表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/67

奴隷商の支配から解放された竜人族の女戦士

 バルバラの首輪に触れた途端、首輪は自分の首輪と同様にボロボロになっていく。

 彼女は首輪を引き千切ると立ち上がる。そして、ポンぺオに向き直り言い放つ。


「今まで……よくも奴隷として扱ってくれたな!」


 彼の胸元を掴み眼前で睨むと恨み言を言うのである。

 そして、床に叩き付けるように投げる。投げられたポンぺオは床に尻餅をついてしまう。


「この落とし前、どうつけてやろうか……」

「ひぃいい!」


 彼は腰を抜かしたまま後退りすると壁際まで逃げる。そんな情けない彼の様子に思わず呆れて呟く。


「情けない奴……自分を守る者がいなければ惨めだね……」


 すると、アイラが僕の傍に来て言うのである。


「アベル、私の首輪の魔力を解いてくれ」


 僕は頷くと彼女の首輪に手を触れる。そして、首輪をボロボロにして破壊するのであった。

 加えて、手を縛っている縄も僕が触れると色褪せて劣化していく。


 アイラが全身に力を入れると縄は簡単に千切れたのである。

 バルバラがポンぺオを壁際に追い詰めると、その目の前で大きく足を持ち上げ彼の股間に向けて足を踏み下ろそうとする。


「やっ……やめろぉおお!!」


 ポンぺオは止めるように叫ぶが彼女はお構いなしに踏み下ろす。


「ひゃあああっ!!」


 バキィイイッと床が割れる音がすると彼は情けない悲鳴を上げる。

 だが、バルバラの足は股間の直前の床を踏み抜いただけであった。


「は……はひぃいい!」


 ポンぺオは股間を押さえながら、へなへなと床に座り込む。彼のズボンからは尿が染み出てきて床を濡らしていた。

 部屋一面に彼の尿臭が漂う中、バルバラが彼を見下し静かに言う。


「今まで、こき使ってくれたな……成敗してくれる!」


 彼女はそう言うと顔面に向けて拳を振り上げる。すると、ポンぺオは恐怖で顔を歪ませ命乞いをするのであった。


「たっ! 頼む! もう許してくれぇえ!!」

「まあまあ、バルバラさん、もう許してあげなよ」


 僕は彼女の肩を掴み宥める。すると、バルバラが僕の方に向き直り言うのである。


「しかし、コイツは首輪で私の自由を奪ってきた! 許せん!」

「でも、彼を殺せば、あなたはお尋ね者になってしまいます……そうなれば賞金首として追われる身になりますよ」

「むっ……それは……」


 彼女は僕の指摘に言葉を詰まらせると、渋々ポンぺオへの制裁を諦める。そして、僕の方に向き直り言う。


「君の言う通りだ。コイツを殺して私の人生を台無しにするには矮小な問題だ……」

「分かってくれて何よりです」


 僕は一安心して彼女に微笑むのであった……。

 失禁してみっともない姿を晒したポンペオを後にし部屋を出る。

 僕はガラドとニルスの身を心配しバルバラに何処に捕らわれているか聞くのであった。


「地下の牢屋に監禁している、こっちだ」


 彼女は、そう言い僕を牢屋まで案内するという。そして、僕達は地下室へ降りて行く。

 牢屋の中では2人共、石の床の上でに座ってうずくまっていた。

 彼等は僕達が近付いて来ると気が付くき顔を上げる。


「アベル……助けに来てくれたか」

「やったね! ここに来たという事はアイツを倒したんだね」


 ガラドが僕の無事な姿を見てホッとする。ニルスは喜びの声を上げるのである。

 僕は2人の傍に行き牢屋の格子に手をかける。


 そして、バルバラは全身の筋肉に力を入れ扉を両腕で掴み力を入れて引っ張っていく。

 扉はギシギシと音を鳴らし、こじ開け変形していく。遂に扉は彼女の怪力で開くのである。


「これで自由になったよ」


 2人は立ち上がると僕に抱きついてくる。


「すまない!」

「アベル! 本当にありがとう!」

「うん……でも、これからが大変だよ……」


 僕は2人を宥めると、この屋敷からだけでなくラギドの町からも脱出しなければならないのだ。

 この町に留まり続けていたら奴隷商が裏組織に依頼し暗殺等を企むかもしれないのである。

 するとバルバラが僕の懸念に気付き言うのである。


「私が皆をラギドの外まで送ろう」


 彼女はそう言うと上に戻り、僕達の荷物が収納されている部屋から纏めてくる。

 そして、僕達はバルバラの案内の元、屋敷から脱出するのであった……。




 彼女の案内で屋敷から脱出すると外は深夜だったが僕達を町外れまで誘導してくれる。


「ここからなら、もうすぐラギドの門まで近い」


 僕達は彼女の言葉に頷き感謝の言葉をかける。


「本当に助かったよ……ありがとう」

「明日になってたら儂等は殺されていたかもしれぬな……」

「お姉さん、本当に感謝してます!」

「ああ、そちらのお陰で命拾いした……」

「いいって……それより、君に言っておきたい事があるんだ」


 バルバラはそう言うと僕の前に進み出て深刻な顔をして言うのである。


「私を……君達の仲間にして貰えないか!」

「……えっ!?」


 彼女の突然の言葉に驚き戸惑うのである。


「おい、アベル! 彼女が仲間になって貰えるなら百人力だぞ」


 ガラドが躊躇している僕の背中をバンバン叩きながら激励してくるのであった。


「いいですよ!」

「ありがとう……」


 僕が了承しバルバラを仲間に加える。そして、僕達はラギドの町を出て街道を歩いていた。

 彼女が何故、ポンぺオの奴隷になっていたのか疑問に思い聞くである。


「どうして、あの商人の奴隷をしていたんですか?」

「ラギドの町に流れ着いた時に私の身なりを見て、ポンぺオの罠に嵌められてしまったんだ」


 彼女は自分の過去を話し出す。

 バルバラはこの国より遥か東にあるグヴァリャス大峡谷という竜人族の集落の出身で旅をしてラギドの町で来たという。


 彼女は竜人族の集落で戦士として修行をしていたが、その途中で里を飛び出して来たという。

 そんな時、ラギドの町に流れ着いた彼女を見て自分の護衛として迎えたいと画策していた。


 竜人族の戦闘力とプライドを知っていたポンぺオから決闘を申し出られる。

 彼等が戦闘で敗北した相手には敬意を表し従うのを知っていたからである。


 まともに戦えば普通の人間に勝ち目がない事も分かっていての事であった。

 彼女は何も知らずに堂々と応じたが商人側は卑怯な手段を使って勝利したという。


「ポンぺオの奴、決闘に負けたら従わせるのはおろか魔法の首輪を使って服従させてきて……決闘に敗れた私は竜人族として、それを受け入れなければならなかった……」


 彼女は悔しがり拳を握り締める。僕は彼女の肩に手を置いて慰めの言葉を掛けるのである。


「バルバラさん、もう大丈夫です! あなたは解放されたんですから」

「……ああ、そうだな」


 バルバラは僕の手を取り強く握り返す。そして僕の目を見詰め言う。

 僕も彼女の目を見詰める形となる。バルバラの顔は凛々しいが綺麗である。


「そう言えば自己紹介がまだだったな。私はバルバラ・ヴァクスムート、竜人族だ」

「僕はアベル・オランドです」


 そして、僕と彼女が紹介すると他の者達も自己紹介してくる。


「儂はガラド・バウサ。ドワーフだ、よろしく」

「おいらはハーフリングのニルス! よろしくお願いします!」

「私はアイラ・イーガン、古エルフだ。以後よろしく頼む」

「本当に僕達の仲間になってくれるんですか?」


 僕はバルバラに再度、確認すると彼女は笑顔で応えるのである。


「こちらの方こそ……仲間にして欲しいとお願いするよ」


 そして、僕達はポンぺオの罠から脱出した喜びを分かち合うのだった……。




 ラギドの町を出たのが夜であったので、僕達は野宿をする事にした。

 そして、野宿している場所で焚火を起こして、その前で皆と喋りながら話をする。


「それで、これからはどうするんじゃ?」


 ガラドが僕に聞いてくる。僕は皆を見渡しながら言うのである。


「バルバラさんが仲間になって人数が揃ったので、一旦戻ろうと思います」

「うむ……それがいいだろうな……」


 ガラドは僕の意見に賛同してくれる。すると、アイラが僕を見て質問してくる。


「アベル、何処に戻るのか?」

「はい……前にも言ったように追放した元仲間達を解らす為にダルグの町に行こうと思います」

「ふむ……そうなると、復讐するタイミングが揃ったという事か?」


 アイラがそう言うとニルスが思い出し励ますように、まくし立てる。


「そうだね! アベルを追い出した奴等に仕返しする番が来たんだね!」

「うん、そうだよ……」


 僕は彼等に元仲間への復讐を宣言する。そして、皆は僕に激励の言葉をかけてくれる。


「そうか……では、微力ながら手を貸そう」

「アベルの復讐をサポートするよ!」

「儂も手伝うぞ! 奴らに思い知らせてやれ!」


 3人の申し出に感謝するとバルバラが意外そうな顔をして言うのである。


「私は詳しい話はよく知らないが、アベルの仕返しを手伝えばいいんだな?」

「はい……お願いします」

「分かった、任せてくれ!」


 バルバラは力強く頷くと皆を見回して言う。


「私も復讐に加わろう! アベルには助けて貰った恩があるからな!」


 そんな彼女の申し出に僕は感謝の言葉を述べる。そして、今後の事について話し合うのであった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ