↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします  作者: 文月朔夜
第二章 オスクリタ海底

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
79/590

人をここまで愛せるのは本当に珍しいよなぁ

 フェアズに向けて、スピリトに蓄えられた()()()()()()()を使い、炎の竜を放った。


「これで終わりだ!!」


 炎の竜が大きく口を開き、フェアズを喰らおうとする。


『そんなわけないじゃない!!! 馬鹿にするな!! ――――|ビーボラ・フウェ《fouet vibora》』


 ――――はぁ!?

 いや、嘘だろ!?

 さっき魔法を出せていなかっただろうが!!


 俺が放った炎の竜と同じくらいの大きさの、蔓の竜が姿を現し、俺たちを見下ろしていた。


 俺たちはフェアズの魔力を吸い取ったはずだ。

 それなのに、どこにそんな魔力が残っていたんだ!?


「ぐっ!!」


 ドカン、と二つの竜が激しくぶつかり合う。


 炎の竜が蔓の竜の胴体へ噛みついた。

 焼ける音が響き、蔓が焦げる。


 だが蔓の竜も苦しげに唸りながら、すぐさま炎の竜の首へと噛みついた。


 互いに一歩も引かない、力のぶつかり合い。

 一瞬でも魔力を緩めた方の負けだ。


『私は負けない。私は強い。もう二度と、私は負けないの!!』


 蔓の竜に、さらに魔力が込められていく。

 本当に、どこにそんな魔力を残していたんだ。


 俺たちはフェアズの魔力を吸い取ったんだぞ。

 スピリトだって、その魔力で強くなって炎の竜を操っている。


 それなのに――押されている。


「くそっ……俺たちだって、負けるわけにはいかないんだよ」


 俺も負けじと魔力を込める。

 だが、押し返せない。


『どうして、私の邪魔をするの!! どうして私は不幸にならないといけないの!? 私はただ、普通の幸せを手に入れたかっただけなのに!!!!』


 ――――まずい。


 このまま押し込まれれば、負ける。


 スピリトが涙目で俺を見る。


「負けるな、スピリト。弱気になるな」

『わ、わかりました!』


 スピリトも必死に炎の竜を操る。


 そうだ、簡単な話だ。


 今は、どう考えても俺の方が魔力は多い。

 それなら、どれだけ蔓の竜が大きくなろうと――燃やせばいい。


「幸せを手に入れたいなんてなぁ……」


 俺は歯を食いしばり、叫ぶ。


「そんなもん、誰だって思ってることなんだよ!!!」


 ありったけの魔力を炎の竜へ流し込む。


 その瞬間。

 蔓の竜に、小さな炎が灯った。


 ――――ギュアァァァァアアアアア!!!


 小さな炎は一瞬で広がり、蔓の竜を包み込んでいく。


 フェアズは最後の防壁を失い、唖然としていた。

 すぐに次の魔法を出そうとしたが――もう魔力は残っていない。


『私は――……』

「捨てちゃいけないものまで捨ててきた。お前の負けだ、フェアズ」


 ――――キャァァァァァァァァァァアアア!!!


 炎の竜が大きく口を開き、フェアズを丸ごと呑み込んだ。


「――――はぁ、はぁ」


 これで勝った……はずだ。

 もう魔力も感じない。


 さすがに疲れた。

 体は重いし、節々が痛い。


 もうこんな戦い、二度とごめんだ。


「カガミヤさん!」

「カガミヤ!!」


 アルカとリヒトがこちらへ駆け寄ってくる。


「おー、大丈夫か?」


 二人は元気よく頷いた。


 よかった。


 グレールも疲れてはいるが、無事のようだ。

 氷の剣を消し、軽く伸びをしている。


 見上げると炎の竜は薄れていき、やがて消えた。

 スピリトも戻ってきて、頬にすり寄る。


「スピリトも、お疲れさん」

『ご主人様もお疲れ様ですよぉぉぉおお!!』


 大泣きしているが、無事らしい。


 スピリトをなだめていると、リヒトが心配そうに黒煙の立ち込める空を見上げていた。


「どうした、リヒト」

「いえ……その。まさか、死んでいませんよね?」


「それはさすがに分からんな。でも、アマリアが突っ込んでいったし、大丈夫だろう」


 炎の竜にフェアズが呑み込まれた瞬間、アマリアが迷いなく飛び込んでいくのが見えた。


 何をしたかまでは分からないが、防御くらいは張っているはずだ。


 しばらくして黒煙が晴れる。

 そこにはアマリアとフェアズの姿があった。


 フェアズはもちろん、アマリアも無傷ではない。

 服も肌も、ところどころ焦げている。


 それでも、生きているようだ。


 アマリアがフェアズを横抱きにして、ゆっくりと降りてきた。

 歩くだけでも辛いが、二人の様子は確認しないといけない。


 重たい体を引きずり、アマリアへと近づく。


「大丈夫なのか?」


 聞くが、返答はない。

 アマリアはフェアズを支えながら、その場に座り込んだ。


 フェアズを覗き込んでみると、最初の姿に戻っていた。

 目は閉じている。気絶しているのかもしれない。


 これならもう、俺達に襲ってくることはないだろう。


「んっ……」

「あっ、起きるかな」


 フェアズが唸った。

 起きるか?


 邪悪な気配は消えたように感じるが、まだわからない。

 警戒を怠らずにいると、フェアズはゆっくりと目を開けた。


「…………アマリア」

「フェアズ、大丈夫?」


 今までにないほど優しい声で、フェアズに問いかけた。

 アマリアって、こんなに優しく話せるんだな。


 少し驚いていると、フェアズが小さく頷いた。


「そっか。よかった。本当に、よかった」


 肩を震わせ、安堵の息を吐いている。

 本当に心配だったんだな。


 フェアズは周りを見回し、状況を整理しているようだった。


「――――そっか。私、負けたんだ。また……」


 そう呟くと、下唇を噛み、悔しそうに顔を隠した。

 そんなフェアズに、アマリアは思い出したように口を開く。


「…………ねぇ、フェアズ。僕達が魔石を体に埋め込まれてから、最初にしたことは僕達自身の復讐だったよね」


 …………それは初めて聞くな。

 復讐、か。


「そう。私が村の人達を許せなくて。何も罪を犯していないのに殺されるなんて理解できなくて、逆に殺してやりたかった」


 おっと。

 まさか返答があるとは思わなかった。


 アマリアも同じだったのか、ちらりとフェアズを見ている。


「…………そうだね。僕のせいで君まで殺されそうになってしまった。それは本当に申し訳なかったよ」

「っ、違う。貴方のせいじゃない!!」


 フェアズが興奮したように立ち上がり、無理やりアマリアから離れた。

 おいおい、動いて大丈夫なのか?


「あれは全部、村の人達が悪い! アマリアは何もしていないじゃない!! ただ、他の人と目の色が違うだけ。それだけなのに、何も知らないくせにアマリアを悪く言って、災いを呼ぶと思い込んで殺そうとした村人のせい!! 全部、勘違いした|あいつら村人のせい!! アマリアは何も悪くない!」


 ――――そうだったのか。


 アマリアの左右非対称の目は、生まれつきか。

 他の人と違う瞳をしているアマリアを、村に災いを招く存在だと思い込んだ村人が、二人を殺そうとしたのが真実なのか。


 胸糞悪い話だな……。


「ねぇ、アマリア。貴方が村の人を焼き殺した時、何を思っていたの。なんで、私がやることなすこと邪魔してきたの。人の命が関わる時だけ、しつこく止めてきたのはなぜ。教えてよ、アマリア」


 今にも泣き出しそうな顔でアマリアを見つめるフェアズ。

 アマリアは、どう答えるんだ?


 様子を見ると、諦めたように肩を落とし、ゆっくりと口を開いた。


「君に苦しんでほしくなかったんだよ。人を殺してしまったと、後悔してほしくなかった。だから邪魔をしていたんだ。君のやることなすことを……」


 …………らしいっちゃ、らしいか。


「それって……。でも、アマリアは何人も人を処刑していたわよね? 村の人も焼き殺していた」


「まぁ、ね。だからわかるんだよ。人の命を奪う時の気持ち悪さ、奪った後の胸糞悪さ。手にも、心にも残るんだ。人を殺した時の感覚が」


 自身の手を見つめ、言葉を続ける。


「多分、君には耐えられない。だから僕が代わりにやっていたの。僕はもう、最初に村の人を殺しているから。これから何人殺そうとよかった。――君が同じ苦しみを感じなければ、それでよかったんだ」


 アマリアは、本当にフェアズが好きなんだな。

 いや、アマリアだけじゃないか。


 アマリアの言葉を聞いたフェアズは「でも、でも……」と、何か言葉を探している。


 目は泳いでいるし、声も小さくて何を言っているのかわからない。

 もう、完全に言い負けているじゃないか。


「――――フェアズ。もうそろそろ素直になれ。強がる必要は、もうないだろう」


 そう言うと、フェアズは今度こそ黙り込み、何も言わなくなった。

 そんな彼女を、アマリアは立ち上がって抱きしめた。


「フェアズ。僕は本当に君が好きなんだ。君がいなければ、僕は人間だった頃に命を絶っていた。それくらい、子供だった僕は心身ともに疲弊していた」


 鼻をすする音が聞こえる。

 フェアズは泣いているのか。


「君が笑顔を向けてくれた。君が手を差し伸べてくれた。僕の孤独を、君だけが埋めようとしてくれた。だから僕は、君がしてくれた分の恩を、何をしてでも返すと決めたんだ。君に思いを伝えた時から、ずっと」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。