行方
ぴっぴっぴ。
虫が草を揺らす。
影が虫を覆い、やがて。上から押しつぶされた。
黒紫色のレインコートを羽織った集団が闊歩している。
行列は高層ビルまで続き、多くの物資が運ばれている。
男は気絶したまま、集団によって運ばれていた。
「あのゴリラが邪魔するものだから、同胞も被害を受けてしまったが、人手をかけた甲斐があったというものだな。しかし、聖剣はどこにいったというのか。これでは上長に報告するのが恐れ多いというものだ。なあ?」
「まったくだ。身元を確保できたのはいいが、時間をかけすぎているし、ゴリラ族も滅することができてはいない。もっとも奴らを相手する理由もなくなったわけだが。聖剣については情報が少なすぎる。深夜を徘徊するにあたって、携帯しているとは限らないし、拷問して吐かせる必要がある。持っていたのはブレッシングの希薄なお守りと領域神術の実践本だ。これでは上は満足するはずがない。我らの脅威たるのは聖剣とその担い手のみだ」
「この男は本当に担い手なのかね?」
「違いない。雨の世界に幽閉されていたのはこの男のみだ。あえて別の存在を匿うにはコストがかかりすぎる。そんな余裕はない。コストを掛けずに世界を構築できるほど技術が進歩しているなら、我々に勝ち目はないだろうな」
「まったく内通者がいなければ男を見つけることも永劫にできなかったろうな。幸運はつねに我らのてのなかにあると痛感するよ。聖剣もすぐに見つかることだろう」
「見つかればいいのだがな。ロストテクノロジーに世界が踊らされるのはもう懲り懲りだからな。こいつには在処を吐いてもらわないとな!」
黒紫のコートに身を包んだ背の高い男は気絶した男の顔を靴で突いた。
「案外、聖剣も壊れてなくなったのかもしれぬ。所詮は消耗品だからな。あの隠居世界は工務店のひとつも機能していない。錆びて使えなくなったのかもしれない。そもそも、紛失している可能性が高い。それならば、上も安心するかもしれない」
「馬鹿言ってはならん。安全の確保とは聖剣の破壊を意味する。あれが最後の一振りなのだ。ゴリラが保護している可能性もあるが、担い手へと渡るのが聖剣だ。彷徨う聖剣に力は発揮できない」
「この書籍についた指紋があれば聖剣と照合が付くだろうからな。大切に保管しておこう。我らが資産管理連中は杜撰な運営で心もとないが、いざとなれば肉体を使えばいいわけだしな」
「おおん?そうだな。個人的にはゴリラ族が排他的な空間を所持していたことの方が気がかりだがな。相当の不動産屋がバックについている可能性が高い。異財空間の研究が進まれると我々が発揮している権限の力学関係を邪魔しうるからな」
「インテリめ。さっぱりわからねえ話しやがって。異財空間なんていったことのない身からすれば、さっぱりだぜ。金の臭いがすることだけはわかるがな。いい投資先教えてくれよ。最近の人柱…………もとい攻略組は成果なしの無能ばかりだからな。血税を流してまで攻略する旨味があるのかと家内も文句をいっていたぜ」
「ははは!充分に給料はあるだろうに、強欲だな!安心したまえ、聖剣さえ掌握できれば、敵国も安心して支配できるというもの。我らも恩賞が期待できるというものだ!そのためにもこいつにはしばらく生きてもらわないとなあ?」
男の髪が掴まれる。そのとき。わずかに瞼が動いた。
ピッツァスモールワールド




