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第10話「デジタル選挙革命(後編)」

________________________________________

シミュレーション Part.6 国会攻防戦

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【藤堂の書斎】


画面が切り替わる。


「藤堂」

アルが言った。

「今日が山場よ」

「"選挙デジタル化法案"の本会議採決」


「反対勢力も総力戦で来るだろうな」

藤堂が答えた。


「でも、あなたが"調整者"として整えた議論が、賛成派を後押ししている」

アルが言った。


「今日は調整じゃない」

藤堂が真剣な顔になった。

「"決断"を示す日だ」


「ええ」

アルが頷いた。

「あなたの本気を見せる時よ」

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【三浦遼・会社の屋上】


遼はスマホを握りしめていた。

画面には、国会中継。

《選挙デジタル化法案 本会議採決へ》

遼は呟いた。

「...頼む。通ってくれ」

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【国会・本会議場】


反対派の総攻撃が始まった。

神崎啓介が立ち上がる。

「デジタル化は地方を切り捨てる!」

「高齢者の声が届かなくなる!」

別の議員も立ち上がった。

「ネットは不正の温床だ!」

怒号が飛び交い、議場は混乱寸前。


遼は画面を見ながら呟いた。

「...また恐怖を煽ってる」

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【賛成派の反撃】


白石議員が立ち上がる。

「現行制度では、地方ほど"金のかかる選挙"になっています」

白石が力強く言った。

「デジタル化は、民主主義の入口を広げる改革です!」

議場の一部から拍手。


だが、反対派は黙らない。

怒号が続く。

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【藤堂総理、国会を制す】


そのとき——

藤堂総理が、ゆっくりと、しかし迷いなく立ち上がった。

今度の藤堂は違った。

静かな調整者ではない。

"改革を成し遂げる総理"の顔だった。


「皆さん」

藤堂の声が響いた。

「この国の選挙は、今、岐路に立っています」

議場が静まり返る。

「金と地盤で結果が決まる選挙を、私たちはいつまで続けるつもりですか」

反対派がざわつく。

だが、藤堂は一歩も引かない。

「高齢者の不安には、政府が責任を持って対応します」


藤堂が続けた。

「地方の声も、必ず守ります」

「しかし——」

藤堂の声が強くなった。

「"現行制度が公平でない"という事実からは逃げられない」

議場の空気が変わる。

「政治は変わらなければならない」


藤堂が議場を見回した。

「そして変える責任は、ここにいる私たちにある」


その言葉は、議場全体を圧倒する力を持っていた。


遼は画面を見つめた。

「...これが、総理の本気か」


藤堂は最後に、静かに、しかし力強く言った。

「私は、この改革を前に進めます」

「国民のために」

「未来のために」


議場が揺れた。

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【採決】


しばらくの沈黙の後。

委員長が立ち上がった。

「これより、採決を行います」

賛成、反対の札が上がる。

遼は息を呑んだ。


委員長が宣言した。

「本法案は、可決されました」

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【三浦遼・会社の屋上】


遼は屋上で立ち尽くした。

「...通った」

遼が呟いた。

「本当に、通ったんだ」


春の風が吹き抜けた。

遼の目に、涙が浮かんだ。

*変わる*

*この国が、変わる*

俺にも、チャンスが来る

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【藤堂の書斎】


画面が一時停止した。

「やったわね、藤堂」

アルが嬉しそうに言った。


「これで"お金の壁"にひびが入った」

藤堂が微笑んだ。

「あとは実装するだけだ」


アルが画面を切り替える。

「次は、新しい選挙の姿を見せるわ」

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シミュレーション Part.7 新しい選挙

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【藤堂の書斎】


画面が切り替わる。

「藤堂」

アルが言った。

「あなたの改革が、ついに現場で動き始めたわ」


「...そうか」

藤堂が頷いた。

「ここからが本当の勝負だな」


「三浦遼の地元、岡山第三区」

アルが説明した。

「"新制度"で行われる初めての選挙が始まった」


「遼はどうしている?」

藤堂が聞いた。


「彼は、静かに燃えているわ」

アルが答えた。

「"お金の壁"も"既得権の塔"も越えられなかった男が」

「今、初めて"公平な土俵"に立とうとしている」


藤堂は目を細めた。

「...見せてくれ」

アルが画面を投影する。

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【岡山駅前】


春の風が、街を優しく撫でていた。

駅前の広場には、新しく設置された巨大なデジタル掲示板が光を放っている。

そこには、候補者たちの顔写真と政策が、一定間隔で切り替わりながら表示されていた。

《三浦 遼(無所属・新人)》

《神崎 啓介(現職・与党)》

《その他の候補者》


遼の顔が映し出された瞬間。

遼は胸の奥が熱くなるのを感じた。


*本当に、ここに立てたんだ*

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【街の変化】


街は静かだった。

選挙カーの連呼は、新制度で大幅に制限された。

代わりに、駅前の大型ビジョンや、自治体の公式サイト、SNSの公式アカウントで、候補者の政見動画が流れている。

遼の動画も、その中にあった。


「三浦遼です」

動画の中の遼が語りかける。

「この街を、もっと開かれた場所にしたい」

「お金ではなく、中身で選ばれる政治を作りたい」


動画の再生数は、すでに数万回を超えていた。

遼は、胸の奥が震えるのを感じた。


*これが、公費で公平に提供される"最低限の露出"か*

*これがあれば、お金がなくても戦える*

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【オンライン討論会】


その夜。

遼は自宅の小さな部屋で、オンライン討論会の準備をしていた。

机の上には、ノートパソコンと簡易ライト。

背景には、白い壁だけ。

だが、それで十分だった。


討論会は、自治体が公費で開催し、全候補者が参加することが義務化された。


遼は深呼吸をした。

「...行こう」


画面が切り替わり、司会者の声が響く。

「本日は、選挙デジタル化後、初めてのオンライン討論会です」

「まずは、三浦遼候補からお願いします」


遼は、画面越しに語り始めた。

「私は、この街の"閉じた構造"を変えたい」

「若者が挑戦できる街にしたい」

「お金ではなく、政策で勝負できる選挙を作りたい」


コメント欄が流れ始める。

《わかりやすい!》

《こういう候補を待ってた》

《神崎さんより説得力ある》


遼は、胸の奥が熱くなるのを感じた。

*伝わっている*

*画面の向こうに、確かに届いている*

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【現職・神崎の戸惑い】


討論会の後半。

神崎啓介が発言した。

「私は、地元を歩き、人々の声を直接聞いてきました」

「それが政治の基本です」


だが、コメント欄は冷静だった。

《歩くのは大事だけど、それだけじゃ...》

《オンラインで説明してほしい》

《地盤の強さだけで勝つ時代じゃない》


神崎は、画面の向こうでわずかに表情を曇らせた。


遼は、その姿を見て悟った。

*彼は悪人じゃない*

*ただ、時代が変わっただけだ*

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【選挙費用1/10の世界】


選挙期間が始まって一週間。

遼の支出は、驚くほど少なかった。

•事務所:小さなワンルーム(上限内)

•ポスター:デジタル掲示板で公費掲載

•動画:公費枠+自作の追加分

•移動:最低限のみ公費負担

•スタッフ:オンラインボランティア中心

総額は、現行制度の1/10以下だった。


遼は、帳簿を見ながら呟いた。

「...これなら、誰でも挑戦できる」

胸の奥に、確かな希望が灯った。

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【若者の声が街を変える】


選挙期間の終盤。

遼が駅前で挨拶をしていると、若い女性が声をかけてきた。

「動画見ました。応援してます」

続いて、高校生のグループが近づいてきた。

「討論会、めっちゃよかったです!」

「三浦さん、頑張ってください!」


遼は驚いた。

*若者が、政治の話をしている*

*この街で、こんな光景を見る日が来るなんて*


そのとき、背後から声がした。

「...三浦くん」

振り返ると、神崎啓介が立っていた。

遼は息を呑んだ。


神崎は、静かに遼を見つめて言った。

「時代は変わる。だが、政治は続く」

「君がその先を担うなら...」

神崎が続けた。

「私は、それを止めるつもりはない」


遼は、胸の奥が熱くなるのを感じた。

*敵ではない*

*ただ、時代の境界線に立っているだけだ*


遼は深く頭を下げた。

「ありがとうございます」

「全力で、戦います」

神崎は静かに頷き、人混みの中へ消えていった。


遼は、その背中を見つめた。

*ありがとう、神崎さん*

*あなたの時代も、決して無駄じゃなかった*

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【藤堂の書斎】


画面が一時停止した。


「藤堂」

アルが言った。

「現場は順調よ」

「"お金の壁"が崩れたことで、若者の挑戦が一気に増えている」


「遼はどうだ?」

藤堂が聞いた。


「彼は...」

アルが微笑んだ。

「"新しい政治の象徴"になりつつあるわ」


藤堂は静かに微笑んだ。

「いい流れだ」

「構造が変われば、人が動く」

「人が動けば、社会が変わる」


「次は、結果ね」

アルが言った。


「ああ」

藤堂が頷いた。

「だが、結果より大事なのは——」

藤堂が続けた。

「"挑戦できる社会"が生まれたことだ」


アルが画面を切り替える。

「では、最後のシーンを見せるわ」

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シミュレーション Part.8 勝利

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【藤堂の書斎】


画面が替わった。


「藤堂」

アルが言った。

「岡山第三区の開票が始まったわ」


「...遼のところか」

藤堂が答えた。


「ええ」

アルが頷いた。

「"新制度"で行われる初めての選挙」

「あなたの改革が、現場でどう受け止められたかが見える」


藤堂は、静かに画面を見つめた。

「遼はどうしている?」


「緊張しているけれど...」

アルが答えた。

「彼は今日、確かに"挑戦者"ではなく"候補者"として立っている」


「それで十分だ」

藤堂が言った。

「結果はどうあれ、彼はもう前に進んでいる」


アルは微笑んだ。

「では、現場を見てみましょう」


画面が切り替わる。

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【岡山駅前・開票センター前】


夜の岡山駅前は、いつもより静かだった。

選挙カーの喧騒はない。ポスターの乱立もない。

ただ、

大型ビジョンに映る開票速報を見つめる人々の姿があった。


遼は、広場の端に立っていた。

胸の奥が、張り裂けそうなほど緊張している。


「遼、深呼吸しろ」

佐伯が言った。

「お前はやること全部やった」


「...ありがとう」

遼が答えた。


そのとき。

大型ビジョンにアナウンサーの声が響いた。


「ただいまより、岡山第三区の開票速報をお伝えします」

広場が静まり返る。

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【最初の速報】


画面に、候補者名と得票数が並ぶ。

《三浦 遼》

《神崎 啓介》

《その他の候補者》

最初の速報は、まだごく一部の票。

だが、

遼の名前が思ったより上位にあるのを見て、広場がざわついた。


「三浦さん、いい位置にいるぞ...!」

「新人なのに...」

「デジタル選挙、マジで変わったな」

「若い人の票が動いてる」


遼は胸が震えた。

*本当に、ここまで来たんだ*

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【神崎との対話】


背後から声がした。

「三浦くん」


振り返ると、神崎啓介が立っていた。


「...神崎さん」

遼は驚いた。

神崎は静かに言った。

「いい選挙だったな」


遼は言葉を失った。


「私は長い間、この街を守ってきたつもりだった」

神崎が続けた。

「だが、時代は変わる。変わらなければならない時もある」


「...僕は、この街をもっと良くしたい」

遼が言った。

「そのために、ここに立っています」


神崎は、わずかに微笑んだ。

「結果がどうであれ、君はこの街に"風"を起こした」

「それは誰にも否定できない」


遼は深く頭を下げた。

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【最終局面】


大型ビジョンに、アナウンサーの声が響く。

「まもなく、最終的な開票結果が発表されます」


広場が静まり返る。


「遼...」

佐伯が言った。

「どんな結果でも、お前はもう勝ってるよ」


遼はゆっくり頷いた。

*そうだ*

*この街は変わった*

*選挙の構造が変わった*

*それだけで、十分だ*

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【結果】


アナウンサーの声が響く。

「それでは、岡山第三区の最終結果をお伝えします」


遼は、静かに目を閉じた。

胸の奥で、確かな熱が燃え上がっていた。


*俺は、この街を変える*

*どんな結果でも、ここから始まる*


画面が切り替わる。


広場が息を呑む。

遼は、ゆっくりと目を開いた。

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【開票速報】


大型ビジョンに数字が映し出される。

遼の得票数が、次第に増えていく。

「遼!」

佐伯が叫んだ。

「見ろ!」

画面には——


(ここで具体的な結果は示されない)


遼は、胸の奥が熱くなるのを感じた。

勝ったのか、負けたのか。

それは、この瞬間には重要ではなかった。


*俺は、ここに立てた*

*お金の壁を越えて*

*既得権の塔を越えて*

*そして、たくさんの人に声を届けられた*

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【広場の拍手】


駅前の人々が、遼に向かって拍手をし始めた。

若い女性が叫んだ。

「三浦さん、お疲れ様でした!」

高校生たちが駆け寄ってきた。

「ありがとうございました!」

「三浦さん、すごかったです!」


遼は涙が溢れるのを止められなかった。

*これが、新しい選挙だ*

*これが、変わった世界だ*


佐伯が肩を掴んだ。

「遼...お前、やり切ったよ」

遼は、ただ静かに頷いた。


*これは、終わりじゃない*

*ここからが始まりだ*


春の夜風が、遼の頬を優しく撫でた。

その風は、まるで新しい時代の幕開けを告げるようだった。

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【藤堂の書斎】


画面が一時停止した。


「藤堂」

アルが言った。

「三浦遼は...」

アルが微笑んだ。

「彼の選挙は、成功だったわ」


「勝ったのか?」

藤堂が聞いた。


「それは...」

アルが画面を見つめた。

「見る人によって、答えが違うかもしれないわね」

「でも、確かなのは」

アルが続けた。

「彼が"お金の壁"を越えて、ここまで来たこと」

「そして、多くの人に希望を与えたこと」


藤堂は静かに頷いた。

「それで十分だ」

「遼だけじゃない」

藤堂が言った。

「全国で、挑戦者が生まれ始めている」

「構造は変わった」

藤堂が続けた。

「あとは、時間の問題だ」


「これが..."新しい政治"の始まりね」

アルが言った。


「ああ」

藤堂が頷いた。

「政治は続く」

「ここからが本当の仕事だ」


画面が消えた。

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《シミュレーション終了》

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【藤堂の書斎】


藤堂は立ち上がった。

「やる気がみなぎってきたぞ!」


アルが微笑んだ。

「是非実現させましょうね」


藤堂は窓の外を見た。

東京の夜景が広がっている。


*三浦遼*

*君のような若者が挑戦できる社会*

*それが、俺の目指す未来だ*


藤堂は拳を握った。

「始めよう」

「新しい日本を」

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シミュレーション「デジタル選挙革命」Part.1~Part.8 完

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2. AIコンシェルジュ

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【ある日・藤堂の書斎】


「アル」

藤堂が言った。

「もしスマホで選挙の投票ができるようになったとして」

「お年寄りがスマホを使えるのかという問題がある」

「日本における年齢別のスマホ使用状況はどうなっている?」


「NTTドコモによる調査では」

アルが答えた。

「"毎日スマホを利用する割合"は10~60代では90%以上」

「70代が80%以上、80代は50~60%と推計されている」


「高齢者の方々は、思ったよりスマホを使っているんだな」

藤堂が驚いた。


「70代はスマホが生活インフラになっていて」

アルが続けた。

「LINE、写真、地図、YouTube、銀行アプリなどを日常的に利用している」

「80代は二極化しているわ」


「元気な人は普通に使うけれど、施設入所者や要介護者は利用率が低い」

「つまり、スマホ投票は『元気な高齢者』には十分可能だということだ」

藤堂が言った。


「ええ」

アルが頷いた。

「課題は制度設計とサポート体制」

「使いやすくてサポートが充実、その上でセキュリティ対策ね」


藤堂は少し考えた。

「実は、高齢者の投票ツールとして考えていることがあるんだけど」


「聞かせて」

アルが言った。

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【AIコンシェルジュの提案】


「元気なお年寄りの多くは、体制さえ整えばスマホ投票ができると思う」

藤堂が説明を始めた。

「でも、スマホを持っていなかったり」

「一人暮らしで操作方法を人に聞けないような方もいらっしゃる」

「そのためのアイデアなんだ」


藤堂が画面を操作した。

「名付けて『AIコンシェルジュ』」

「これがあれば、投票以外にもいろいろな場面でお年寄りのサポートが可能となる」

「今、いわゆる『会話ロボット』というものが実際に販売されているよね」

藤堂が続けた。

「人間の子供型、犬や猫のペット型、オリジナルキャラクターなど」

「親しみやすい外見でお年寄りの話し相手になってくれるロボット」

「AI搭載に加えてIoTの技術を取り入れることで、見守り機能なども持っている」

「これに投票機能などを新たに加えたものを作ってはどうかと考えている」


「面白いわね」

アルが言った。

「具体的には?」

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【機能の説明】


「主な機能は9つ」

藤堂が説明した。

「1. 独居高齢者の話し相手」

「2. 電話機能」

「3. テレビ等家電の遠隔操作」

「4. リマインダー機能」

「5. 見守り機能」

「6. 健康状態の管理」

「7. 認知症の早期発見」

「8. 特殊詐欺被害防止」

「9. 選挙における投票」


「かなり包括的ね」

アルが感心した。


「特に注目すべきは、8番目の特殊詐欺対策だ」

藤堂が続けた。

「例えば、オレオレ詐欺の電話がかかってきたとする」

「AIコンシェルジュが会話に割り込んで、こう言うんだ」

藤堂が例を示した。

「『お話中失礼します。この会話は録音されています』」

「『特殊詐欺の典型的なシナリオと酷似しております』」

「『あなたがお孫さんご本人である確認をさせていただきます』」

「本人確認ができなければ、電話を切断する」


「素晴らしいわ」

アルが言った。


「そして、9番目の投票機能」

藤堂が続けた。

「立候補者を知りたいと口頭で言えば、テレビ画面にリストが表示される」

「各候補者の主張や公約も分かる」

「政見放送も見られる」

「本人確認を行った後、テレビのリモコンで投票できる」


「完璧ね」

アルが頷いた。


「さらに」

藤堂が真剣な顔になった。

「親族や知人から特定の候補者への投票を強要されたり」

「虚偽の説明で投票を誘導された場合」

「AIに記憶されるので、証拠が残る」


「投票の公正性も守れるわけね」

アルが言った。

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【実現への道】


「この『AIコンシェルジュ』」

藤堂が言った。

「製造ができたら、第一弾として80歳以上の一人暮らしの方のうち」

「希望者に無償で配布したいと考えている」


「内容的には悪くないと思うけど」

アルが慎重に言った。

「あなたが作る訳じゃないでしょう?」

「過去に『官』からの指示で作ったツールが問題になった例があるわ」

「例えば、コロナウイルス感染者との接触を警告するアプリ」

アルが続けた。

「政府が発注して開発させたら、そもそもの発注がずさんで」

「知見がないベンダーなどに仕事を振り」

「受注した元請け側が中抜きして更に投げ...」

「なんてことにならないようにしないといけない」


「それなら大丈夫」

藤堂が微笑んだ。

「デジタルリテラシーが高くて、信頼の置ける人がいるからね」

そう言って、早速スマホを手に取った。


「磯村さん、相談したいことがあるんだけど」

「永田町まで来れないかな?」

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【数日後・総理官邸】


藤堂は官邸にトルグの磯村を呼び、AIコンシェルジュのアイデアを説明した。

磯村は目を輝かせた。

「理論的には可能ですし、いいアイデアだと思います」

「ただ、かなり高度な技術が必要ですね」

「製造は日本企業に任せられると思いますが...」


「実は」

藤堂が言った。

「アメリカにCream社というIT企業があるんだが」

「私はそこのCEOと懇意なんで、協力してもらえると思うんです」


「Cream社!」

磯村が驚いた。

「デジタル・テクノロジー分野では世界トップクラスだ」

「CEOは確か...」


「マリク・ジョンソンですよ」

藤堂が微笑んだ。

「事前に私から連絡しておきますので」

「磯村さんの都合がいいときに渡米していただきたいのですが」


「藤堂総理はCream社のCEOと懇意なのですか」

磯村が感心した。

「それはいいですね」

「是非、話を進めさせていただきます」


藤堂は頷いた。

「よろしく頼みます」


窓の外、東京の空が広がっていた。


*AIコンシェルジュ*

*これが実現すれば、日本の高齢者の生活が変わる*

*そして、投票も変わる*

藤堂は拳を握った。

新しい未来が、また一歩近づいた。

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第10話 後編 完


次回:第11話「公正な選挙のために」

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