マジで勘弁してくれよぉぉぉおお!
なんか危ない匂いのする執事だが、王と話したのはこいつで間違いないはずだ。
なら、直接聞くか。
「執事のグレール。いくつか質問したい。答えてくれるか?」
「ロゼ姫の許可があれば」
忠誠心の塊か。
めんどくさいが、信用はできる。
ロゼ姫を見ると、すぐに頷いた。
「すべての質問に答えなさい、グレール」
「承知しました」
……よし。
話せるな。
「まず確認。グランド国王と話したのはお前で間違いないか?」
「はい」
「今後の動きは?」
「婚約破棄について、まず王妃にお話を」
「話、通じるのか?」
「……工夫をすれば」
目を逸らしたな?
その“工夫”が怖いんだが?
「あ、あの」
アルカが遠慮がちに手を挙げる。
やめろ。
嫌な予感しかしない。
頼む、余計なこと言うな。
「もし困っているなら、俺達も手を貸せたらと……です」
ほら来た。
自ら地雷原に突撃するタイプ。
「それは助かりますが、よろしいのですか?」
「だ、大丈夫だ! です! ただ……その……報酬を……です」
何でこっち見る。
だが――
「報酬はご用意します」
「いくらだ?」
「それは王と要相談です」
「いくらは堅い?」
「…………話し合いだけなので、五十万くらいが限度かと」
話し合いだけで五十万、か。
ん、ま、まぁ。Bランクダンジョンで百万だもんな。
命を懸けた依頼で百万。
話し合いで、その半額の五十万。ま、まぁ。うん、妥当か……。
「で、さっきの“工夫”って?」
「チサト様が王妃に直接お話されれば問題ありません」
「普通に?」
「はい。気力と、襲われる覚悟があれば」
「は?」
空気が一瞬止まる。
「何に襲われるの?」
「……色々なものに」
怖い怖い怖い怖い。
「やることは話し合いのみです。それ以外は……逃走準備を」
「だから、何から逃げるんだよ!?」
「詳細は後ほど。ですが、最短です」
嫌な予感しかしない。
説明を聞く
――うん。
無理。
絶対に嫌。
「ものすごく嫌そうな顔をされていますね」
「嫌だもん」
「一時の恥です」
「俺の尊厳は!?」
「保証しかねます」
その内容の五十万なんて認めねぇよぉぉお!
Sランクダンジョンを攻略した時のような二百万よこせよぉぉお!!
勘弁してくれぇぇぇぇぇぇ!!
※
俺達は、始まりの村――セーラ村へ戻ってきた。
「婚約は大丈夫なのか? こんな所に来て」
「問題ない。それより今回の件、絶対終わってない。もやもやのままは嫌だ」
別に逃げているわけじゃない。
グレールの作戦から逃げたわけじゃない。
断じてない。
ただ、フェアズの動向が気になるだけだ。
警戒したいだけだ。
逃げてない!!
後ろでアルカとリヒトが顔を見合わせるな。
ギルドに入った瞬間――
「貴方は!! あの!! イケメン冒険者カガミヤチサトさん!!」
思い出した。
最悪。
受付嬢が身を乗り出し、目を輝かせている。
「もう会えないと思っていました!! ありがとうございます!!」
「アルカ、帰ろう。今すぐ」
「思い出したな。ここはカガミヤ最大の天敵がいる場所だったな」
「撤退だ」
逃げようとしたら、ローブを掴まれる。
「待て! 聞くことがあるだろう!」
くそ。
リヒトは静観。
賢い。
俺はアルカの後ろに隠れながら前進。
近づくほどに、受付嬢の目がキラキラする。
無理だ。
「さぁ! お話しましょう! カフェでも!!」
「アルカ、後は任せた」
「死にそうな顔をするな! しっかりしろカガミヤ!!」
その瞬間、奥の扉が開く。
「来ると思っていたよ、知里」
「あ、アマ――」
「アマリア様ぁぁぁぁぁ!!」
受付嬢がミサイルのように飛ぶ。
アマリアはひらりと回避。
何事もなかった顔でこちらへ。
適応力が化け物。
「お前も大変だな」
「君ほどじゃないよ」
※
アマリアのおかげで、無事に奥の部屋へ。
懐かしい簡素な部屋。
落ち着く。
椅子に座ると、アマリアが先に口を開いた。
「ここに来た理由は、僕でしょ?」
「もしかして、待ってた?」
「そうだよ」
即答。
監視されてる、確定。
ローブをまさぐるけど、なにもない、よな?
「監視はしてるけど細工はしてないよ。遠くから見てるだけ」
「それも嫌なんだが?」
「プライベートは見てない」
「絶対だな?」
「君が冒険してる時だけだよ」
……微妙。
「時間がない、本題に入らせてもらうよ。君が気にしているのは、フェアズの件でしょ?」
「ああ。死んでないよな?」
「死んでない。危険だったけど」
よし。
危険だろうと何だろうと、生きているのならいい。
「居場所は?」
「分からない。勘でしか言えない」
本当に勘か?
「透視しようとしても無駄だよ。僕には効かない」
ちっ。
「弱点は?」
「答えると思う?」
ぐっ、正論。
「じゃあ何かくれ。なんでもいい、いい情報、面白い情報、ためになる情報、なんでも」
とりあえず、小さな情報が大きな結果を生むかもしれないし、そこを聞けたらいいわ。
「面白い情報、か。……フェアズと僕が元恋人同士、とか?」
…………。
理解に時間がかかる。
アルカを見る。
リヒトを見る。
再起動。
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!?」」」
元恋人!?
神に恋人概念あるの!?
いや、でも、気になるけどそれ、今関係ない。
「他に――」
「もっとそこ詳しく!!」
リヒト食いついた。
顔が赤い。
アマリア、楽しそうだな。
絶対わざとだろ。
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