宇宙人に会いたい話
こんな都市伝説がある。もし検索サイトに、空想配達便と検索したら、強く願った人にだけそのサイトが現れ、空想を配達してくれる。
この広い宇宙では、僕たち以外の宇宙人が必ず存在する。
なのに、僕たちが出会うことはほとんどないと言われている。
文明がそこまで保てるか。物理的に遠すぎる。膨大な時間がかかる…。
夢の無い話だ。でもこれが現実だ。
俺は小さいころから、その手の与太話を聞くのが好きだった。SFも大好きだ。
だから存在してほしいと思う。会いたいと思う。
でも今の科学力じゃあ、到底会えるなんて思えない。
そんなとき、このサイトの存在を知った。
空想でも会えたら、この渇望めいた気持ちも、少しは晴れるだろうか。
そんなことを思いながら、祈るように名前と配達日を指定した。
料理の最中のことだった。
ピンポーン、チャイムが鳴る。
火を消して、手を洗い、玄関に向かう。
「はい」
ドアを開けると、そこには全身黒装束の怪しい人が小さな小箱を抱えて立っていた。
まるで、UFOの使者みたいだ。
怪しい人は人工合成されたみたいな普通の声で、美空碇さんですか、と本人確認してきた。
「はい…」
怪しい人は、小さな小箱を俺に差し出して、こう言った。
「小箱を開けると、空想が出てきます。人によりますが、空想はおよそ30分ほどです」
そう言って怪しい人は去っていた。
手の中の小箱が、まるでブラックホールのようにそこに重く鎮座していた。
玄関の壁に凭れて、その箱を眺めた。
与太話かもしれない。でも爪先だけの希望がそこにある気がして、あってほしいと思いながら、祈るように箱を開けた。
目を開けると、俺は宇宙服なしに宇宙空間を漂っていた。
宇宙は暗いのに、なぜか俺には明るく見えた。
少しずつ遠くから近づいてくるものがある。
それが何なのか、俺は知っていた。
俺は遂に目の前にきたそれを触れた。
恐れはなく、ただ静かな興奮だけがあった。
カプセルの中の瞳と目が合った。
空想はそこで終わった。
カーテンを開く。空はすっかり暗くなっていた。
薄い星々が、ビルの光に負けず点在している。
どこか。どこかにいるのか。
心で呼びかける。
返事はない。
返事がないなら、こちらから行くしかない。
僕はパソコンを起動して、宇宙飛行士募集のページを開いてじっと見つめた。
そしておもむろに打ち始めた。
待ってて。
待ってて。
そう呼びかけながら。




