予想外というか、これ完璧ハズレじゃねぇかよ
ダンジョンを進み、財宝――をゲットしたかったのに。
最奥まで行くと、そこには見覚えのある卵がぶら下がっていた。
「もしかして、今回の報酬って」
「間違いなく、精霊だろうな」
「なんでそんなにがっかりしているんだよ」
「がっかりに決まっているだろ。俺は金が欲しいんだ、金色に輝く物が欲しいの。精霊なんて金にならんだろうが」
「隣で飛んでいる精霊が泣いているぞ」
うわ、冗談じゃなく、本当にスピリトが泣いているんだけど。
体を震わせないでよ、なんとなくガチっぽいじゃん。
ごめんごめん、今回スピリトも頑張ってくれたもんな。助かったぞ。
スピリトを慰めながら、再度卵を見上げてみる。
確か、この卵を孵化させるには、魔力を注ぎ込めばいいんだよな?
アルカは魔力、残っているのだろうか。
「アルカ――……」
「俺は魔力残ってないぞ。カガミヤの方が確実だ」
先読みしてきやがった、くそっ。
『多分、御主人様が魔力を注いだ方が早く出て来ると思います』
「なんで?」
『美味しそうだから』
「やめろ」
物欲しそうな目で俺を見るなスピリトよ、食い物として見るな。
「わかったよ……」
俺も疲れたし、早く帰りたい。
だから、さっさと済ませる。
リヒトをアルカに預け卵の前に移動し、指輪がはめられている右手で触れてみた。
「――――っ!!」
魔力がすごい勢いで吸われる!?
俺だって、魔力は無限じゃないんだぞ!!
「くそ……」
俺の魔力を使って卵が発光、ひび割れてきた。
早く、割れてくれよ。
一度現れたヒビは、蜘蛛の巣のように広がって行く。
そこから光が洩れ、辺りが明るく照らされ始めた。
「~~~~~~~もう無理!!!!!」
触れている右手から吸われ続ける魔力。さすがにこれ以上は倒れる。
手を離したが卵は割れ続け、とうとう弾けた。
「……今回はどんな精霊だ」
アルカも俺の隣まで来て見上げている。
光が眩しくて、目を細めても姿を確認できない。
多分スピリトくらい小さいだろうが、問題は属性と性格。
面倒臭いタイプならすぐにアマリアに売ってやる。
「あれか?」
アルカが指さす先を見ると、人影が見え始めてた。
小さな人影、背中には羽があるみたいで動いている。
ずっと見続けていると光が落ち着き、シルエットがどんどんはっきりしてきた。
向こうも俺達に気づいたらしく近付いて来る。
短い髪に黄色の花の髪飾り、黄緑色のスカートにローブ。
白い両腕を組み、俺を藍色の瞳で見下ろしてくる。
え、何。なんか、釣り目なのもあって威圧的なんだけど……。
『私は、リンク。貴方達が私を目覚めさせた主ね。私が貴方の精霊となってあげるの、感謝するのよ? 人間』
……………………売ろう。
※
指輪で無事帰還。リヒトのおかげで回復した男とも無事に合流し、ギルドに戻った。
今回は俺達がラスボスを倒した為、ギルドからの報酬は俺達に入ってくるらしい。
男がそのように受付嬢へ説明をしてくれるみたい。
だから、リヒトを一度ギルドの部屋に寝かせ、俺達はその話が終わるまで待機することとなった。
椅子に座って待っているんだが……いるん……だが………。
「はぁぁぁああああああああああ」
周りからの視線と甲高い声により、俺の怒りメーターがふつふつと上がる。
『ちょっと!!! なんで私を無視するのよ!! 私は、貴方を主にしてあげるって言っている心の広い精霊なのよ!? いい加減私に”お願いします”と言いなさいよ!! ちょっと!! 聞いているの!?』
うるさい。本当に、うるさい。
スピリトが何とか宥めようとしているけど、そんな声なんて届いていないのかと思うくらい俺に向かって叫んでくる。
おかげで周りの人の視線が俺に集中している、やめてくれ。
「なぁ、カガミヤ。その精霊、無視していていいのか?」
「無視も何も、俺は何も聞こえていない」
『噓つくなぁぁぁぁああ!!!』
あぁ、本当にうるさい。
アマリアは、こんなにうるさい精霊でも買い取ってくれるのか。
見かけたら声をかけてみよう。
「なぁ、確か名前はリンクとか言っていたよな? 何が出来るんだ?」
おい、なに勝手に話しかけてやがる、もっとうるさくなるだろうが、やめろよ。
『ふん!! 貴方みたいな下等人間が気安くこの私に話しかけないでくれるかしら。自分の立場が分かっていないみたいね』
「立場?」
『そうよ。貴方は私達精霊がどれだけ珍しいかわかっていないわ。それに、この私。一般的な精霊とは一味違うの。希少の中の希少、そんな私に軽々しく話しかけないでくれるかしら』
「わ、悪かったって……」
お前はそれでいいのかアルカよ、甘すぎる。
つーか、今のこいつの言葉に気になる点があったな。
精霊が希少なのは聞いていたが、こいつはそんな精霊の中でもさらに希少な存在なのか。
「なぁ、希少の中の希少とはなんだ」
『あら。今まで無視をしていたのにいきなり話しかけるなんてね。やっぱり主も気になるのね。でも、今まで無視をしていた主に罰を与えなければ私の気が収まらないわ。だから、私を知りたかったら今までの私への無礼を謝罪し、今後は私の言う事には絶対と契約をむすっ――……」
「もういいわ。お前を売ると今決めたからな、聞いたところで意味ねぇ」
『なんですって…………て、え、売る?』
「売る」
『売るって、もしかしてこの私を!?』
お前以外に誰がいるんだよという意味も込めて、俺は小さく頷いた。
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