主人公も大変なんだな、お疲れ様
魔力の調整に必死になっている俺など気にせず、アルカとリヒトが手元を見てくる。
見世物ではありません。というか、いつ炎が暴走するかわからないからあまり近づいてほしくない。
もしもの時、巻き込まれるぞ。
責任持たないからな、俺。
「すげぇ……」
「今、めっちゃ頑張ってるから、めちゃくそ頑張ってるから。魔力を注ぎ込み過ぎないように頑張ってるから、意識をそらすようなことを言うな」
「一言も駄目なのか」
マジで集中しないと爆発を起こしかねないんだよ、察してくれ。
「このまま進むぞ。いや、少し離れろ。歩きにくい」
「だって、すごい綺麗なんだもん」
「炎が? いつでも見れるだろ」
「俺は地、リヒトは援護魔法だから炎を見れないんだ」
あ、アルカは地タイプなのか。知らんかった。
「それに、カガミヤさんの炎魔法は、今まで見てきたどの炎魔法より綺麗に見えます」
「違いなんてないだろうが」
俺は他の炎魔法なんて知らんけどな。
二人には少し離れてもらって歩いていると、どんどん道が開けてきた。
もう少しで報酬をゲット出来るのか、頑張ったな俺。
「光が見えてきたな」
「財宝? 宝? 金?」
「めっちゃテンション上がってる……」
気持ちが高鳴ってきた。
それに連動してか炎も大きくなる。
やばいやばい、落ち着け、俺。
光りが漏れ出している部屋が見えてきた。
足元を照らしてくれるようになったし、もう炎はいらないか。
手を閉じると、炎がシュッと消えた。
テンションが頂点に近い、自然と足早になる。
どんどん暗い道が明るい光に照らされ、思わず目を細めてしまった。
なんだ、そんなに沢山宝があるのか?
「───っ、あ? え、光の正体って………」
開かれた道を進み奥へと行くと、そこには俺が求めていた財宝の山──ではなく、洞窟の最奥だった。
ダンジョンの壁を大きくくり抜いたような空間だ。
中心には、巨人でも中に入っているんじゃないかと思うほど大きな卵が吊るされている。
「なに、これ……」
アルカとリヒトが唖然。
俺も、唖然。
この光は、卵から発光されてんのか?
これが宝物?
卵……が、宝物??? え??
「…………アビリティ」
『はい』
「これは」
『卵です』
見ればわかるんだよ、ふざけるな。
俺が聞いている質問をしっかりと理解して返答しやがれ。
『こちらは、精霊の卵です』
「あぁ、なるほど。せいれっ──精霊って卵胎生なの?」
『いえ、主の魔力を利用しその場に留まったり、ダンジョンの力を利用し住処にしております』
ひとまず、卵で生活はしていないらしい。
なら、なぜこれが精霊の卵と言ったのか。
「アルカとリヒトは精霊の卵って知ってるか?」
「いえ、私は知らないです。そもそも、精霊持ちはごく稀。精霊自体見たことがないです」
「俺も同じく」
アルカ達も知らないのか。なら、本当にこれが精霊の卵なのかわからんな。
アビリティが間違えている可能性もあるし。
疑いの目を指輪に向けていると、アビリティが反抗もどきをしてきた。
『触れてみてください』
「え?」
『指輪が嵌められている手で、卵に触れてみてください』
機械声のはずなのに、何故か圧がかかる。
怒らせてしまった。
「え、近づいて大丈夫なのか!!?」
「アビリティが言っているから大丈夫じゃないか? 危なかったとしても、なんとかする」
卵に近づくと、ピリッと体に何かが走る。
ゾワゾワするというか、鳥肌が立つ、気持ち悪い。
…………見上げていても仕方が無いし、アビリティの言う通り触れるしかない。
手を伸ばし、目の前にある卵に右手で触れてみる。
すると、触れた箇所が急に白く光り出した。
な、なんだ?
「あ、アビリティ!! これはなんだ!!」
『精霊の孵化です』
「はい!?」
なんで今孵化するの!? 意味が分からない。
困惑している中でも、卵から発光される光はどんどん強くなる。
数秒後、耐えきれなくなったのか"ピキっ"と音をならしヒビが入り始めた。
後ろにいる二人も涙目になり、お互い寄り添って怯えている。
「え、なになになになに!!!!」」
「何が起きたんだカガミヤ!!!」
いや、俺にもわからん。
咄嗟に手を離し距離をとってみたが、一度入ってしまったヒビはどんどん広がっていく。
何が起きるんだ?
中から巨人が出てきたらどうするんだよ、食べられたくねぇよ!!
いや、待てよ。
これって大抵、大きな見た目に意味はなく、中から出てくるのは手のひらサイズの何かがお約束。
なら、今回もそんな感じだろ。
怖がる必要なんてない。ないんだ、絶対にない。
自分に言い聞かせていると、アルカが卵を指さした。
「割れる!!!」
「卵が!!」
アルカとリヒトの声と同じタイミングで、卵が大きな音を立て割れた。
「――――っ、?!」
まばゆい光が視界を覆い、思わず目を閉じる。
「…………ん、やっと落ち着いてきた」
一体、なんだったんだろうか――――なにこれ。
目の前には、小さな人。これが、妖精?
赤色の髪から覗き見えるのは尖った耳。色白の肌に、赤い瞳で俺を見上げてくる。
ノースリーブのワンピース、半透明のリボンが腰に結ばれている。
背中には、半透明の羽。
手には、体の大きさくらいはある魔法使いが持っていそうな杖が握られていた。
「…………初めまして」
『初めまして』
「貴方は?」
『私は炎の精霊、スピリト・フライム』
へ、へぇ……。こいつがこんな大きな卵の中から現れたの?
なんで俺を見上げてくるの? なんで俺の髪を掴むの?
『ご主人様』
……………………なんでこいつは、俺を見ながらご主人様と口にした?
「…………アビリティ」
『はい』
「状況説明」
『炎の精霊、スピリト・フライムが貴方を主と認めました。今後は精霊の力も使用し戦闘可能です』
……………………俺は、魔法以外にも色々優遇された存在らしい。
やったぜ、ひとまず喜んどけ。
もう、何も考えない。
これが、主人公なんだと納得させよう。
「…………もう、嫌だ」
はぁぁぁぁぁああ、嫌がっていても仕方がない。
今は、現状を改めてまとめよう。
何もせず魔法もゲットし、特別なアビリティは前主の命令で俺の元に来た。
今回のダンジョンの報酬は、なぜか精霊。
・・・・・・・・・・・。
金になるもん寄越せや、金になるもんをよ!!
泣きたい、ものすごく泣きたい。
俺は、なんのためにワイバーンを命を懸けて倒したんだぞ。
――――ん? 羽を動かし、俺の顔辺りでパタパタと飛ぶ精霊。
眉を下げ、不安そうに見てくる。
『あの、ご主人様』
「あ、はい」
『ご迷惑でしょうか』
…………おい、そんな悲し気な目を向けるな。
「あぁ、気にしなくていい。ひとまず、なんで俺がご主人様なの?」
『貴方が今いる人達の中で、一番強い魔力をお持ちなので』
「うんうん」
『美味しそうです』
「誰か俺を呪いの精霊から助けてくださいぃぃぃいいいい!!!!」
俺、食われるの?
え、精霊に食われるの? 嘘でしょ? 嫌だ、まだ死にたくない。
『あ、いえ。あの、力を使う時に魔力を頂ければ嬉しいのです』
「普段からはいらないってこと?」
『頂ければ嬉しいのですが、そこまで強欲ではありません』
なんだ、それなら良かった。
搾り取られると思ったわ。
「それなら、まぁ……あれ?」
目を離した一瞬で精霊が姿を消した。
いや、リヒト達が囲んでいて見えないだけか。
めっちゃキャッキャウフフしてるんだけど、女子会?
「かわいいです!! スピリトさん、私はリヒト=ケインといいます。これからよろしくお願いします!!」
「俺はアルカ=フェデリオ。これからよろしくな、スピリト!!!」
『よろしく、お願いします』
仲が良さそうで何よりです。
俺は複雑な気持ちだけど。
「カガミヤさん!! この子すごくかわいいですよ!!」
「体が少し光ってるんだぜカガミヤ!! すげぇよ、これが精霊なんだな!!」
「はいはい、良かったな」
あれ、そういえば…………。
「アビリティ。精霊は、契約とかそういうもんはいらないのか? 魔力とかはどのように俺と繋がるんだ?」
『主が卵に触れた際に魔力が注がれ、契約されております』
「つまり、魔力を注いでしまった事により、強制契約されてしまったと。それって、おめぇが触れと言ったからじゃねぇか?」
『…………』
黙るな、取扱説明リング。
俺が理解し、納得出来るまで教えろ。
ジィっと見てもこれ以上アビリティは何も話さない。
これは、だんまりを決め込む気だな。
「もういいわ。ここから出られるようになったんだろう?」
『はい』
「なら、出る」
まだ精霊と戯れている二人の頭を掴み、雑談を中断させる。
すると、精霊は真っ直ぐ俺の方に移動し、髪を掴んできた。
「ほれほれ、なに残念そうにしてやがる。早くここから出て、ギルドからの報酬をもらうぞ。俺はこいつだけが報酬なんて認めない」
「それもそうだな。ダンジョンから出るか」
言いながら、アルカが懐から一つの指輪を取り出した。
この世界の道具は、大体指輪の形しているのか?
アルカは取り出した指輪に魔力を注ぎ込み、唱えた。
「それじゃ、出るな。”ムーヴ”」
指輪の石部分がアルカの声と同時に光り出す。
そのまま俺達を包み込み、視界が真っ白になった。
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