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『終焉の刃』の現在

 一夜を過ごし、皆で朝食を食べ終えると街道を歩いて行きダルグの町を目指して出発する。


「バルバラさん、竜人族の事をもっと色々教えてくれますか?」

「ああ……知っている事なら話してやる」


 彼女は皆に説明しながら街道を進んで行く。そして、会話も弾み楽しい道中となるのであった……。




 一方その頃、レムルス率いる『終焉の刃』はアベルを追放してから魔法や結界の解除が出来る他の魔力解除士を新たに入れようと躍起になっていた。

 しかし、アベルがパーティーを抜けた後、別の魔力解除士を探したが希少性の高い職業であり簡単に見つからず諦めていたのである。


 その為、依頼の殆どは魔物退治や討伐が主になっていた。アベルの代わりに加入した仲間は武闘家であった。

 彼の戦闘スタイルは棍と武術を駆使した戦い方である。冒険者ギルドでの評判も上々であった。


 そんな彼の風評を気に入り、レムルス達は新たなメンバーとして彼を歓迎した。

 つい最近、古代遺跡から彷徨い出て近くの町で暴れるゴーレム退治の依頼を請け負ったのだが……。


「おい、アーロン! さっさとそのゴーレムをぶち壊せ!」



 レムレスの怒号が響く。新入りの武闘家アーロンは自信満々に答える。

 彼は筋骨隆々で体を鍛えて武術の修業を長年している冒険者である。


「任せとけ! 俺の拳で破壊してやる!」


 彼はそう言うとゴーレムに向かって駆けて行く。そして、ゴーレムの攻撃を躱し拳を叩き込むのであった。


「ぐわぁああ! 痛ぇええっ!」


 アーロンが悲鳴を上げる。 彼の拳は腫れ上がっていきゴーレムを構成している岩の体に傷一つ付けていなかったのである。


 仲間達はアーロンの失態を見て失笑してしまう。そして、恥ずかしさで彼は怒りを露にして言うのだ。


「くそぉお!! なんで壊れないんだ!! いつもなら俺の拳は岩をも破壊していたんだぜ!」

「……拳で破壊できないなら、お前の自慢の棒術で破壊しろ!」

「ああ、そうだったな!」


 レムルスに叱責されて我に返り棍を構え攻撃の体勢を取る。そして、ゴーレムに向かって行く。


「うぉおお! 喰らえ!粉々になれぇええ!!」


 彼は叫びながら棍を振り上げ渾身の一撃を放つ。棍が命中しドゴォーンと大きな音を放つと誰もが粉々になったと思われたが……。

 だが、ゴーレムには全く効いておらず無傷だったのである。


「くそぉお!! なんで壊れないんだ!!」


 どうやら、ゴーレムには対物理攻撃用の結界が張られていたようだ。

 しかも、対魔法対策の結界も張られており2重の備えをされていたのである。


 以前ならアベルが結界を解除して剥がれた所をレムレスやウェイドが攻撃しシャノンが攻撃魔法を放って倒していた。


 しかし、今は誰も結界を解除できる者がいない。その為、結界を解かなければゴーレムを倒す事ができないのだ。

 レムルス達は頭を抱えて考え込むが打開策を見い出せない。そんな時、ウェイドが言うのである。


「アベルが居れば結界の解除が出来たのにな……」


 彼の言葉に皆が驚き振り返る。その名を聞いたレムルスが激昂して言う。


「黙れ! アイツの名を出すんじゃない!」

「そうよ! アベルの事は忘れなさい!」


 兄の怒声に妹のシャノンも同調する。ウェイドがアベルの名を出した事に彼は怒り心頭となる。


「アイツの事を口に出すな! 追放したんだ! もう俺達には関係ない!」

「もし……いたとしても魔力が使えなくなったから期待しても無理よ」


 シャノンも兄の言葉に頷き同意する。だが、ウェイドを肯定するようにレイラも言う。


「けど……アベルが居なくなってから私達は手こずって苦戦するようになっているわ……」


 彼女はアベルが居なくなってから魔物討伐の依頼で苦労している事を指摘する。


「うるさい! 黙れ! ここは俺が何とかする、下がってろ!」


 そう言うと自身の愛剣『ブラストブリンガー』を構え刀身に魔力を込め集中していく。


「うぉおおおお!」


 彼は剣に魔力を込めるとゴーレムに向けて振り下ろす。すると、刀身が光輝き衝撃波となって飛んで行く。

 ドゴォーン! 彼の放った衝撃波はゴーレムに命中して大きな音を立て爆発していくのである。


「やったわ!」

「やったか!?」


 メンバー達はレムルスの渾身の魔力がこもった衝撃波でゴーレムを倒した事に歓喜の声を上げる。

 しかし、爆発の煙が段々と薄れていくにつれて彼等の顔付きが変わってくる。

 ゴーレムも無傷ではなかったものの外装が崩れながら、こちらに悠然と向かって来たのである。


「クソッ! これでも駄目なのか!? 皆で奴を攻撃するぞ!」


 レムルスは苛立ちながらも仲間に声を掛け、皆でゴーレムに攻撃をするのであった……。

 『終焉の刃』は、ごり押しでゴーレムを何とか倒した。

 しかし、その代償として傷付き疲弊する展開が多くなったのである。


「クソッ! この程度で……苦戦するのか……」


 彼は悔しげに呟く。他のメンバーも同感のようだ。


「ああ……魔法が関係する依頼には手こずる様になったな……」


 ウェイドが頷き同意する。レイラも彼の呟きに賛同するのである。


「そうね、アベルの魔力解除があった時は余裕だったのにね……」


 彼女の言葉に皆、それぞれの顔に後悔や無念の表情を見せる。

 それだけ、アベルの存在は非常に大きかったようだ。


「黙れ! アイツが居なくても俺が剣を振れば全てが解決するんだよ!」


 だが、レムルスだけは意地を張って強そうに振舞っていた。

 そんな時、アーロンが不満そうに言うのである。


「なぁ……アベルという奴と仲直りして再びパーティに加えたらどうだ?」

「はぁ!? 何を馬鹿な事を言っている! そんな事が出来る訳ないだろう!」


 アーロンの突拍子もない提案にレムルスは怒り心頭となる。


「だってよ、ソイツがいれば結界も解除できるし魔法で防御された相手にだって楽勝だったという事なんだろう?」

「もう『終焉の刃』にアベルは必要ないんだよ! もうアイツの名前を2度と出すな!」


 彼はそう言うとアーロンの胸倉を掴み、激しく揺さぶりながら怒鳴りつける。

 暫くしてレムルスはアーロンを離すと他の仲間にも睨み付け強がりを見せるのであった……。




 ダルグの町に向かう途中、ガラドが自分の工房に立ち寄りたいと申し出てきて僕等は了承する。

 そして、森の外れにあるダルグの工房に到着したのである。


「ここが儂の工房じゃ!」


 ガラドはそう言うと自分の工房を皆に自慢気に紹介する。その建物は小さな石造りの山小屋である。

 中は作業場となっていて、鍛冶炉や金床や素材が所狭しと置かれている。


「へ~え……いかにも鍛冶職人の工房だね」


 ニルスは感心したように独り言を言う。ガラドは奥から大きな布に包まれた物を持ってくる。

 ドワーフは、それを持ってバルバラに向かって話す。


「実はお主に、この剣を使って欲しいのじゃ……」

「私にか?」


 ガラドは頷くとバルバラは包みを受け取ると、布を剥ぎ取り中から大剣が姿を現す。

 それを見て彼女は目を光らせて言う。


「これは素晴らしい剣だ……有難く使わせて貰うよ」


 そこには鈍く銀色に光る研ぎ澄まされた鉄の塊のようであった。

 バルバラは笑顔でガラドに礼を言うと彼は照れくさそうに答える。


「礼には及ばんよ。この業物を使いこなせる者が居なかったからのぉ。お主なら使いこなせると確信したんじゃ」


 バルバラは大剣を手にして軽く振ってみる。すると、彼女は驚きの声を上げる。


「軽い……そして、この剣から魔力を感じるぞ!」


 剣を鞘から抜いて軽々と片手で持ち上げると工房内の空気が一変する。


「その剣はミスリルから作られておるのじゃ」

「そうなのか? どんな効果なんだ?」

「それはじゃな……」


 ガラドが説明しようとするとニルスも割り込んで来て言う。


「ねぇ! ガラド、僕にもその剣を見せてよ!」


 彼は目を輝かせてお願いする。そして、アイラも興味を持ったようでガラドに言う。


「私にもよく見せてくれないか?」


 するとガラドは笑顔で2人を見て頷く。

 バルバラがニルスやアイラに剣を渡し、それを眺める姿に彼は破顔するのであった……。

 彼等が楽しそうにしている姿を僕は遠目で見ている。すると、ガラドが近付いて来て言うのである。


「アベル……バルバラが、あの剣を気に入ってくれて良かった……」

「お気に召して貰ってよかったですね」


 僕もニコニコしながら頷く。そして、バルバラも興味津々の眼差しで見詰めて呟く。


「うむ……この剣、いいな……これなら正面から叩き潰せる」


 彼女は白い歯を見せ嬉しそうに答えるのであった……。

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