これが、本物の強者
「なに言ってんだよカガミヤ!! 辞めろ!!!」
叫ぶアルカも、後ろで体震わせているリヒトも、顔が真っ青。
そんなになるくらい、俺は今、やばい事を口にした。
自覚はしている。けど、止められない。
止まっては、行けない。たとえ、今後こいつらに目をつけられようとも。
俺は、こいつらの行動と言動は、絶対に許せない。
「――――これは、本当に驚きました。まさか、私達と戦おうとする者がまだ残っていたなんて」
残って……いた?
「ですが、やめておいた方がいいですよ。今回は見逃してあげますので、お帰りくださぁい」
色々引っかかる言い方だな。
まぁ、ここで簡単に引くのなら、啖呵切ってないわ。
「それはありがたいね。でも、やめねぇよ」
「では、少しだけ現実を見せつけましょうか」
っ、横に垂らしていた手を動かし始めた。
魔法を繰り出してくるのなら、属性を確認しっ――………
「これで終わりですね。残念です」
瞬きする暇すら与えず、距離があったはずの男が目と鼻の先まで迫ってっ――……
──────ザシュッ
「グッ!!」
「カガミヤ!!!」
…………アルカが駆け寄り、力が抜けた俺の身体を支えてくれた。
────ポタッ
血が、流れる。腹が、熱い……。
「っ、アクアが、仕留められなかった……?」
ちいせぇ方がなんか、驚いてやがる
仕留められなかったって……。
「大丈夫ですか! カガミヤさん」
腹を抱え止血していると、リヒトも駆け寄ってきた。
正直、全然大丈夫じゃない。
腹部に鋭い痛み、手で押さえても溢れ出てくる血。深くまでやられたぞ、これ。
「なにやっているのアクア。あんな奴を逃すなんて」
「確実に狙いに行ったんですけど、おかしいですね。途中、何かによって意識が逸らされた気分ですぅ」
――――その通りだよ。
体が咄嗟に危機回避するため、heat hazeを発動させた。
ほんの少しだったとしても、狙いが逸れたおかげで致命傷を食らわず済んだ。
…………ん? アクアの手、大きくないか? それに、爪が鋭い。獣の手みたいだ。
まさか、あれも魔法の一種なのか?
「次で、仕留めましょうか」
っ、次が来る。
手に付いた血を一舐めし、フードの隙間から俺を見る藍色の瞳は楽しそうに歪んでいた。
脳が言っている、こいつと戦ってはいけないと。
体が訴えている、今すぐ逃げろと。
出血もあり息苦しい、視界が歪む。
見られただけでここまで追い込められるなんて思わなかった。
これが、管理者の力。
初めて、ここまで恐怖を感じた。
速く動かなければ、殺される。
「終わりですよぉ」
相手は腰を落とし、臨戦態勢。
早く、早く動け。俺の身体、早く――――
────ダンッ!!
地面を強く蹴った瞬間、アクアの姿が捉えられなくなる。
駄目だ、体を動かせない!!
「っ、スピリト!!!!」
『ご主人様!!!』
スピリトが息を吐き、全方位に炎の壁を作る。
だが、それすら簡単に切り裂かれた。
鋭く尖る爪、迫ってきた藍色の瞳。フードが取れ、銀髪が広がる。
きらきらと輝く銀髪、楽しそうに歪む藍色の瞳。赤い唇が吊り上がり、迫ってくる。
時間が止まったように感じる。
これが、刹那と呼ばれるものなのだろうか。
頭で考えず、スピリトが出した炎を右の手元に集結。
一瞬で野球ボールくらいの炎の玉を生成。
迷う事なく、相手の腹部に放った。
「────えっ」
――――――――ドカンッ!!
「ぐっ!!」
思ったより勢いが強すぎた。
俺まで巻き込まれる程の威力に、アクアも驚きの声を上げ、咳き込みながら後退した。
「…………無傷かよ……」
まだ咳き込んでいるみたいだけど、怪我はしていないように見える。
少しでも良いから傷ついてくれよ、お前の頑丈さに精霊であるスピリトも怯えてるぞ。
「――――これは、面白いですねぇ~。もっと、楽しみたいなぁ~」
目が、イッているんだよ。
かっぴらいている目にギロリと見られ、体がすくむ。
これはさすがに、今の俺では勝てない。
血がなくなってきたのか瞼も落ちてきたし、もうそろそろ体の限界も近い。
「もっと、殺りあいましょ~?」
やばい、今までは咄嗟に動き受け流せたが、そんな奇跡がずっと続くとは限らない。
「っ、そういえば――……」
今の状況で使えそうな魔法、一つだけあった。
「遊びましょう!!!」
「っ!」
アクアが上に跳んだことは頭で理解出来る。
でも、目が追い付かない!!
「──頼む、起死回生の魔法になってくれ!」
右手に水魔法を集め、前方に最大限の魔力を放つ。
「|absolutewater!!」
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