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後悔と涙

 森林の中を歩いているフェアズとアマリアは、お互い無言。

 二人の足音だけが響いていた。


 そんな無言に耐えられなくなったアマリアは、横目でチラッとフェアズを見て問いかける。


「………しゃべってもいい?」

「わざわざ聞かないで。というか、なんで聞くのかしら。何か良からぬことでも考えているの? 勝手な行動は許さないわよ。私から離れること、何かを企むこと、怪しい動き。これらすべてをしない約束で、今回共に行動するのを許してあげているの。私の癪に障ることなんて言わないで」

「怒涛の言葉責め。一言聞いただけなのに…………」

「わざとらしく悲しげな声を出さないで。どうせ、傷の一つも付いていないくせに」

「さすがにここまで言われたら、鋼メンタルをしている僕でも傷つくんだけど。それも、フェアズからの言葉なのならなおの事。それで、僕は聞きたいことがあるのだけれど、質問してもいいのかな?」

「全然気にしていないじゃない……。はぁ、いいわよ。何かしら」


 アマリアの淡々とした言葉に呆れつつ、ため息と共に発言を許した。


「ありがとう。今回、なんでこんなことをしているのか聞いてもいい? ここまで勝手なことをしでかしてしまったら、クロヌ様に気づかれると思うよ」

「ばれてもいいわよ。私、この世界のバランスを整えるため、平穏を守るために動いているだけだもの」


 息を吐き、フェアズは拳を握り憎しみの込められた声で続きを話す。


「百年前は何も対策が出来なかったから、カケル=ルーナに不意をつかれてしまった。管理者五人で何とか封印は出来たけれど、もし失敗していたら……。その時、私は何も出来なかったの。あとに入ってきたアクアが一番活躍して、貢献していた。私は、弱くなんてないのに。人間だった頃とは違うはずなのに…………」


 歩いていた足を止めた。

 過去の自分を思い出し、どこにもぶつけられない怒りに耐えていた。


 そんな彼女にかける言葉がなく、アマリアは目を細めローブから手を出し、フェアズの頬を手の甲でペチペチと叩く。


「…………え?」


 予想外の行動をとられ、呆気にとられたフェアズはきょとんと目を丸くし、アマリアを見た。


「フェアズ、まず。アクアと僕達とでは習得している魔法が違う。僕達は補助魔法、アクアは攻撃魔法。ここで戦闘に向いているか向いていないかが決まる。持っている魔法によって役割が異なるんだ。それがわからない程、君は馬鹿だったかな」

「なっ! 馬鹿ってっ―――」


 叫ぼうとしたフェアズの口をアマリアが人差し指で抑え、言葉を続けた。


「属性も、相性がある。君は確かに人間の頃より強くなっているよ。管理者として頑張って動いている。自分の出来ることを過大評価せず、自分のスタイルに合ったところで精いっぱいやればいいんじゃない?」


 フェアズの口から手を離し、アマリアは歩みを進めた。

 彼の後ろ姿を見つめ、フェアズは下唇を噛む。


「…………アマリアはいいよね。攻撃も、補助も。どちらも出来るんだからさ」

「っ、フェアズ? 強い殺気を感じるんだけど。あと、魔力。一度落ち着いて?」


 フェアズからは大量の魔力があふれ出ており、アマリアも焦りながら抑えるように言う。


 だが、彼の言葉など耳に入っておらず、あふれ出る魔力をそのままにアマリアの隣を通り過ぎた。


「貴方は、なんでもできるじゃない。人間の頃からそう。貴方は何かしようとすれば、簡単に出来てしまう。お掃除も、料理も。私は、出来ることが少なかった。料理もアマリアほど上手く出来なかったし、掃除は残りが多かった。魔法も、アマリアの属性は”音”。それなら補助も攻撃も出来るわよねぇ…………」

「フェアズ? お願い、一度落ち着いて」


 フェアズの異常な空気、嫌味の含まれている言葉にアマリアは汗を滲み出す。

 服が体に纏わりつく。嫌な空気に、アマリアはフェアズに手を伸ばした。


 だが――…………


 ――――――パンッ!!!!!


 森林に乾いた音が鳴り響く。

 伸ばしたアマリアの手を、フェアズが弾いた音だ。


 何が起きたのか理解できないアマリアは、じんじんと痛む手を見つめた。


「私はもう、弱くない。私はもう誰かに守られなければならない弱い女じゃないのよ! だから、もう私には関わらないで! 今回の件も、やっぱり私一人でやるわ! 貴方はもう帰ってちょうだい!!」


 それだけを叫ぶと、アマリアの返答を待たずにその場から逃げるように姿を消した。


 残されたアマリアは何が起きたのかわからず、赤くなっている手を下ろした。


「フェアズ、君はなんで、そこまで力を求めてしまったんだ……。僕は、どうすればよかったんだ」


 悲しそうに伏せられた瞳は揺れ、今にも泣き出しそうな表情を浮かべる。

 だが、今ここで泣いたところで意味はない。ここで動かなければ手遅れになる。


 そう思考を切り替え、アマリアは顔をあげた。


「…………どこで、道を間違えてしまったのだろうか」


 懺悔のように呟き、アマリアもその場から風に連れ去られたかのように姿を消した。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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