説明役がいると俺は話さなくてもいいから楽だな
俺がベッドに座り直すと、ロゼ姫も近くの貝殻を模した椅子に腰かけた。
「お話は聞いております。ご無事で何よりです」
「あー……おー、はい」
どう話せばいいんだこれ。
頭がまだ回っていない。
「体調はいかがですか? 痛むところがあれば遠慮なく。治せるものなら治します」
「いや、怪我は特にない。たぶん大丈夫」
「それは安心しました」
「…………」
「…………」
終わった? 話、終わった?
俺から何か言わないと続かないやつ?
「えっと……あ。なぁ、アルカ」
「ん?」
「フェアズはどうなった?」
俺が怒り任せに|Dragonflameを放ったのは覚えている。
辺り一面が赤く染まったのも。
でも、その後の記憶がない。
そこで魔力が切れて倒れたんだ。
聞くと、アルカは目を伏せた。
嫌な予感。
まさか俺――
「わからないんだ」
「……は?」
「お前が倒れた後、炎は自然に消えた。地面にフェアズがいると思った。でも、何もなかった」
何も?
「灰すらなかった。忽然と消えたみたいだった」
リヒトもヒュース皇子も無言で頷く。
……管理者なら、あり得るか。
何も残っていないということは、言葉の通り、その場から忽然と消えたんだろう。
つまり、死んでいない。
たぶん。
――安心している自分がいる。
殺すつもりではいた。
でも、本当に殺したかもしれないと思った瞬間、焦った。
当然だ。
俺はただの会社員だ。
貯金通帳を眺めてニヤニヤするのが趣味の、平凡な男だ。
人を殺したことなんてあるわけない。
「……次なる英雄、ね」
夢の最後の言葉が蘇る。
ため息が漏れた。
三人が首を傾げる。
説明?
いや、めんどい。
俺もよく分かってないし。
黙っていよう。
その瞬間――指輪が光った。
『私がご説明いたします』
「お、アビリティか。助かる」
突然の声に、アルカとリヒトが肩を跳ねさせる。
ヒュース皇子とロゼ姫は目を見開いた。
「アビリティが……話した?」
「その指輪は……百年以上前の英雄、カケル=ルーナの……なぜ貴方が?」
え、カケルが持っていた?
というか、なぜそれを姫様が知っている?
ま、まぁ、いいや。
とりあえず、来たな、説明タイム。
俺よりアビリティの方が適任だ。
『最初から説明いたします。一部省略はありますが、ご了承ください』
丁寧に一礼するような声音。
そして――
俺のこと。
カケルのこと。
封印のこと。
語り始めた。
※
数分で、アビリティの説明は終わった。
ヒュース皇子もロゼ姫も質問はしない。
……理解、してるのか?
静まり返った部屋で、ロゼ姫が静かに俯く。
「話は理解いたしました。ありがとうございます」
『これも、私の役目です』
どんな話にも表情を変えない。
俺が異世界人だという事実にすら。
……この冷静さが、人の上に立つ資質なのか。
いや、ヒュース皇子は普通に驚いていたな。
単純に、この姫が特別冷静なんだろう。
『主、聞きたいことはございますか』
「あ、そこ俺に投げるのか。まぁ山ほどあるけど」
整理してなかったな。
まずは――管理者。
「今までの流れぶった斬るけど。管理者について詳しく聞きたい。フェアズはどうなった?」
『フェアズは|Dragonflameにより深手を負いました。最後に強い魔力を感知。即座に転移系魔法を発動し離脱したと推測されます』
転移か。
やっぱりな。
感情任せで撃ったことを少し後悔する。
手の内をもう少し引き出せたかもしれない。
『加えて、森の出入口付近に一名の気配を感知しました。しかし即座に消失。追跡不可』
「逃走か、遮断魔法かだな」
『敵意は確認できませんでした。現時点では保留で問題ないかと』
「了解。じゃあ今回の件は一旦解決でいいか?」
『はい。感染症の原因であるショスは討伐完了。ヒュース皇子の護衛任務も表面上は達成です』
「あ、本当だ」
改めて整理すると、
・護衛完了
・感染症の原因排除
・モンスター討伐成功
全部終わってる。
……奇跡か?
まぁ報酬は護衛分だけだが。
くそ、割に合わねぇ。
「チサト様、護衛を引き受けてくださり感謝いたします」
「厳密には護衛してないけどな」
「それでも助かりました。これで私はグランド国の感染症患者を治療する許可を正式に得られます」
安心したように微笑む姫様。
なるほど、そこが本命か。
他国が勝手に国に干渉すれば、戦争を疑われる可能性がある。
他にも、いろいろとめんどくさいのだろう。
「後はこちらで対処します。皆様はお休みください」
「休みたいのは山々だけど、その“後”が見えてない。何か策があるのか?」
「…………必ず何とかします」
決まってないな、これ。
下手すると本当に婚約話が進むんじゃないか?
「グレールと協議中です。ご安心を」
「グレール?」
「私の執事です。来なさい、グレール」
静かに扉が開く。
「お呼びでしょうか、ロゼ姫」
ほう。
水色の髪。
鉄紺色の瞳。
燕尾服。
無表情のままロゼ姫の隣へ。
俺を一瞬だけ見て、すぐ視線を戻す。
……なんだ今の。
「ロゼ姫、無断外出は控えていただきたい」
「でも貴方は必ず見失わないでしょう? いつも後ろにいるの、気づいていますよ」
「それが私の使命です」
……ん?
ちょっと待て。
今さらっと流しかけたけど。
え?
常に後ろ?
それストーカーじゃないのか?
姫、普通に受け入れるな。
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