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ゲーマー忍者の異世界無双   作者: 世捨て人
六章・戦王の鍵
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夜刀神戦集結

戦王とハヤトの刀が衝突。

その衝突は、この世を告げるものに匹敵しただろう。あるいは神々の戦いの衝撃にも等しかったであろう。

しかし、それは決して二人の戦いの終わりを告げるものではない。

こうしてぶつかり力を出し合って尚、二人は力を拮抗させ合うのだ。


「ハヤトォォォォォ!!!なぜ我の邪魔をする!!我の約束は果たさなければならぬというのに...」


「お前の約束がなんだかこっちは知ったこっちゃねぇんだよっ!!だがなぁッ!!俺はあのアホ姫を守るってこの世界にきたときから決めてんだ」


二人の間にぶつかっていた衝撃が弾けて霧散する。

戦王はよろけて後退る。その隙をハヤトが見逃すわけがない。

チャンスは多分二度と来ない。


(なぜだ...なぜ我は負けている?やつはそこまで強かったというのか。やつこそが真なる神だとでもいうのか...)


そのとき戦王弐夜刀の脳裏に、六百年前に交わした約束がよぎる。

他愛もない。本当に他愛もないただの口約束。契もなにもしなかったが、それだけは貫こうと思った彼女との約束。


『約束ですよ。神になっていつか平和になった世界を私に見せてくださいね弐夜刀』


彼女は死んだ。ならばせめて約束だけは貫き通そう。


「あやつとの約束...違えたならば我、戦王の輪廻転生までの恥となろう」


戦王の四度目の雷撃。しかも今度は数が多い。

これ以上はハヤトたちを支える大地がもっていられるわけがなかった。当然ながら崩れてさらに深くへと落ちていく。

勝負は一回きり。ハヤトは文字通り全力を刀にこめる。


「黒刃疾風」


八咫烏を前に突き出し、滑空するようなスタイルの牙突。その姿は黒い弾丸のようにまっすぐに敵に向かって飛び荒ぶ。

これがハヤトの全力である。


その全力に戦王も全力で答える。

すべての飛び散っていた雷を刀に集める。雷を帯びた攻撃は貫通力を増す。


もう何度目になるかわからない衝突。

ハヤトの刀が戦王の刀をへし折って、戦王の体に風穴を開ける。

この瞬間、夜刀神の戦の軍配はハヤトにあがった。


「すまぬ...」


戦王は最後に誰かに謝って死んでいった。

おそらく約束の人にだろう。


ハヤトは複雑な気持ちになったが、そこに後悔はない。

トゥーナを守ることができた。それだけで十分だった。


「じゃあな」


骸と化した戦王にそう言ってハヤトはトゥーナたちに向かって歩き出そうとした。

しかしその必要はなかったようで、トゥーナが自分から走ってきていた。そして飛びかかる勢いでのフライングハグ。

ハヤトは反射的にトゥーナを抱き抱える。


自分でも不思議だった。いつもの女性恐怖症のハヤトなら絶対にありえないことだが、今のハヤトはそうではならなかった。


「ハヤト...?」


「もう怖くない。今お前をちゃんと触って、感じられる」


「ハヤト。話があるんだけど聞いてくれる?」


「ん?」


トゥーナは深く息を吸った。

トゥーナもよく婚約の話はくるが、実際に付き合ったことや関係をもったことはないのでこれが初めての告白だ。

勢いに任せていきたかった。意を決してトゥーナは口を開いた。


「私はハヤトあなたが好き。これからずっといっしょにいたいの」


「ずっといっしょなのはわかってることだろ。俺はお前を守る影なんだから」


ハヤトは何か勘違いをしている。

トゥーナは優しく勘違いを正す。


「違うの。影みたいに隠れているんじゃなくて、隣にいてほしいの」


ハヤトはこれがどういう意味で言われている言葉かを理解するのに実に長い時間を要した。

これはつまり自分が過去に玉砕したアレではないか?

まさか自分が言われる立場になるとは思ってもみなかった。

自分はどうしたらいいんだ。

今まで言われた側の気持ちなんてひとつも考えたことはなかった。

こんなにも戸惑うものなのか。


ハヤトは思考する。深く深くじっと考える。

先延ばしにして答えを言うのはいけないここで答えを出さなければ。


多分今ハヤトがトゥーナに触れていられるのは、ハヤトのなかでトゥーナを受け入れたということだ。

ならば別に気持ち答えてもいいのではないか。

答えは決まったあとは口に出すだけだ。

緊張する。戦王のとの戦いとは違う緊張がある。

胸の鼓動がバクバク聞こえる。だんだん動悸も激しくなってきた。味わった告白の瞬間の緊張だ。


ハヤトは震える声を振り絞った。


「わかった。俺はお前のそばでお前を守る」


「ありがとハヤト。大好き」


トゥーナはハヤトの唇にキスしてきた。

初めての感触にハヤトは狼狽する。

しかも今は両手がふさがっているのでトゥーナを引き剥がすことができず、ただただされるがままになっている。


後の歴史に夜刀神戦(やとがみいくさ)として名を残したこの戦いはこうして幕を閉じた。








天界。

古池や蛙飛び込む水の音ではないが、湖を眺めているのものがいた。

全身を黒い衣で覆い包み頭に一対の角を生やした、人物という言い方もおかしく聞こえる存在。

この存在こそが夜刀神である。


夜刀神は自分のバックアップたちが戦う様をこの湖から眺めていたのだ。

一種の生きがいのように思っていて、烏を遣わしたのもこの夜刀神本人である。


夜刀神の側に烏が帰ってきて、三本足を立てて立つ。


「八咫烏ただいま帰りました」


「面白いのぉ八夜刀は」


「はいあれほどに面白き男を存じません」


「そうであろうな。それより七夜刀は見つかったか」


「いえ」


夜刀神は苛立ったように舌打ちする。

そして烏にこう命令する。


「七夜刀を八夜刀に探させろ」


「御意」


烏は再び八夜刀の元へと飛び立った。






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