予想外というか、これ完璧ハズレじゃねぇかよ
ダンジョンを進み、財宝――を手に入れたかったのに。
最奥まで辿り着くと、そこには見覚えのある卵がぶら下がっていた。
「もしかして、今回の報酬って……」
「間違いなく精霊だろうな」
「なんでそんなにがっかりしているんだよ」
「がっかりに決まってるだろ。俺は金が欲しいんだ。金色に輝く物が欲しいの。精霊なんて金にならんだろうが」
「隣で飛んでる精霊が泣いてるぞ」
冗談じゃなく、本当にスピリトが泣いている。
体を震わせるなよ、なんかガチっぽいじゃん。
……ごめんごめん。今回は本当に助かった。
慰めつつ、卵を見上げる。
確か、魔力を注げば孵化するんだよな。
「アルカ――」
「俺はもう魔力ないぞ。カガミヤの方が確実だ」
先読みしやがった。
『多分、御主人様が注いだ方が早いと思います』
「なんで?」
『美味しそうだから』
「やめろ」
食い物を見る目で見るな。
「わかったよ……」
リヒトをアルカに預け、卵に触れる。
「――っ!?」
魔力が一気に吸われる!
俺の魔力だって無限じゃないぞ!!
「くそ……」
卵が発光し、ひびが入る。
早く割れろ。
ヒビが蜘蛛の巣状に広がり、光が漏れ出す。
「~~~~もう無理!!!!」
限界だ。手を離す。
だが卵はそのまま割れ、弾けた。
「……今回はどんな精霊だ」
光が強すぎて見えない。
小さい人影。背に羽。
やがて光が落ち着き、姿がはっきりする。
短い髪に黄色の花飾り。
黄緑のスカートとローブ。
腕を組み、藍色の瞳で俺を見下ろす。
……なんだこの威圧感。
『私はリンク。貴方達が目覚めさせた主ね。私が貴方の精霊になってあげるの。感謝するのよ? 人間』
……………………売ろう。
※
指輪で無事帰還。
救出した男とも合流し、ギルドへ。
ラスボス討伐の報酬は俺達に入るらしい。
男が受付嬢に説明してくれている間、待機。
……待機しているのだが。
「はぁぁぁああああああああああ」
周囲の視線と甲高い声で、怒りゲージが上がる。
『ちょっと!!! なんで私を無視するのよ!! 私は貴方を主にしてあげる心の広い精霊なのよ!? “お願いします”と言いなさいよ!!』
うるさい。本当にうるさい。
スピリトが宥めているが、届いていない。
周囲の視線が痛い。
「なぁ、その精霊、無視でいいのか?」
「俺には何も聞こえていない」
『嘘つくなぁぁぁぁああ!!!』
うるさい。
アマリア、買い取ってくれるだろうか。
「リンクって言ったよな? 何ができるんだ?」
おい、話しかけるな。
『貴方みたいな下等人間が気安く話しかけないでくださる? 自分の立場が分かっていないのね』
「立場?」
『私達精霊がどれだけ希少か分かっていないわね。それにこの私、希少の中の希少よ。軽々しく話しかけないでちょうだい』
「わ、悪かった……」
甘いな、アルカ。
だが今の言葉、気になる。
「希少の中の希少、とは?」
『あら? 無視していたのに気になるのね。でも罰は必要だわ。謝罪し、今後私の言うことに絶対服従すると契約を――』
「もういい。売ると決めた」
『……え?』
「売る」
『この私を!?』
俺は小さく頷いた。
※
男が話をつけてくれたらしく、俺達はギルドの受付に呼ばれた。
精霊はうるさすぎるので、『これ以上騒ぐなら本当に売り飛ばすぞ』と脅したら静かになり、今は姿を消している。
「こんにちは、話は聞いております。では、ほうしゅぅぅぅぅぅぅぅううううぁぁぁぁぁああああ!!」
「カガミヤぁぁぁぁぁあああ!?」
この女の軽すぎる挨拶と笑顔。
我慢できるわけがない。
頭を鷲掴みにし、力を込める。
叫んでいるが知らん。
俺は本気で死にかけたんだぞ。
「落ち着けカガミヤ!! 気持ちはわかるが相手は新人だ!! それ以前に女性には優しくしろと兄貴に教わったぞ!!」
くそ、後ろから腕を押さえられた。
「離せアルカ。命の危険に晒されただけじゃない。面倒なもんまで引き当てやがったんだ、怒りをぶつけても罰は当たらない」
「それをぶつけても意味ないだろ!? 泣いてるし!! 頼むから落ち着けぇぇええええ!!」
……ちっ。
今回はここまでにしてやる。
「で? なんで俺達をSSランクに行かせた」
「い、いえ……私は確かにBランクの地図を……」
「その地図がSSだった。細工もされていた。間違いでは済まないぞ」
「な、なぜ……」
目が泳いでいる。
何かを隠しているな。
……まあいい。
「それより報酬だ。金をくれ」
「あ、はい。記録修正と分配確認を行います。少々お待ちください」
業務は妙に手慣れている。
やっぱり引っかかる。
「申請完了しました。数日後に振り込まれます。あと、アルカ様、リヒト様はAランクへ昇格です」
「まじか!!!!」
アルカが飛び跳ねる。
順調すぎるのが逆に不安だ。
今回の件、第三者が絡んでいる。
だが今はいい。
「帰るぞ」
「おう!!」
俺達は部屋へ戻った。
※
知里達が去ったのを確認すると、受付嬢は受話器を取った。
「……フェアズ様。予定通り、カガミヤチサトはSSランクを突破しました」
『そう。ご苦労さま。あとはこちらで処理するわ』
「報酬の件は……」
『約束は守るわ』
通話終了。
息を吐き、前を向いた瞬間――固まる。
目の前に、アマリア。
だが子供の姿ではない。
黒いローブ、水色の髪。
左右非対称の濁った瞳。
「何を驚いているの? 予想していたでしょう」
低い声。
受付嬢は崩れ落ちる。
「違反行為の自覚はあるみたいだね」
感情のない声。
「僕はギルドを二番目に大事にしている。今回のは許せない」
周囲は闇。
逃げ場はない。
「君、フェアズに捨て駒にされたね」
足音が近づく。
そして――
――――sunet
モスキート音。
次の瞬間、受付嬢の頭部が弾け飛んだ。
血が舞う。
アマリアは表情を変えない。
そこへ、アクアが現れる。
「牢に入れるだけでもよかったのでは?」
「今回はやり過ぎた。チームが一つ消えていたかもしれない」
「知里が居たでしょう?」
「誰であろうと関係ない。僕は平等だ」
アクアは小さく笑う。
「フェアズが絡むと過激になりますね」
「気のせいだよ」
アマリアは消えた。
アクアは呟く。
「歯車が狂い始めましたね」
そして彼も消えた。
翌日。
ギルド掲示板には人だかり。
そこには受付嬢の死亡報告が貼られていた。
知里は、それを見つめる。
何も言わず、ただ立ち尽くしていた。
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