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星と煌めきの空  作者: 香坂
選択と真実の物語
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 いつもの定位置、すなわち両側にいる双子の顔を順番に見ると、二人ともちょっと複雑そうな表情を浮かべていた。

 アストロンに来れば俺の正体がわかると思っていたのに、肝心なことは結局わからなかったのだ。思惑が外れて複雑な心境がそのまま顔に出ているように見えた。


 かく言う俺もここに来ればすべてが解決するんだろうと漠然とした考えを持っていたから、複雑を通り越して落胆に近い感情がある。



 でも希望が全部潰えたわけではないはずだ。



 スイは視線を目の前のマルセルに戻すと、下した決断を自分に言い聞かせるように口にする。


「その話、お受けします」


「本当に⁉︎ よかった! ほら、シーちゃんの検査ってキツいでしょ? だから断られるんじゃないかってドキドキしたわ」


 少女のようにはしゃぐマルセルの隣で死んだ魚のような目をしているシグリ。


「……長官殿。そういえばしばらく調整されてませんよね? いい機会ですから本日午後より予約しておきましょうか」


「ええっ⁉︎ 何でそうなるの⁉︎ お願いだから勘弁してよシーちゃん」


 シーちゃん……。


 思わずシグリを見ると鋭い眼光で睨まれる。


「何か言いたげな顔ね? 私だって好きでこんな呼ばれ方してるわけじゃない。シーちゃんとシグリ姫のどちらがいいかと聞かれたので、より心的被害が少ないほうにしたまで」


 ギリギリと歯ぎしりが聞こえてきそうな勢いで嫌悪感をあらわにするシグリ。綺麗な顔に眉間のシワが深々と刻まれている。


「そ、そうなんですね……」


 彼女はマルセルさん関係で何かと苦労してそうな気がする。

 とにかく今は話題を変えたほうがよさそうだ。



「そ、そうだ。検査でわかったことについて詳しく聞いてもいいですか? 俺ってフィーリスじゃないけど同じ力が使えるって話でしたが、具体的には何ができるんですか?」


「そうねぇ。大抵のことはやろうと思えばできるだろうけど、わたくし達が神力を与えられているのは浄化をするためだから、それ以外で使うことはしないのよね。だから手本を見せるわけにもいかないし……口で説明するとなると少し難しくて……そこにあるものを変化させる? とでも言うのかしら」


 マルセルは考えながら天井を見上げ、うーんと唸り、やっぱり上手く説明できないわね、と困ったように笑った。



「じゃあ、プネウマと同じことはできないってどういうことなんですか? 俺、プネウマがやっていたことを真似できたんですが」


「プネウマがやっていたこと? それはどんなこと?」


「強風を起こしたり、風をこう……刃みたいに鋭くして相手に当てる、とかです」


 あの時プネウマがやっていたことをそっくりそのまま真似ることができた。だからこそさっき聞いた話と矛盾が生じてしまっている。



「あぁ、そういうことね。それならフィーリスにもできるわよ。それこそやろうと思えばの話だけどね。そう、言うなればフィーリスは元からあるものを変化させることができて、プネウマは何もないところから新たに生み出すことができる、という違いかしら。今の例で説明すると、フィーリスはここにある空気を操って強風を起こしたりできるけど、空気のない場所ではそれはできないわ。でもプネウマはそれができてしまうの。聞いたことない? プネウマ———精霊は創造の力を神から授かったっていう言い伝え」


「それなら聞いたことがあります。かつて神は精霊を生み出し、精霊たちに創造の力を分け与えて世界をつくったとかいう……でも実物に会うまではおとぎ話だと思ってました」


 マルセルは、ふふっと軽く笑うと足を組み直す。


「それね、おとぎ話じゃなくて本当の話なのよ。わたくし達フィーリスとの大きな違いがそこにあるわ」



 フィーリスは神から授かった浄化の力を行使し、プネウマは神から授かった創造の力を行使する。


 そしてそのどちらも神力という括りなのだという。



「大枠では同じ力なのだけど、細かいことを言うと全然別の力なのよねぇ。だからフィーリスの中にはプネウマを認めない者達もいたりするのよ」


 もしかして前にルトアが言っていたプネウマを認めない派閥というのはこのことなのか?


 チラリと隣を盗み見ると、不愉快さを滲ませつつも、それでも笑顔のルトアがいた。笑顔なのに怖い。




「フィーリスとプネウマの神力の違いについては何となくわかりました。あと俺は、外から神力の元になるものを取り込んでる? でしたっけ。それがプネウマと同じってことですが、それならフィーリスはどうやって神力を使ってるんですか?」


「フィーリスは己の体内に神力を溜め込んでいて、神力を使う時はそこから使っているの。でもスイちゃんは外から神力の元を取り込んで力を行使できるみたい。その仕組みはわたくし達にもよくわからないのだけど、そうすることが可能な力の源を有しているんだと思うわ。あくまでも推測だけどね」


 隣でシグリが「プネウマの生態を詳しく調べることができたら……」と悪い笑みで呟く。

 絶対いろんな機械に繋ぐ気だこの人。



 マルセルは大きく息を吐き出すとソファーの背もたれにドサッと背を預けた。


「本当、わたくし達からすればスイちゃんは規格外なのよ。フィーリスは生まれた時から神力の保有量が決まっているのだけど、それが外から補充できるだなんて……。これがどれほど重大なことかわかる?」


 語尾を強めてスイを見据えるマルセル。その山吹色の瞳は揺らぐことなく真っ直ぐにこちらを向いている。


 見つめられているだけなのに"捕らえられた"ような気持ちになるのはなぜだろう。



 どれほど重大なのか———俺にはその影響を窺い知ることは難しい。


 話を聞くととてもすごいことなんだなとは思う。でも自分のことを言われているとは思えない。いまいちピンとこないのだ。

 この力で何ができるか、どこまでのことができるのか、それすらもわかっていないからかもしれない。



 スイがゆっくりと首を横に振るとマルセルが苦笑気味に微笑んだ。


「無尽蔵に神力が使えるというのはある意味ではフィーリスにとって脅威かもしれないわね」


 その言葉の本当の意味をスイはまだ理解できなかった。




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