取引が流れてしまった残念
「確かに、実力は本物らしい。そこは認めよう」
「そりゃどーも。ところで、なんで俺はまたしても殴られたわけ?」
「顔がきもかったからだ」
「整っているとは言われてきたが、まさか顔を貶されるなんて。初めての経験をさせてくれてありがとう、何も心に響かないな」
勝負が着いた直後、ヒュース皇子の前にしゃがみ、勝ってやったと笑いかけたら、なぜか飛んできたのは拳。
近距離だったのと、咄嗟だったため避けられず頬を直撃、ものすごく痛い。
「負けたのはお前が俺より弱かったからだろ。なんで俺が殴られんといかんのだ。それと、お前からやりたいと言ったんだろう。やりたくもないのに俺はやってやったのに、殴られるのはおかしいと思うが?」
「ぬしの実力を知らなければ、感染症の原因となっているモンスターと対峙する際困るだろう。どこまで任せて良いものなのか、どこまでならやれるのか。それを確認する意味でも、今回の戦闘は役に立った」
いやいや、待ってくれよ。
「それは、俺だけを確認しても意味はないだろう」
「何を言っている。チームのリーダーがそんなことを言うのは許さんぞ。甘えるな」
「甘えてなんかねっ──待って?」
今の押し問答、おかしな点があったぞ。
「誰がリーダーだって?」
「ぬしがだ」
「ぬしって、俺?」
「他に誰がいる」
「リーダーは俺の他にいるけどな」
「は?」
「後ろに」
指さすと、アルカが気まずそうに頬を掻いている。
ヒュース皇子は俺とアルカを何度も見た後、なぜか何も言わなくなった。
自分の勘違いが恥ずかしくなったか?
気まずそうに顔を逸らしたかと思うと、ヒュース皇子がアルカに近付く。どした?
「…………すまない」
「いえ!! 俺がリーダーぽくないのが悪いので!!」
「そんなことはない。ただ、実力のあるものがリーダーだと勝手に決めつけていただけだ。まだぬしは経験を積んでいないように見えたため、チサトが誘ったのだと思ったのだ」
あぁ、なるほどね。
確かにこの世界は実力主義みたいなところがあるからな。実力や魔力量だけだったら、俺が一番だし、勘違いするのも無理はないか。
だが、リーダーと考えるのなら話は別だ、俺はリーダー向きじゃねぇよ。
それと、一番経験を積んでいないのは俺だ。
「まぁ、アルカがリーダーとかは関係ない。今回ので俺の実力はわかっただろ? 今後どのような動きをするか考えたいんだが、解放してくれるか?」
「そうだな。今後、どのように動く予定だ」
「感染症がモンスターによってなのなら、まずギルドに行こう。モンスターの情報を貰いたい」
依頼を受けるのは断られるかもしれないが、情報を貰うくらいならごり押しで行けるだろう。
こっちは、ヒュース皇子が付いているしな。いざとなれば、名前を出す。
「わかった。ギルドの受付に聞けばすぐに分かるだろう」
「だと、いいな」
「? なにか含みがあるな。どうした?」
「受付嬢にはいろいろ押し付けられただけだ。Aランクの俺達に、SSダンジョンを攻略させたりとかな」
俺の嘆きを聞くと、唖然としてしまった。
まぁ、言葉が出ないよな、わかる。
「ち、ちなみにだが、SSランクのダンジョンはクリアしたのか?」
「したぞ。そこでよくわからんうざい精霊をゲットした」
本当にうざい精霊だったな、うるさかった。
今は静かに寝ているみっ――……
『誰がうざい精霊よ!!! 私のことはリンッ――――』
「はいはい、いい子だからここから黙っててねぇ」
『モゴゴゴゴゴゴ!!!!!』
寝ていなかったのか、リンク。
俺の顔横に突如現れ暴れだしたリンクの体を掴み口を押える。
まだ暴れているけど、小さいから簡単に抑え込めるな。
リンクを抑え込んでいると、ヒュース皇子が金色の瞳を大きく開き、一人驚いていた。
「精霊が、二体?」
「やっぱり、精霊二体は珍しいのか?」
「精霊自体珍しいぞ。仮にSSランクを何度かクリアしていたとしても、精霊に巡り合えるのは一握り。いや、この広い世界の中で、指で数えられる程度しかいないと聞いている。それなのに、二体だって?」
精霊自体珍しいのは知っているが、そこまで驚くのか。
本当にうざいだけだぞ、リンクなんか特にうぜぇしうるさい。自分をお嬢様と思い込んでいる痛い奴だ。
「…………一体だけ、私に譲ってはくれぬか?」
「お前の全財産くれるのならいいぞ」
『ちょっと!!! 私をお金を手に入れる道具として売るのはおやめなさい!!』
リンクが激怒したから、この取引は流れてしまった。
都合よく金が手に入り、うるさい奴とおさらばできると思ったのになぁ。仕方がない。
リンクが嫌がっているし、今回は諦めよう。なんで嫌がるのかは知らんけどな。
俺より大事にしてくれそうじゃね? ヒュース皇子だったら。
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