簡単にストーカーを許す姫様もおかしくないか?
数分でアビリティの説明は終わった。
ヒュース皇子とロゼ姫は何も質問しなかったが、理解したのか?
静かになると、ロゼ姫が何かを考えるように顔を俯かせる。
「話はわかりました。ありがとうございます」
『これも私のやるべきことです』
どんな話をしても、表情一つ変わらなかった。
俺が異世界から来たという話をしても。
ここまで冷静でなければ人の上に立つことなんて出来ないのだろうか。
いや、ヒュース皇子はだいぶ驚いていたな。
人の上に立つからではなく、単純にこの姫がいつでも冷静なんだろう。
『主、聞きたいことはありますか』
「あ、そこは俺にぶん投げるのね。聞きたいことは山ほどあるからいいけど」
まさかここでぶん投げられるとは思っていなかったから、質問内容をまとめてなかったな。
えっと……、まずは管理者についてでも聞くか。
カケルが知っている内容を教えてくれるだろう。
「今までの話をぶった斬るが、まず。管理者について詳しく聞きたい。フェアズがどうなったのかも、もし分かっていることがあれば教えろ」
『わかりました。まず、管理者であるフェアズの行方ですが、|Dragonflameにより深手を負い、その場から姿を晦ませました。最後、強い魔力を察知したため、魔法を発動し逃げたのだと考えられます』
魔力を察知かぁ。
どのような魔法なんだろうか、今回ではわからなかった。
フェアズの言葉に挑発され、感情を爆発させてしまったことを今さらながら後悔。
せめて相手に属性魔法だけでも出させるべきだった。
『それだけではなく、森の出入り口に人の気配を探知しました。ですが、すぐに無くなったため、追跡不可』
「すぐに逃げ出したか、察知されない魔法を付与したかだろうな」
『敵意はなかったため、今は保留にしてもよろしいかと』
敵意がないのなら別に気にしなくてもいいかぁ。
また、俺達に敵意を見せてきた時にでも、対処しよう。
「わかった。ひとまず、今回の件は解決でいいか?」
『今のところは解決でよろしいかと思います。感染症の原因であるショスも無事に討伐完了。ヒュース皇子の護衛も、表面上は完了しております』
「あ、本当だ」
ヒュース皇子をオスクリタ海底へ護衛する。
感染症の改善、モンスターの討伐。
改めて思い出すと、確かに俺達が抱えていた依頼すべて完了してる。
わぁ、マジか。こんなことある? 奇跡が起きたぞ、嬉しいなぁ。
まぁ、これでももらえる報酬は護衛任務分だけなんだけどさぁ。
割に合わない。
「チサト様、護衛依頼を受けて下さり、ありがとうございました」
「厳密に言えば護衛はしていないのだけれど」
「いえ、こちらとしては助かります。これで私は、グランド国の感染症にかかった方を治す許可を頂けます」
安心したように笑みを浮かべているロゼ姫。どういうこと?
「後はこちらでなんとかします。冒険者の方々はお休みください」
「いや、休みたいのは山々だが、この後のことを俺達は聞かされていない。何か考えているのか?」
「…………何とかして見せます」
なるほど、決まっていないわけね。
今のままだと表面上だけでなく、本当にロゼ姫の親に婚約させられちゃうんじゃないか?
「グレールとも話し合っている途中なのです。なので、ご安心ください」
「グレール?」
「私の執事ですよ。来なさい、グレール」
言うと同時に、扉が静かに開かれた。
「お呼びでしょうか、ロゼ姫」
ほぉ、あいつが執事なのか。
俺と同じくらいの身長だな。
耳が隠れるくらいの水色の髪。鉄紺色の瞳は、真っすぐロゼ姫に注がれている。
服は、一般的な燕尾服だな。
声が低く、見た目とのギャップがある。
見た目だけなら普通に爽やかイケメンだから、少し高めの声なのかなと想像していたわ。
無表情のまま部屋の中に入り、ロゼ姫の隣に立つ。
前に座っている俺を見るが、何も口にせずまたしてもロゼ姫を見た。
なんで今、俺をちらっと見たんだよ。
「ロゼ姫、もしよろしければ勝手に出歩かないでいただきたいです」
「でも、貴方は私を絶対に見失わないでしょう。いつでも後ろにいるの、気づいていますよ」
「それが私の使命です」
────ん? 普通に聞き流すところだったが、いや。え?
あいつはストーカーか? それを普通に許すなよ、姫。
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