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本心は、直接聞くより見た方が早い

 中に入ると、そこにはただっぴろい空間が広がっていた。


 舞踏会でも開けるんじゃないかと思うほど、広い部屋。

 周りを見ても何もなく、大きな窓から差し込む陽光が床を照らしている。


 そんな空間に二つの椅子と、一人の男性。


 もう、イメージ通りの王がそこにいる。

 赤いマント? ローブ? を身にまとい、白いひげを生やした男性。

 あれがヒュース皇子の父親、俺達の依頼人か。


「お主がわしの依頼を受けた冒険者か」


 さっきまで戸惑っていたのに、すぐ平静を取り戻した。

 凄いなぁ、王だからかなぁ。


「…………はい。我々が今回の護衛任務を受けさせていただきました、黎明の探検者です。私の名前は鏡谷知里。この世界では珍しい名前ですが、お気になさらぬようお願いいたします」


 王の前に移動し、片膝を立て頭を下げ、挨拶。すると、感心したような声が上から聞こえてきた。


 それと同時に、色んな感情が込められた視線が背中に刺さる。


 アルカとリヒトだな。俺の態度に驚くのは無理ないが、少しは俺の行動を真似するとかはないのか。今回は俺、結構いい動きを見せたと思うのだが……。


「頭を上げろ、冒険者よ」

「はい」

「今回の依頼、詳細は家臣から聞いてくれ。わしの息子であるヒュースを任せたぞ」


 俺を見下ろしてくる王。

 さすが一つの国を統べるものだ、今まで出会った奴らとは格が違う。


 …………管理者は除いて。


 王の、金色に輝く眼光は、人を射抜く程鋭く、目を逸らせない。


 今、この状態で間違えたことを言えばどうなるか。だが、聞いてみたい、ヒュース皇子をどう思っているのか。


 大事に思っているのか、それとも道具として見ているのか。


 もし、道具として見ているのなら、俺はこいつを殺せる。

 俺には精霊が二人もいるし、チート能力をゲットしている。問題はない。

 後始末の方は、追々考える。


 子を大事に出来ない親など、この世に存在していいはずがないからな。罪を償え。


「…………今回の依頼は、ヒュース皇子の意向により、形を変えて遂行したいと思います」

「っ、なんだと?」


 形を変えて遂行と口では言っているが、何も考えていない出まかせ。だが、ただ中止にするのも相手は反発してくるに違いない。


 何かいい方法がないか考えながら会話を続ける、絶対に間違えるなよ、俺。

 現実社会での仕事を思い出せ――――思った事そのまま口にしてたから思い出しても意味は無かったわ。まったく現状と違う。


「何を言っている。今回の依頼は、わしの()()であるヒュースを、オスクリタ海底へと送り届ける事。他の形も何もない」

「先ほど、ヒュース皇子とお話させていただきました。ご本人は婚約したくないようですが、それは耳にしているおりますか?」

「している。だが、今後の国の為、今後の息子の為、()()()()()()()()()()。お主は黙って、依頼主であるわしのいう事を聞くがいい」


 ん? こうしなければならん? 

 そのような言葉は、何か強制されなければ言わない言葉では?


 …………こいつ、目が微かに揺れている。迷っている、のか? 

 んー、駄目だ。俺には他人の感情を察する能力はない。


(…………アビリティ、透視で人の心を読むことって出来るか?)

(『出来ます。しかし、魔力より、精神力が削られるらしく、カケル様もお持ちでしたが好んでは使っておりませんでした。使用しますか?』)

(使う)

(『了解しました。スキル、透視を発動。グランド国の王、アステール・アグリオスの真意を読みます』)


 おっ、王の周りに白い文字が浮かぶように現れた。どれどれ。


『こうしなければならない』『婚約しなければ国も()も危ない』『王である自分がどうにかしなければ』『娘に嫌われようとも、安全な所へ連れて行かんとならん』


 っ、なるほど。こんな親もいるのか。

 嫌われてでも、娘を守りたい。そう考える親が、本当に存在するんだな。


 目を閉じると、自然と透視が消えた。


 ――――うっ、体がだるい、重たい。

 確かにこれは色々持っていかれるな、簡単に使えない。


 色んな意味でこれは、見なければ良かったな。

 くそ、放置が出来なくなった!! もう!!! 報酬はきっちり貰うからなこんちくしょう!!


「…………お言葉ですが、私達冒険者にもプライドはあります。今回関わる人達全てが納得いくような形でなければ動くことが出来ません」

「何を言っている? 今回の依頼、受ける前に詳細は聞いているだろう。それでも受けたのはお主らだ。プライドなど知らん」


 …………だめだな、これではこいつの本心を吐き出させることが出来ない。

 やっぱり、通常運転で行くか。


「知らないのなら、今、ここで。教えてやるよ、お父さん?」

「っ、貴様、なにをっ……」


 その場で立ち上がり、宣言。家臣達が動き出し、武器である長槍を向けてきた。

 後ろからは驚きの声が聞こえるが、それは無視。


「今のおめぇは、実の娘であるヒュース皇子を、何かから守るため安全な場所へ避難させたい。だが、国も守らなければならない。そんな、雁字搦めな狭間にいる。そんな中、唯一取れそうな行動。それは彼女を安全な所に避難させるため、縁談を持ちかける事。そうすれば、彼女は嫁ぐ形となり、グランド国から避難させられる。事情はオスクリタ海底の奴に話して保護という形をとっているはずだ。この国を狙う何かに気づかれぬよう、皇子として育てた事を逆手にとって、な」

「なっ、なぜ、息子が女だと……。まさか、ヒュース!!」


 驚きで目を開き、怒りでヒュース皇子に怒鳴り始めた。

 おっと、そんなことはさせないぞ。


「今は、娘さんの性別はどうでもいい。今話し合うべきは、どのように納得のいく形にこの依頼を遂行できるか」

「むむっ。………待てよ、お主。先程の情報、どこで手に入れた」


 先程の情報? 

 あぁ、透視で見た情報を包み隠さず言ったからな。

 ギルドにも報告していない情報だったんだろう。そりゃあ、驚くわ。


「正直に言う。お前の真意を読んだからだ。俺のスキル、透視でな」


 言うと、王は目を開き俺を見てきた。


「透視は、確か物の奥を見たりするだけのはず。人の心中を読むなど出来ぬ」

「何故かできた、理由は不明」


 簡単に返すと、さらに驚く。


 いや、今は俺の透視はどうでもいいんだよ。

 それより、今お前を縛っている何かを聞きたい。


「なぁ、俺達はただの冒険者だが、少しは力になるぞ。報酬をがっぽりもらえたらな。王と娘、どっちも納得がいくように動いてやる」

「そ、そんな事出来る訳がない! なぜなら、今回の件は―――っ。な、何でもない」


 今回の件は? 何故そこで言葉を切った。

 あー、何やら嫌な奴が絡んでいるみたいだな。


 …………もう、一つの組織しか思いつかんぞ俺。

 王をここまでビビらせることが出来る権力者、もうあいつらしかいないじゃん。


「一つ言う、俺は管理者の処刑担当であるアクアと対峙したことがある。それだけでなく、アマリアとも仲良く話しているぞ」


 今度はヒュース皇子も驚き俺を見て来る。


「なぁ、少しばかり、俺に託してみないか? 報酬次第では全力を尽くす」


 誘うように手を伸ばし、笑って見せる。すると、王は始終驚いていたが、すぐに落ち着きを取り戻し俺を見定めるように、最初のような鋭い眼光を見せてきた。


「お主は、何者だ」

「そうだなぁ……。うん。俺は、別の世界からある理由で転移して来た一般人、鏡谷知里。人と少し違う所を上げるとしたら魔力量と、子を大事にしている人へのつよーい味方ってところ、かな」


 笑顔で言い切ると、王はやっと頭で整理できたのか、深い息を吐いた。

 悩んでいる様子だが、もう手はないと判断してくれたのか、俺達を見て小さく頷いた。


「もう少しだけ、今回の依頼について話そう」


 よし、今回の護衛任務、一歩前に進んだぞ。

 大金を手に入れられるような予感!! 頑張るぞ、金の為に!!

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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