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第8話 騒がしい休日

 あの一夜から数ヶ月が過ぎた。俺はあの日自分がいかに無力であることを思い知らされた。あれから魔法の勉強より熱心になり、エリーナとの稽古もより激しくなっていた。

 今俺は魔法学校の図書館に来ている。ここの図書館はベルグラルド王国で最大級らしい。初級から上級魔法の魔法書がずらりと並んでいる。俺は今中級ブローガイスの中級魔法の下を勉強中だ。


「これくらいで終わりにしよう」


 今の時間は11時か…今日は土曜日ってこともあり…図書館には人が少ない。3時間ぐらい勉強したかな?まぁそんなことはいいや。


 ツヨシは図書館を出て…街へ食事をしに行く。朝食はパンとスープしか食べてないせいか…お腹がさっきから鳴りまくっている。


「おやツヨシくん今日も来てたのかい?真面目だねぇ」


 廊下を歩いていると中級ブローガイスでお世話になっているオスカー先生が話しかけてきた。


 オスカー先生は中級魔法を中心に教えてくれる先生だ。ほぼ全ての属性魔法を使えるので凄い人だ。ちなみにオスカー先生は中級魔術師だ。


「ええ。先生のお陰で中級魔法の下ももうすぐ完璧にできるようになります」


 とりあえず中級魔法の下まではほぼ全ての属性魔法は一応使える。まぁ…俺が得意なのは火属性魔法と水属性魔法なんだけどな。


「そうかい。そうかい。君は大変素晴らしい生徒だから期待してるよ。引き続き頑張りたまえ」

「はい!! ありがとうございます!!」


 今のところ俺は中級ブローガイスでは上位の成績だ。俺と並んでゲルクも上位にいる。エリーナは俺と一緒によく勉強するようになってからは中位にいる。もう少し頑張れば上位に行けるだろうと思う。


「今日は一人だしな。何食べようかな?」


 ここの街は料理店が多いから毎回迷う。パスタみたいな食べ物、ステーキ、フルーツ料理をメインのお店、いろいろとある。今日は腹もすごく減ってるし、ステーキでも食べるか。

 ツヨシは学校から歩いて15分の所にあるステーキ屋さんに来た。


 ここのステーキ屋はこの街では結構有名らしい。牛肉がとにかく美味いらしい。俺のもといた世界とどう牛肉の味が違うのか楽しみだ。そう考えているうちにキターーー!!これだ!!よくわからないソースを肉にかける。そしていざ!!


「うまい!!こっちの世界の牛肉も美味しい!!」


 牛肉はどこの世界でもうまいものなんだな…ん? あいつは…

 ツヨシの前にいる席で見覚えのある男が一人でステーキを食べている。


「ん?」


 あ…目があった…ってこいつ!!あの時の!!ブローガイスに入った初日に前の席にいた奴じゃねぇかよ!!よりによってこんな所で!!


「おやおやこんな所で会えるなんて光栄だね〜ツヨシくん〜」

「誰がお前と会えて光栄なんだよ」

「えーだって成績優秀の君とここで出会えることなんて光栄だろ〜?」


 こいつは俺と同じく上位にいる。嫌な奴だが…頭はいい。確かクルト•バルテンだったな。


「へっ…そんな嫌な顔するなよ。せっかくのステーキが不味く感じるだろ」


「お前には用はない。俺はさっさと食べて図書館に戻る」


 俺は相手したくないのでさっさとステーキを口に飲み込む。ああ…せっかくの美味しいお昼ご飯が台無しだ。


「お前といつもいる奴らは今日いねぇじゃねぇか。うるさい女もいないからありがたいぜ」


 クルトは笑いながらジュースを飲んでいる。


「あーそれはどうもありがと。んじゃ俺はここを出ていくんで」

「おいおいもう行くのかよ。飯の味しっかり味わってねぇのじゃねぇか?」


 ツヨシはさっさと食べ終わり、席を立って銅貨を10枚払って出ていった。


「はぁ〜疲れる奴だ……気を取り戻して午後からも勉強頑張らないとな!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方…エーゲルト屋敷では…


「そうですか…分かりました…」


 昼食を食べているエーゲルトはメイドからの話を聞いている。エーゲルトの表情はあまり良さそうではないようだ。


「エーゲルトなんかあったの⁇」


「ああ…国王から緊急で王都シーラに来て欲しいと言われた。すまないが今から急いで王都に向かう。嫌な事が起きたみたいだ。ツヨシには王都に向かったと言っておいてくれ」


 エーゲルトは食事中だったが…食べるのをやめ、テーブルを立ち上がり部屋を出ていった。


「ノア…何かよくない事が起きたの⁇」


 エリーナもあの日の夜からノアとよく話すようになった。ノアはこの屋敷でもかなり優秀なメイドなので信頼しやすい。


「ここ数ヶ月クーシ教による被害が酷くなってきたようです。この街も危ないかもしません」


 クーシ教による被害はこれまでもあったが…ここ数ヶ月酷くなってきている。奴らは突然現れるため予想ができない。


「そうなのね…嫌な事が起こりそうな予感だわ…」


 エリーナは窓の方を眺めながら考えていた。空は黒く曇っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アルミネラ魔法学校図書館…


 ピカーン!!ピカーン!!


 図書館の中でも雷の音が大きく響く。曇っていて図書館は少し暗い。まぁ…ろうそくが机に置いてあるので…気にはしないが……あ、でも少し暗いわ…懐中電灯まだ電池残ってるかな⁇

 ツヨシはリュックから懐中電灯を取り出す。


「異世界召喚されてから以来使ってないけどつけてみるか。スイッチオン‼︎」


 あ…ついた。オッケーオッケーこれでよし…よくよく考えてみたんだが…この世界って電球とかないよな。雷属性魔法はある。ってことはあれじゃね? この懐中電灯の電球をベースに開発すれば暗い街が明るくなることね?これはいい案だ。こいつを上手く使えば儲けられるぞ!!!いつか旅に出るときにめちゃくちゃ金貨稼げるじゃねぇかよ!!


「ヒッヒッヒッヒ」


 暗い図書館で一人だけ笑っていた。なんか…怪しいやつと思われるからやめた方がいいな。うん。妄想して笑うのやめよ。


「ふぁ〜〜眠っ。新しい魔法書でもさがしてみるか〜」


 いつも俺は中級魔法書を中心に読んでいるが…今日は休みの日ってこともあり…別の魔法書にも手を出してみたい。

 ツヨシは図書館の奥の方へ歩いて行った。すると…ずいぶんと古そうな魔法書を見つける。


「何だこれ?」


 ホコリがたくさん付着しててボロボロの魔法書を取り出す。かなり年数が経っているようだった。


「暗黒魔法術⁇ 読んでみるか」


 これって…結構危ない奴なんじゃないのか?ほらゲームとかで暗黒っいうワードって悪じゃん。危険な匂いがプンプンするぞ〜。


「よ、読めねぇ…何だこりゃ…」


 俺はこの世界に来てからこの世界の文字をある程度は覚えた。だが…この魔法書の文字は…みた事がない文字ばかりだ…古代文字とかか?かなり古い本だけど…いつからここに置いてあるんだ⁇


「まぁ…気になるし…借りてみるのもありか…」


 まぁ…特に役に立つことはないだろうが…ミステリー感あるし借りてみるのも悪くない。俺はしばらく借りることにした。


「そろそろ帰ろっと…」


 俺はこうして図書館を出て行きエーゲルト屋敷に帰る。帰宅するとノアが玄関で俺を待っていたようだった。


「お帰りなさい。ツヨシくん」

「おーただいま」


 ノアとは普通に話すようになった。今までは敬語を使っていたんだが…俺がもうタメ口で話して良いと自分からお願いした。まぁ…メイドの中でも一番仲が良いしな。


「あれ?エーゲルトさんは?どっか出かけた?」


「それがですね…エーゲルト様は王都シーラに向かわれました。ここ数ヶ月クーシ教徒の活動が活発になってて…それを阻止するために作戦会議をするために王都に向かわれました」


 クーシ教か……数ヶ月前にエーゲルトさんから聞いた組織か…神の封印を解くために活動してるとかなんか言ってたな…ってことは…結構やばい奴では⁇


「ここの街にも奴らは来るのか⁉︎」

「来るかどうかは知らないわ。でも奴らは突然現れる。ここの街も安全ではないわ」


 エリーナが二階から降りてきて話しかけてくる。


 クーシ教は世界中に現れていろんな悪事を働いてるとは聞いてる。つまり…この街にもだ…奴らが現れたとしよう…どうなるんだ⁇ 皆んな殺されるのか⁇


「シーク教徒にはまともに話は通じませんよ。奴らは無差別に殺しにかかってきます。奴らの野望は世界を支配すること。そして邪魔者を全て排除することです。私たちも例外ではありません」


 ノアが説明してくれた。確かに…俺たちも一応エーゲルトさんの陣営だ。エーゲルトさんも騎士だからな…奴らにとっては邪魔な存在だろうな。俺らも排除対象になるだろうな…


「そうか…今の俺はあの時よりは強くなってる…でも…奴らと戦うってなった時…勝てるかは別だ…」


「私がついてるなら大丈夫よ。今エーゲルトがいなくても奴らがここに来たら私がやっつけてやるわ」


 エリーナが自信満々そうな顔で話す。エリーナは中級剣士だ。確かになかなか強いしかし、クーシ教徒複数人を相手には厳しい。エリーナ自身はそれを分かっているが、彼女はプライドが高いため隠している。


「エリーナさま、いくらエリーナさまでもそれは厳しいと思います。おそらく戦ったとしても…すぐやられてしまいますよ」


 ノアさん!!本音めちゃくちゃ言うね〜!!おっかない、メイドさんだ。


「な、何よ!!ノア!!私の実力馬鹿にしてるの⁉︎ 」

「いえ、事実を述べただけです」

「うっ…」


 ノアがばっさりと切る。エリーナは正論を言われたため…言い返す言葉もない。


「まぁ…まぁ…二人とも…もし奴らが来たら何とかしましょ…」

「そうですね。私も一応戦えますし…」


 えっ!? ノアさん戦えるの!? 初耳なんだが…エーゲルトさんすげぇな。表ではメイドやってるけど実は戦える実力者集めてるんだな!!


「魔法使えるのか?それとも武器か?」

「両方です。私こう見えても昔冒険者ギルドメンバーに入ってたんですよ。まぁ私は主に後陣で闘いますが」


 そうか…異世界には冒険者ギルドとかあるよな。でも…ギルドメンバーに入ってたってことはなかなかお強いんじゃないか?これはすごい助っ人だ!!


「な、何で今まで言わなかったのよ!!私も知らなかったじゃない!!」


 エリーナが不満そうにほっぺを膨らまして怒っている。いやいやお前知らなかったんかい!!俺は仕方ないとして…お前はここにずっと住んでんだろ!!


「そうですね。エリーナさまそういうの興味がないと思ったから…ほら…私エリーナ様が小さい時に入ってきたでしょ⁇ あの時のエリーナ様はとっても可愛く美しいお嬢様だったので…戦闘とか悪い教育になるので…」


「だったら私が剣を使って修行するようになった時に何で言わなかったんですか!!」


「それは…」


 今度はノアが反論される。ってか…あれだ…この二人喧嘩ばっかするよな…まぁ仲良さそうだしいいけどさ。


「ノア以外のメイドさんは戦えるのか?」

「いえ、戦えるのは私だけです」

「そうか」


 なるほど…ノアが特殊なだけか…確かによく見てみるとノアは女性なのに筋肉ムキムキで他のメイドさんは普通だったな…


「エーゲルトさんはいつ帰ってくる予定なんだ?」

「分からないです。突然呼ばれたものですから」

「あーそうか…分かった。で?変わりにここの屋敷を管理する人は誰なんだ?」


 俺は周囲を見渡す。誰だ?こういうときに任されている人は…


「ん!!」


 ん?まさかな…いやいや違うだろ。誰だ?任されている人は?


「ん!!ん!!」

「誰だ?」


 ツヨシはさっきから私よ!と強く主張しようとしてる人を無視する。


「いい加減にしなさいよ!!私よ!!」

「え?本当に?お前?」

「私以外誰がいるのよ!!」


 エリーナだと!?エーゲルトさんこの人に任せているのか!? 大丈夫か!?


「ノア!!お前が管理した方が良いぞ!!」

「私は…あくまでメイドなんで…ここはエリーナ様が…」

「ふん!!エーゲルトが帰るまでは私がここを管理するのよ!!ツヨシ!!私の言うことを全て聞くのよ!!」

「あ…無理です」

「何よ!! こうなったら!!」


 エリーナは走って倉庫へ向かって行った。数分後…木剣を右手に…おいおいおい!!


「お、おいお前?」

「ツヨシ!! お仕置きよ!!誰に向かって口を聞いているのよ!!」

「ひ、ひぃぃ〜〜〜!!」


 俺はこの後エリーナに追いかけ回られるのだった。もう、やめてくれ!!この女怖い!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 とある建物の上の屋根………


「ふふふふ…あれがアルミネラ魔法学校か!!どこかに暗黒魔法書があるはずだ!!」


 緑色の髪の色をした青年が満月の夜の光に当たりながら立っている。


「君達…明日の昼に…分かってるね⁇」

「はい!! マクソランス様!!」


 マクソランスと呼ばれる男の前に多くの教徒が片膝を立ててしゃがんで頭を下げている。


「明日は最高の日曜日になりそうだね。ふふふふ……はっはっはっはっは!!!!!!!!」













※次回第9話は来週あたり上げようと考えています。


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