こんな形で本当に終わるなんて思わないじゃん
「大丈夫ですか!?」
「怪我はないかカガミヤ!!」
「問題ない。そんなことより、あれをどうにかする方法を考えるぞ」
二人も怪我はなさそうだ、そこは安心だ。
――――グァァァアアアアアアアア!!!
「っ!! くっそ、うるせぇな」
俺の心配をしてくれる二人が駆け寄ってくると、ワイバーンが上から咆哮し、地面が揺れる。
っ!! ワイバーンがまた突っ込んできた!
だが、さっきと同じ攻撃だ。簡単に避けられる!!
「heat haze」
今度は頭の中でしっかりとイメージ、俺の姿を作り出す。
真っすぐ俺達の方に向かっていたワイバーンが、陽炎の方へ軌道を変えた。
よしっ、時間は作れた。
ワイバーンに狙いを定め、さっきまで放っていた魔法を放つ!
「flame!!」
陽炎を通過したワイバーンに、俺の放ったflameが向かう。
――――――ドンッ
「シャッ!!」
よしっ!! ワイバーンの翼に直撃した。
爆風が広場に吹き荒れ、視界が遮られる。
どうなったんだ?
せめて、翼一つくらい潰せれば…………え?
少しずつ煙が晴れてきた光景に言葉が詰まる。
「火傷、程度?」
相当固いらしいな、やっぱり。
まずい、やっぱり魔力というものを感覚的に掴まないといけないらしい。
ワイバーンが突き刺す視線を向けて来る。
この状況で、魔力まで意識とか難しくないか?
――――グァァァアアアアアアアア!!!
「カガミヤ!! 次が来るぞ!!」
アルカの叫び声に合わせるように、ワイバーンが大きな口を開いた。
構内に広がるは、簡単に岩をかみ砕くことは出来そうな牙、滴る涎。
奥に広がるは、何でも吸い込んでしまいそうな闇。
「避けて!!!!!」
リヒトの甲高い声に体が咄嗟に反応した。
動き出すのと同時に、闇の中には一粒の光が見えた。
目が離せないまま走り出した時、咆哮と共に吹雪のような冷たい息が放たれる。
これって、ブレス攻撃!?
「つっめた!!!!!! うわっ!!」
いってて、転んじまったが何とか避けられた。
「今のって、氷か?」
吹雪のような息を吐き出し、相手を凍らせる攻撃……か。
厄介なもんを持っているな。
掠っただけでも一瞬腕が動かなくなった…………いや、おいおい、マジかよ。
足まで凍ってる。
これじゃ自由に動けねぇじゃねぇか!
「カガミヤ!!」
「カガミヤさん!!!」
二人の声に顔を上げると、ワイバーンと目が合った。
「あっ……」
口が大きく開く。
これは、先ほどと同じ動き。ブレス攻撃だ!!
冷たい息が俺に向けて放たれた。
避けたくても避けられない、防ぎたくとも魔法を知らない。
どんどん近づく白い息、体が冷たくなる感覚が伝わる。
スローモーションのように見える映像を眺めるしかできない。
───────終わった。
諦め、目を閉じ衝撃に備えると、リヒトの声が聞こえた。
「lehrd!!」
………………………………っ、これは、なんだ? 盾?
「カガミヤ! 今のうちに炎で氷を溶かせ!」
振り向くと、杖を掲げ半透明のシールドを張っているリヒトと、俺に駆け寄ってくるアルカが見えた。
言われた通り、flameを氷にかざすと、すぐに溶けた。
「溶けたのなら、早く逃げるぞ!」
アルカが俺の手を掴み、走り出す。
振り返ると、リヒトが作り出した盾が凍っていた。
――――ピキ
っ、ヒビが入り始めた。
早く動きたくても、足がまだ動きにくい。
「…………くそが」
「え、カガミヤ?」
…………ぁぁぁぁああああああ、本当にめんどくさいな。
なんなんだよ、なんで俺はこんなことに巻き込まれないといけないんだ。
俺はただの会社員なんだよ。
体を鍛えているわけでもない、ただのおじさんなんだ。
「もう、本当に。どうにでもなれ…………」
もう嫌だ、報酬のために頑張ってきたけど、さっきので心がぽっきりと折れた。
俺は、元々こんなことをやりたくないんだよ。
目立たず静かな環境で一人、通帳を眺めて過ごしたいんだよ。
「今のうちに、これを溜める。口の中に、突っ込んでやるよ」
出し方なんて知らない、どのようになるかなんてわからない。
でも、もう俺は嫌だ。怖い思いも、痛い思いもしたくない。
もう、終わらせたい。こんな恐怖から、死と隣り合わせの現状から。
今すぐにでも逃げて、人のいない所で静かに過ごしたい。だから、やる。
チート魔力を獲得したんだったら、ここで力を見せやがれ。
俺のために、報酬のために。今ここで、全てを解放しやがれってんだよ!!!!!
『――――――――承知、すべての魔力を開放。これより、倍以上の威力の魔法を出す事が出来ます』
指輪から高めの機械音が聞こえた。
なんだ、指輪から強い光。
辺りが指輪から放たれる光で照らされる。
アルカとリヒトも何が起きたのか理解出来ず、俺の方を向き目を丸くしていた。
俺も、何が起きたのかわからない。
――――さっきの機械音。もしかして、これが力の解放?
それに、なんか、何かが体を巡っている。
もしかして、これが魔力?
…………いや、なんでもいいや。
目の前に立ちはだかるワイバーンをどうにか出来れば、なんでもいい。
「この一発で、終わらせてもらうぞ」
言うのと同時に、左手をゆっくりと上げ、炎の弓を生成。右手を肘から後ろに引き、物を掴む。
足から白い煙が出ている。氷が完全に解凍されたんだな。
膝を曲げ、その場に立ち上がる。
前を向くと、リヒトの張った盾が蜘蛛の巣のようにヒビを広げている。
もう、割れる一歩手前だ。
炎が右手から現れ、一本の弓矢を作り出す。
――――ガッシャァァァァアアン!!
すると、タイミングよく盾が大きな音と共に壊された。
ワイバーンのブレス攻撃が俺へと向かう。
だが、こっちの準備はもう整っているぞ。
「死ね、俺の報酬のために――|flama Arrow」
炎の弓矢を限界まで引き、盾が壊れるのと同時に右手を離した。
勢いよく放たれた弓矢は、俺に向けて放射していたブレス攻撃を霧散させた。
勢いは止まらず、開いていたワイバーンの口から体内に入り込む。
ワイバーンの身体が徐々に赤くなり、体内で爆発。どんどん体が膨らんでいく。
限界まで大きくなったワイバーンの身体は、咆哮と共に三人の目の前で大爆発を起こした。
――――ガァァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!
爆風が吹き荒れ、地面をしっかりと踏みしめていなければ吹き飛ばされてしまう。
顔を両手で覆っていると、左手に持っていた炎の弓矢が自然と消えた。
「お、終わったの?」
リヒトの問いかけに、俺とアルカは晴れてきた土煙の向こうを見る。
そこには、なにもない。
・・・・・・・・え、本当に、何もない。
「あの、ワイバーンが、こんなに、一瞬でなんて…………」
驚きの声を上げるリヒトとアルカ。
安心して、この中で一番驚いてるのは、俺だ。
「…………何が起きたんだ?」
頭に血が上ったのは認めるが、ここまでとは。
俺、やばいことしちまったみたいな、罪悪感が浮上しちまってんだがどうしてくれるんだよワイバーンよ。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




