意思のある指輪とか普通に恐怖なんだけど
唖然としていると、指にはめられた指輪が微かに光を放った。
そういえばさっき、指輪から何か言われたな。
頭に血が上っていて、はっきり覚えていないが。
『我が主、知里様。元主の命により、今後は貴方のサポートをさせていただきます。ご気軽にお使いください』
「何言ってんの?」
『元主の命により――……』
「それはもういい」
いや、マジで何を言っているんだ。
元主の命により俺を主にしてサポート?
サポート言ってる暇があるなら、俺の二百万探してくれない?
服をリヒトに引っ張られた。
「カガミヤさん、大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」
「おー、さっきは盾ありがとな。それのおかげで助かった。見ての通り無傷だ、気にすんな。でも、二百万は気にしてほしい、何処?」
怪我してもいいから、二百万はくれ。
「あっ、二百万……いや。あの、にひゃく――じゃなかった。アルカ、アビリティだったか? これが意味わかんねぇこと言ってるんだが。お前らのも喋るのか? 主がどうとか」
そう聞くと、なぜか二人は目を丸くした。
……なんだ?
固まる二人をよそに、アビリティが勝手に映像を表示する。
『主、今回の魔法により魔力が大きく減少しております。念のためご確認ください』
「魔力より、二百万……」
まぁ、ここで倒れたら二百万は手に入らないかもしれないし、従うか。
確認しようとすると、二人がなぜか驚いた。
「どうした? 二百万見つけたか?」
「アビリティが……喋ってる?」
「え、なんか喋ったな」
アルカが俺を指差す。
幽霊でも見たような顔だ。
「なんで指輪が喋るんだ……」
「え、これ普通じゃないの?」
「普通は喋りません。能力値の確認や魔法一覧の表示ができるだけです」
「マジか」
……なんか、主人公ってすごいな。
いや、感心してる場合じゃない。
これ、世界を救えとかいう流れにならないよな?
嫌だぞ。そんな大役は別の主人公に任せてくれ。
俺はその報酬をもらうだけでいい。
パラメータを確認すると、ある違和感に気づいた。
「……あれ? ほとんど減ってねぇ。さっき“だいぶ減った”って言ってなかったか?」
『元主を基準として算出した場合、“だいぶ”に誤りはありません』
「あ、はい。すみません……。ん? 元主? さっきから言ってるその元主って何だ?」
『詳細は後ほど。長くなりますので』
「はい」
まぁ、今ここで聞く話でもないか。
今は――報酬だ。
「なぁ、この後どうすれば報酬がもらえるんだ?」
「あ、えっと……ワイバーンを倒したから、奥の道が開いているはずだ。そこに宝が――」
「二百万がそこに!? 今すぐ行くぞ。早く来い」
二百万への道はどこだ。
「い、いや。あの、お宝はさっき言っていた報酬とは別でもらえて……」
「なんだって!?!? 二百万+宝、と、いうこと、か?」
思わず体が前のめりになる。
体を震わせているリヒトが小さく頷いた。
「金への道はどこだ!!」
「さっきまでの戦いが嘘みたいに元気……」
金への扉はどこだぁぁぁぁああ!!
「……あ!! あれか?!」
「え、あ、あった!!」
指差すと、リヒトが真っ先に走り出した。
あっ!! 俺の金を横取りするつもりかぁぁああ!!
って、くそ。体が動かん!
待て、それは俺の金だぞ!! ……年齢差か、ちくしょう。
後を追おうとすると、アルカに呼び止められた。
「なぁ」
「え、な、何?! お前も俺から金を奪おうとする気か!!」
「何の話だ……。そうじゃなくて、あんた、本当に何者なんだ?」
真正面から目を見てくる。
疑いか、純粋な好奇心か。
話していても金は手に入らないんだが?
「あれだけの力を持って無名はありえない。それに、その指輪。どこで手に入れた?」
「ぐいぐい来るな……」
アルカは多分、好奇心だけで話しているわけではない。
表情が真剣そのものだ。
「無理に聞くつもりはなかった。でも、さっきの魔力を見て……気になって仕方がない」
まあ、普通はそうだ。
「一応考えた。だが、腑に落ちない」
「腑に落ちない?」
「ああ。転移魔法だけじゃ説明できない。指輪はギルドの人間にしか与えられない。それをどうやって手に入れたのか。それに、あの魔力量をどう抑えているのか」
……ちゃんと考えてたんだな。
少しだけ見直した。ただのバカではないと。
「悪いが、それを俺に聞いても答えは出ない」
「なんでだ?」
「俺も強制的にここへ召喚された側だ。指輪は目覚めた時にはめられていた。どこで入手したかもわからない」
アルカの視線が痛い。
「この世界のルールも知らない。何をするにも初心者だ。俺に聞いても答えは出ない」
「……そうかもしれないけど」
俯かれても困るって。
俺だって説明が欲しい側なんだ。
『はい』
「呼んでねぇよ、アビリティ」
『後ほど説明する予定でしたが、空気が重いため、今ご説明いたします』
……あ、はい。
どうぞ……。金が遠くなる……。
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