表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/648

準備なんて出来る訳ないから全てを行き当たりばったりでやることに決めた

 理不尽にもほどがある。

 頬がじんじんする。まさか、ビンタを食らうとは思わなかった。


 ヒュースは胸を押さえ、壁側を向いてしまっているし……。

 えぇ、俺が悪いの?


「あの、大丈夫ですか? カガミヤさん」

「リヒト、この頬に出来たモミジは消せないのか?」

「…………消してはダメな気がするから、ごめんなさい」


 なんでだよ。

 俺がお願いしているというのに、なぜ消してくれないんだ。まだじんわり痛いんだぞ。


 最悪、跡は消さなくていいから痛みだけは消してくれよ。


「今のは、なんとなくカガミヤも悪い気がするんだが」

「う、うん。私も、思う」

「なんでだよ。俺は倒れ込んできた皇子を支えてやったんだぞ。その時にたまたま当たっただけじゃねぇか。しかも、こいつに膨らみがあるなんて、誰が想像出来る」


 たく…………、まぁいいや。痛みも引いてきたし、本題に戻ろう。

 しゃがんでいる皇子を呼ぶと、ゆっくりと涙目を浮かべ振り向いた。


「お前、何か色々あるみたいだが、詳しく教えてもらえるか?」

「…………なにが聞きたい」


 答えてくれる意思はあるらしい。


「まず、お前のその恰好は趣味なのか?」

「そんなわけないだろう」


 ほぉ。無理やり男装させられているんだな。

 それなら、話は別だ。


「把握した。なら、俺はお前に協力してやるよ」

「え?」


 王族のルールや規則などはよく知らんが、今の会話だけでなんとなくわかったことはある。


 こいつをアグリオス家の跡取りにするため、男として育てたんだろう。

 婚約はおそらく、お互いの利害が一致しているから親の権限を使い、同性だろうと結婚させたがっている、みたいな感じだな。


「なぁ、アルカ。この世界では、同性でも簡単に婚約出来るのか?」

「認められてはいる。だが、周りからの目や印象は賛否両論。だから、国で認められていたとしても、公表しない人が多いはずだ」

「それは、どこ情報なんだ?」

「いろんな奴と話している時に小耳にはさんだ情報だから、どこからとかはないな」

「なるほどな」


 んー…………。だが、困ったな。

 さすがに俺達の立場で王に何か言えば、すぐに消されるだろう。慎重に動かねぇと。


「…………ぬしは今、なんのためになにを考えている」

「報酬を手に入れるため、最短の解決方法を考えている」

「金が欲しいのなら、今回はこちらまで足を運ばせてしまった迷惑料として私から払おう」

「それはありがたく頂戴しよう。迷惑はかけられたわけだしな」

「「おい!!」」


 アルカとリヒトからの鋭い突っ込みを食らったとしても、俺の考えは変わらんぞ。

 金はもらう、当たり前だ。


「なら、あとでギルドを通して支払う。今日はもう帰ってもらって構わない」

「は? なに言ってんだてめぇ」

「? ぬしが欲しいと言っていた金は私から支払うと言っているんだ。なら、ぬしがここに居る必要はもうないぞ」


 皇子と共に他の二人も俺を見てくる。


 いや、お前らなぁ。俺がこいつからの報酬で納得いくと思うか? 

 馬鹿野郎、俺はもらえる金は全てもらうんだよ。


 絶対に、どんな状況だろうと。


「今回の依頼を両者納得いくような形で達成し、報酬を貰ってから帰る。これは何を言われたところで揺るがないぞ」


 俺の言葉に皇子は目を見開き、リヒトとアルカはお互いの顔を見て笑い合う。

 なに笑っとるんじゃ。


「んじゃ、案内を頼んだぞ、ヒュース皇子」


 今だ驚いているヒュース皇子の背中を押し、俺達の依頼主がいるであろう城に向かった。


 ※


 ヒュース皇子の後ろを付いて行くと、どんどん街の中央に建っている城に近付いて行く。

 近くに行けば行くほど華やかさが増すなぁ。


 白い壁画には傷や汚れはなく、装飾にこだわりがあるのが見て取れるほど細部まで作り込まれている。


 正門の前には門番が二人、木製の大きな扉が閉ざされた状態で俺達の前に立ちはだかった。


「これが王族か。勝てる気がしないな、諦めた方がいいか?」

「早速揺るんでいるじゃねぇか。報酬はどうするんだ?」

「アルカは俺の扱いがわかってきたみたいだな。早く行くぞ、俺の報酬のために」


 まぁ、報酬は他の方法でも手に入れられるから、正直今回の依頼は最悪断ってもいいけど……。


 チラッと後ろを向くと、ヒュース皇子が顔を俯かせている。

 怖がっているのか、なんなのか。わからんが、あれをほっておくのは後味が悪い。


「早く行くぞ、ヒュース皇子。お前がいないと俺達はどこに行けばいいのかわからん」

「…………わかっている」


 重い足を何とか前に出し、ヒュース皇子は俺達の前に立つ。

 門番はヒュース皇子の姿を確認すると、何故か驚いた顔を浮かべ敬礼をした。


「ヒュ、ヒュース皇子、なぜ外に……。部屋で勉学に励んでいる時間では?」

「ぬしらには関係のない事だと思うが? なぜそれを質問してくる。なにか、私がここに居るのに分が悪いものがあるのか?」

「め、滅相もございません。ただ、少し疑問が口から出てしまいまして」

「そうか。その緩い口で余計なこと話す前にどうにかして固くしろ、機密情報などを外に零した時には、この場に立てないと思え」

「りょ、了解しました…………」

「もういい。早く門を開けろ」

「はい…………」


 ヒュース皇子の言葉一つで開いた門の扉。上に上がる形式なのか。


 ヒュース皇子が何事もなかったかのように中に入り、俺達もその後ろを付いて行く。

 その時、門番がヒュース皇子に聞こえないよう小さな声で何かを話し始めた。


「なぁ、おかしいよな。なんでヒュース皇子が外に出ている。アステール王には外に出させるなと言いつけられていたではないか」

「そんな事、俺に言われてもわからん。部屋の鍵は外からでしか開かない仕組みになっているはずなのに……。もしかして、窓から?」

「まさか。…………まぁ、それは今は考えなくてもいい。今は、王にどのように報告するかだ。あぁ、困ったぞ」

「困った…………」


 今の会話、なるほど。だからヒュース皇子を見た時あんなに驚いていたのか、納得だわ。


 外に出させるな、か。逃げ出さないように言ったんだろうな。

 こいつは今回の婚約を本気で嫌がっている。逃げ出しても不思議では無い。


「お前、もし俺達が来なかった場合、どうしていたわけ? 逃げ出していたのか?」

「まさか。そんなの私が負けを認めたようなもんではないか。もし、ぬしが来なかった場合、途中まではしっかりと従い、婚約途中であることないことを風潮して、相手側から断りの言葉を入れさせる予定だった」

「過激だなぁ」


 門をくぐった先には大きな庭園。中央に噴水、周りには休めるようにベンチが置かれている。

 花壇が等間隔で置かれており、咲いている様々な花が風と共に揺れる。


 綺麗な庭園だしな、アルカとリヒトが走り出してしまいそうになっているのも無理はない。


 二人が離れないように注意しながら歩いていると、ヒュース皇子が建物に入るための両開きの扉の前で立ち止まった。


 右側には四角い機械が取り付けられ、彼が手をかざすと音を鳴らし扉が開く。

 中に入ると、またしても豪華な内装。

 赤いカーペットに、周りには高そうな花瓶や壺、壁にはよくわからない絵。


 いくつもの扉を通り抜けると、突き当りまでたどり着いた。

 そこは今まで見たどんな扉より大きく、ゴージャスだった。


 うわぁ、嫌だ、入りたくない。

 だって、オーラが違うもん、この先にいるのは必ず王だってわかるもん。


 ここで中を開けるとびっくり、ただの家臣の部屋だったはありえない。


「中に入ってもいいか?」

「やっぱり、中には王がいる感じ?」

「そうだ。人の話を聞かない頑固な王がいるから、話す時は気を付けるんだぞ」

「了解」


 人の話を聞かない上司と話す感覚で話せば問題ないかな。


 いや、同じ感覚で話していたら、今の俺では拳が出てしまう。

 しかも、ただの拳ではなく、炎の拳。気を付けよう。


「それじゃ……。父上、冒険者の方々がおいでです」


 ヒュース皇子が声をかけると、数秒後にしわがれた声が聞こえてきた。


『なに? いや、詳しい話は後だ。通せ』

「はい」


 なんか、戸惑っていなかったか?

 あっ、ヒュース皇子が俺の方を見て準備はいいかと、無言で訴えてくる。


 準備は出来ていないが、まぁいいぞ。


 そんな思いを乗せて、俺も小さく頷いた。

 すると、ヒュース皇子が前を向きなおし、大きな扉を開いた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ