手形を貰ったはいいが、正しい使い方なんぞわからんぞ
俺がアマリアの言葉に唖然としていると、「最後にこれ」と、ポケットから取り出したカードを渡された。
「…………これは?」
「ギルドのライセンス。君のをいち早く作成したんだ」
「え、なんで」
「少しでも早く動き出してほしいからね」
動き出してほしいって、なんで?
俺に面倒ごとをさせようとか思ってねぇだろうな。
「んじゃ、僕はこの辺で失礼するよ。あ、君にはこれを渡してあげる。この村はまだまだ不安定、これを使って完璧にして。あと、僕じゃなくて”フェアズ”という名前を使って」
「フェアズ?」
「そう。それじゃ、僕は行く。バイバイ」
茶封筒と、よく分からん名前を言い残し、アマリアは出て行ってしまった。
なんなんだ? これって何?
渡された茶封筒に目を向けると、アルカがこれの正体を教えてくれた。
「それ、管理者から直々に渡される"手形"じゃねぇかな」
「手形? もしかして、契約書的な意味の手形か?」
「そうだ。これがあれば、期限中のみ管理者と同じ権力を使える」
「魔法の契約書じゃん」
やべぇ、何かよくわからんけど、ラッキー。
「まさか、こんな物が本当に現実にあるなんて思ってなかった。カガミヤはアマリア様に気に入られたのかもな」
「…………それに関しては、喜んでいいのかわからん」
受け取った茶封筒を開き中を見てみると、一枚の折りたためられた紙が一枚だけが入っていた。
取り出し開くと、魔法陣が大きく書かれていた。
「これが手形?」
「みたいだな」
二人が覗き込んでくる。
見覚えがない魔法陣らしいな、眉間に深い皺が寄ってるぞ。
んー。触ってみると何か反応あるか?
────────バチッ!!
「――――っ!?」
「カガミヤさん!?」
魔法陣に触れようとしたら手に衝撃が走り、痺れた。
電気が走った訳ではないと思うんだけど。なんか、振動? みたいなのが伝わってきた。
今のがアマリアの属性魔法なのか?
何だろう。水とか炎とかではないのはわかるけど、電気とかかな。
まぁ、いいか。今は手形の使い道だな。
管理者と同じ権力を期限付きとはいえ、使えるようになった。
「んじゃ、《《渡しに行くかぁ~》》」
※
新しく村長となった元受付嬢に手形を貰ったことを伝えると、目を輝かせた。
俺が持っていても仕方がないというのでこいつに渡すと、出来るだけ早く村を元通りにして見せますと宣言してくれた。
もう、元受付嬢は心身共に問題ないだろうし、信じよう。
俺は俺で個人的にやる事がある。あとは任せたぞ、元受付嬢さん。
という訳で俺達は今、活気が良かったはずの村を三人で歩いている。
今のセーラ村は、活気がいいとは言えない状態。
元々活気が良かったのも、村長が理想を表に見せる為、強要していただけなんだけどな。
そんな人がいなくなった今、無理に出歩く意味も、体にムチ打って働く必要もない。そうだとしても複雑な心境なのだろう。
店は開かなければならないため、店番が立っているのだが、顔は暗く笑っていない。眉を下げ、虚空を見続けている。見ていて少し痛々しい。
「なんか、寂しいね」
「仕方がないだろ。今までが異常だったんだ」
リヒトもアルカも、何か思うところはあるみたいだな。
アルカは自分に言い聞かせるように呟いている。
相当、辛いんだな。
でも、俺には今の二人を慰めるのは無理、なんと声をかければいいのかわからん。
だから、代わりと言ってはなんだが、頭を撫でてあげる。子供って好きだろ。
いつも照れくさそうに頬を染めてるし、喜んでいるんだよな、きっと。
そんなことを考えていると、リヒトが頬を染め困惑の表情を浮かべ俺を見上げてきた。
「え、ちょ、なんで?」
「ん? 嫌だったか?」
「い、いえ。なんか、緊張してしまって」
「お前、男慣れしなさすぎじゃねぇか? 距離感バグっているくせに」
「そんな事ないですよ。アルカには頭を撫でられても特に何も。カガミヤさんだから、少し緊張するだけです」
…………ん? え? は?
おい、頬を染めてそんな事を言うな。その辺の男なら勘違いするぞ。
…………勘違い、だよな? こんな若い奴が俺みたいなおっさんに”ホ”の字のはずがないんだからな。
うん、ありえない。歳の差がありすぎだろ。
…………俺を犯罪者にするなよ、リヒトよ。
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