防戦一方なのによく吠えるわね」
双化で薙刀を複製、二方向からの連撃で防御を突き崩しにかかる。
「ディーデバイスの弱点は呪文の行使にデバイス操作が必要な事。当たらないにしたってこれじゃなにもできないんじゃないかしら?」
「こんの……舐めるなァ!」
すぐに直撃させよう、とは焦らない。どうせこの連撃を受け続けている限り彼女は何もできないのだ、待っていれば必ず隙を見せる……おっと、今だ。
「そこね」
「っ……!?」
僅かに角度がブレたのを見逃さず弓を突き、衝撃で弾き飛ばす。これで守る盾は消えた。
「チェック、 付与詠唱、変形」
薙刀の1つを鎌へ再変形。直撃しても体表をうっすらと纏うバリアフィールドで致命傷にはならないが痛いものは痛い、一撃か二撃くらいは被弾してもらおう。
「な……なんで最適化すらしてない地球人がこんなに強いの!?」
「貴方の適合率を聞けばわかる事よ、知りたいなら教えることね」
「誰がそんなこと……」
『解析完了、適合率62%……驚いた、前任者より8%も低い』
「いつの間にっ!?」
あいにくうちのテルスは優秀なのだ、この程度の事は戦闘中でもちょっとの時間があれば解析出来る。
「最適化してるしてない言う割には貴方の適合率も大した事……ないのねっ!」
「しまっ……あぁぁぁぁぁぁ!?」
無論暇だからこんな事をした訳ではない、こいつの性格的に突けば動揺するとテルスは判断した。実際この通り焦って隙を晒したため……こうして本来なら避けられるであろう大鎌の直撃が入る。
「なんて強さだ……あれだけの魔導士が今まで何処で何をやってたんだ!?」
「きっと……っ」
「動いちゃダメだミネルヴァ!」
……うわぁしまった。かんっぜんに追加戦士初登場回ムーヴしてるよ私、しかもなんか時間帯が30分違いそうな。後でリカバリー方法考えないと……あ。
「クソっ……がぁ……!地球人、なんかに……!」
「その傲慢が貴方の敗因よ……さあ、今回こそ破壊させてもらいましょう。そのディーデバイス」
撤退させるだけにするつもりだったが今思いついたリカバリー策のため急遽ディーデバイスを破壊する事にする、ようは追加戦士らしからぬムーヴをすればいいのだ。
「三重詠唱、変形、合体、属性付与・迅雷」
もう片方の薙刀も大鎌に変形し直して柄を繋げ合体。属性付与で雷を纏わせ確実に破壊するべく両手で高速回転させて威力を底上げする。さっきの直撃でだいぶ持って行ったはずだ、避けられまい。
「あれがあの人の……必殺詠唱……?」
残念これはただの呪文だ。私の必殺詠唱と奥の手は別にある、けどこれなら使うまでもない。
「さあ……終わりよ」
「っ……!」
充分に勢いを付けた大鎌を投擲、長物らしからぬ回転と速度で飛んでいくそれは直撃すれば確実にディーデバイスを両断するだろう。タルタロス側は貴重な魔導士が減って痛手、こっちは相手の戦力削って楽になり私はニチアサ展開から逃れられる。なんだ、いい事尽くめじゃないか。
「嫌だ、こんな所で……!」
残念だが此処までだ。この子だいぶ性格が悪かったが最適化の際タルタロスが適合者の記憶を弄っているのは知っている、利用した礼として後で治療くらいは……
「強化詠唱」
「雷霆」
……は?
「防いだ……!?」
直撃寸前、突如として落ちてきた豪雷に大鎌が弾かれあらぬ方向に飛んでいく。奴にあれだけの呪文を行使する力など残っていない、つまりは……
『今の呪文……別の魔導士が居るな』
「ええ……ほんと面倒。 呪文詠唱、錬成」
もう1人魔導士が居るというのならこの隙は非常にまずい。即座に大鎌を錬成し直して構える。
「……あいつ、余計なちょっかい出しやがって……!」
「ならそのあいつが誰なのか吐いてもらいましょうか?」
「誰が……なっ、私は、まだ……!」
「……しまった」
もう1人を警戒し過ぎて反応が一瞬遅れた。アポロの周囲に障壁が展開され、真下にゲートが開く。
「覚えてろよ……銀の魔導士……!」
最後に典型的な恨み言を吐きながら、彼女はゲート内部に落ちて行った。
「……最後まで三下ムーヴたっぷりだったわね、彼女」
『記憶改竄による影響なのだろうな、元々の性格はああではあるまい……む』
「……あら」
手負いの味方を撤退させた以上連戦になるかと思ったが……意外な事に周囲の結界が解除されていく、どうやらあちらも今やる気はないらしい。
「ま、どうにかなったのはいい事よ……問題はこれから」
『そうだな』
リカバリーは此処からが本番だ。一字一句も間違えるなよ、私。
「……凄い」
強かった。
「ボク達が手も足も出なかったあいつを……」
「まるで子供扱い……なんて強さ……」
目の前の魔導士は記憶の中のあの人よりずっと強かった。今の私達じゃ到底届かない、多分強さの頂の一つ。
「……やっぱり、凄いですね……」
あの人の事を思い出したのは本当に数日前の事、ウェヌスへと着身した五葵ちゃんが思い出したからだ。
(思い出しました……私、つい先日貴方達じゃない魔導士に助けてもらったんです!)
(私達じゃない……?)
(はい、サル型の機獣に襲われて……もう駄目だと思った時に銀髪のあの方が……)
(銀髪……銀髪……?)
(……どうしました三葉さん?)
(……あっ、あああぁ!?)
記憶を消されていたのに思い出したのは多分魔導士になったからだろう。五葵ちゃんに言われるまで肝心な所が思い出せなかったけど……彼女が思い出してくれたおかげでこっちもきちんと復元できた。
「さあ……終わりよ」
そして目の前のあの人はあの魔導士に何の苦戦もする事なく倒す直前まで行っている。まだ、全然届きそうにないや。
「防いだ……!?」
でも、その一撃は何者かに妨害されて。
「覚えてろよ……銀の魔導士……!」
結果的にあの人は彼女を取り逃してしまった。私達が動けたなら防げたかもしれなかったのに……
「……」
結界が解除されて行く中何を考えたのかあの人は持っていた武器を分解し、私達の元へと歩いてくる……そうだ、お礼言わないと。
「あの……助けて、くれて「単刀直入に言うわ」……へ?」
感謝の言葉は遮られてしまった。でも言うって何を……
「貴方達、今日限りで魔導士辞めなさい」
「……え?」
「急に何を……」
「今まで静観していたけどタルタロスの魔導士相手にあの体たらく。機獣しか相手にしていなかったって言い訳はできるでしょうけどあの程度の奴に何もできないとかふざけてるのかしら?」
……待っていたのは労いでもなんでもなく直球の戦力外通告。
「急にしゃしゃり出てきたのはそっちじゃないか!彼女達だって今日まで本気で戦って」
「それが何?求められているのは理屈でも過程でもなく結果よ。こうして無様晒している以上貴方達じゃ戦いにすらならない。火遊びも程々にしておくことね」
「っ……!」
売り言葉に買い言葉でファウヌスが抗議するけどあの人の切って返す言葉で黙らされる、私達が何もできなかったのは事実だから。
「そう言うんだったら君は今まで何処で何をしてたんだ!今までの機獣との戦いで君を見たことは……」
「……呆れた。まさか気付いてなかったなんて」
「気付いてなかった……?」
「機獣が現れる時ゲートは必ず3つ開く。貴方達が1体目を相手している間に私は残りの2体を処理していた、これで説明は充分?」
「そんな、事が……」
……そっか、今までですら私達はあの人におんぶで抱っこだったんだ。
「……ともかく、これ以上面倒になる前にさっさと辞めなさい。無駄に怖い思いをしてまで戦うこともないでしょう」
「でも、そうしたら誰がファウヌスさんを……」
「5年よ」
「?」
「今日までの5年間私はこの世界でタルタロスと戦ってきた。今更オリンピアがどうのこうのなんて余計な因縁を持ち込んできたのは文句の一つも言いたくなるけどそれはそれ、片手間でそこの羊を守るくらいは余裕よ」
「誰が羊だ!僕にはファウヌスっていう立派な……!」
「御託はいいわ。それじゃあ……早めに決断しておくことね。 呪文詠唱、転移」
……言い負かされて、結局言い返すことも出来ずにあの人は行ってしまった。
「全くなんて子だ!三葉達だって遊びで戦ってる訳じゃないのに!」
「……ファウヌスさん」
「次あったら……五葵?」
「その……多分、あの人は善意で言ってくれてるんだと思います」
「……はぁ!?」
「どういう事……?」
「ボクめちゃくちゃムカついたんだけど……」
……ああ、そっか。
「私、助けられてあの人に記憶を消される前に言われたんです。「世の中には忘れた方が気楽に生きれることもある」って……」
「気楽に……」
私の時も、そうだった。
「だからあの人は私達を邪魔じゃなくて、関わってほしくないと考えているのだと思うんです。きっと最後まで……自分1人で戦うつもりで」
「僕にはそうは思えなかったけど……」
「いや、私もそう思う」
「三葉も……?」
「……昔助けてくれた時、微笑んでくれたあの人の笑顔は本物だった。だから絶対悪い人じゃないし嫌がらせをするような人でもない。誰かに背負わせないために自分で全部終わらせるつもりなんだ」
「……」
確かにそれが1番効率が良いのだろう。あの人はとても強いから、でも……
「でも、私だってあの人に何か返したい。だから……魔導士はやめない!」
「私もせめてお礼の一言は返したい、もっと強くなってあの人に並び立てるようにならないと」
「それなら私も2人と一緒に修行だね……八雲は?」
「あれだけ言われて腐ってる訳にはいかないでしょ、付き合うよ」
「じゃあ……決まりだね!」
私達皆で強くなる。そうしてあの人と一緒に戦えるようになって……恩返し、するんだ。
「ふう……決まったわね、「イキリ散らかして中盤あたりで退場する序盤だけ強いキャラ」ムーヴ」
『やはり君はアニメに毒され過ぎているんじゃないか?』
「だまらっしゃいテルス。少なくともこれであの子達は私に良い印象は抱かないでしょうし反骨心で強くなってくれる、私も好感度下げに下げて追加戦士ルートは無事サヨナラって寸法よ」
『前者に関しては分からなくもないが……何故自ら関わりを断とうとするのだ?』
「面倒だからよ、単純に、ほんと」
『……そうか』




