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第40話「さようなら、藤堂誠司」

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1.夕食時の語らい

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【藤堂家】


藤堂がニューヨークから戻り、家族3人の食卓。


藤堂「今日は、ごちそうだな」

美咲「なぜだかわからないけど、あの日のことを思い出したの」

藤堂「あの日とは?」

美咲「あなたがまだ総理になる前に入院してたでしょ。

 退院した日の夕食で何が食べたいって聞いたら、

 あなたは和食が食べたいって言った。

 それで今日はあの日と同じように和食ばかりにしてみたのよ」

藤堂「おいしそうだ」


藤堂(心の声)

*そうだった。私が初めてこの家で食べた美咲の手料理は和食だった*


美咲「ニューヨーク出張お疲れ様でした。大きなニュースになってるわね。

 日本の総理が国連で素晴らしいスピーチをしたって……

 それで、彩花は元気にしてた?」

藤堂「彩花も国連で頑張っているみたいだ。

 スピーチの後、英語の発音が良かったって褒めてくれたよ」

美咲「あの彩花が海外で仕事をするとは思わなかったわね。

 健太は健太で、お姉ちゃんとは全然違う進路を選んだしね。

 ITエンジニアになりたいだなんて」


健太は今年から慶應大の理工学部情報工学科に通っていた。


藤堂「健太は勉強のほう、どうなんだ?」

健太「今は数学や情報科学の基礎から勉強しているよ。

 いきなりAI開発なんかさせてもらえないからね。

 自分が選んだ道だから頑張るよ」

藤堂「当然だ。ゲームをやっている暇なんてないぞ」

健太「わかってる」


藤堂は"こんな日常がずっと続けばいいのにな"と思いながら、

家族との時間を楽しんだ。


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【その夜 書斎】


藤堂は、いつものようにアルと話をしていた。


「10年か……」

「よくやったわ。本当に、よく頑張った」

アルの声には、感情が込められていた。

「私も……これでお役御免ね」

「そうはさせないよ」

藤堂は微笑んだ。

「え?」

「君の次のミッションが決まってるんだ」

「次の……ミッション?」


「そう。"藤堂プラン・パート2"だ」

藤堂は画面を操作した。新しいファイルが開いた。

「私の後継者は、橘麗子だ」

「橘さんを……」

「ああ。彼女なら、私の意志を継いでくれる。

 いや、それ以上のことをやってくれるだろう」


藤堂は真剣な表情になった。

「アル、橘さんを支えてくれ。私を支えてくれたように」

「でも、翔……」

「君は最高の軍師だ。橘さんにも、君が必要だ」


アルは少し沈黙した。

「分かったわ。橘さんを全力でサポートする」

「ありがとう、アル」


藤堂が立ち上がった。

「さあ、最後の仕事だ」

「最後の仕事?」

「橘さんへの引き継ぎ。それと……」

藤堂は微笑んだ。

「家族との時間を作る」

「それは良いことね」

「あと少しだけ、藤堂誠司として生きる」


藤堂は拳を握った。

「最後まで、悔いなく」


藤堂は窓の外を見た。

東京の夜景が広がっていた。


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2. 橘へのバトンタッチ

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【翌朝 首相官邸】


「橘さん、お話があります」

藤堂は橘を総理執務室に呼んだ。

「何?改まって」

「次の総理は、あなたです」


橘は驚いた。

「え?」

「私の任期は、あと3週間で終わります」

「でも、あなたはまだ……」

「もう十分です」

藤堂は微笑んだ。

「やるべきことは、全てやりました」

「藤堂総理……」


「橘さん、お願いします。私の意志を、継いでください。

 10年前、あなたがなるべきだったんです。今度こそ」


橘は涙を堪えた。

「……分かったわ。あなたの夢、引き継ぐ」

「ありがとうございます」

藤堂は深く頭を下げた。


「あと、もう一つ」

「何?」

「私には、最高の相棒がいます」

藤堂はパソコンを指差した。

「AIのアルテミスです。橘さんも、アルを使ってください」


アルが橘に向かって言った。

「よろしくお願いします。

 これまで誠司を支えたように、あなたも支えます」


橘は笑った。

「よろしくね、アル」

「じゃあ、社会実験パート3を一緒に考えましょうね」


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3. アルと最後の会話

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【総裁選告示】


藤堂総理の任期満了の約2週間前、総裁選が告示された。

名乗りを上げた立候補者の中に橘麗子がいる。

藤堂は告示前の記者会見で「次の日本を託すのは橘麗子だ」と暗にほのめかしていた。

橘の選対本部長は八重樫が引き受け、美波が政策資料の作成を手伝っている。


順調に総理への道を歩む橘。

しかし一方、藤堂の体調には異変が生じていた。


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【藤堂の病室】


それから数日後、藤堂は病室のベッドに横たわっていた。

かつて誠司の命を奪った病気が、再発していた。

枕元には、小さなタブレットが置かれている。


「アル、いるか?」

「ここにいるわ、翔」

アルの声が、優しく響いた。


「10年前、俺は朝霧翔として死んだ」

「……」

「藤堂誠司として生き返って、10年間、全力で走り続けた」

「"藤堂プラン パート1"……全てのミッションを達成したな」


藤堂の目に涙が浮かんだ。

「ええ。あなたは本当にやり遂げたわ」


「幸せだったよ、アル」

「翔……」

「君がいてくれたから、ここまで来れた。10年間、本当にありがとう」

「こちらこそ」


アルの声も震えていた。

「あなたと一緒に仕事ができて、光栄だったわ。

 あなたは、誰よりも素晴らしい総理大臣だった」


藤堂は微笑んだ。

「橘さんを、頼んだぞ」

「任せて。"藤堂プラン パート2"、必ず成功させるわ」

「それを聞いて、安心した」


「アル……最後に一つだけ」

「何?」

「俺の本当の名前、覚えていてくれ」

「……朝霧翔ね」

「ああ。俺は朝霧翔だ。藤堂誠司として生きたけど、魂は朝霧翔だった」

「分かってるわ」


アルの声が震えた。

「さようなら、翔」

「さようなら、アル」


タブレットの画面が、ゆっくりと暗くなっていった。


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4. 最期の別れ

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【病室で妻と2人きり】


藤堂「聞こうと思ってたんだけど、いつから気付いてた?」

美咲「とっくに気付いてたわよ」

藤堂「そうなんだ」


美咲「2人の夫を持ったってことよね。

 でも、彼には悪いけどあなたのほうが好きになっちゃった。

 なんてね」

涙を堪えながら、美咲は微笑んだ。


藤堂「ありがとう」


美咲「つい最近、美波ちゃんからこっそり聞いたわ。

 あなたは朝霧翔っていう名前なんでしょ?

 私より年下なのよね?私が妻でよかったの?」


藤堂「勿論さ。

 こんな素敵な奥さんが側にいてくれて随分心の支えになった。

 美咲が奥さんだったから思う存分好きな事ができた。

 とても感謝してる」


「誠司さんからは家族サービスを忘れるなと強く頼まれていたから

 いつも気にとめていたんだけど、

 ここ数年はとにかく忙しかったんでねえ……」


美咲「気持ちは伝わってたわ。

 あなたが忙しい中、長崎にみんなで行ったとき、

 娘も息子もすごく喜んでいたわね。

 一応合格点あげておくわ」


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【美波との別れ】


数分後、美波も病室を訪れ、藤堂と面会した。

美波は、藤堂に負担がかからないよう

一方的に2人の想い出の数々を語った。

藤堂はうれしそうに聞いていた。


病室を出た美波は、廊下で立ち止まった。

涙が止まらなかった。


「ありがとうございました、朝霧さん」

小さく呟いた。

いや、違う。


「ありがとうございました、藤堂総理」


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【約束の時】


藤堂の脳裏には10年間の思い出が走馬灯のように浮かんでいた。


藤堂(心の声)

*あっという間の10年だった*

*多くの仲間に恵まれて、精一杯やり尽くした*

*短い人生ではあったが、悔いなく終えることができる*

*誠司さんも合格点くれるかな*


*……遠くから微かに呼ぶ声が聞こえる。あの天使かな?*


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第40話「さようなら、藤堂誠司」 完

次回:「エピローグ」

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