※なぜ人の上に立つものはこんなにも腐ってんだよ
「くっそぉぉぉおおおお!!! また負けた!! ぜんっぜん勝てねぇ!!」
青空の下、アルカの悲鳴が響き渡る昼過ぎ。
綺麗な空が広がる中、俺の耳が壊れそうになっていた。
今日もまた、アルカに付き合って模擬戦中だ。
何度も何度も戦っているから、アルカの癖や戦闘パターンもだいぶ理解してきた。
「だが、最初より手合わせの時間が長くなっているんじゃないか? 休憩中に外にいるリヒトに聞いてみろ」
「もう一回!!!」
「話を聞け」
「もう一回!!」
「休憩だ休憩、俺は疲れた」
後ろで何か言っているが、知らん。
強制終了しないと、この体力馬鹿に一生振り回される。
外に出てリヒトから飲み物を受け取り、休憩。
あー、暑い。
『────主様』
「ん? どうした?」
飲みかけたところで、アビリティが呼びかけてきた。
『強い気配を感知しました。二人組です。一人からは明確な悪意を感じます』
「っ、なに?」
悪意を帯びた気配?
……放置はまずいな。
くそ、行きたくない。
だが、胸騒ぎがする。
「…………ちょっと、席外す」
「どうしたんだよ、カガミヤ」
「アビリティが、放っておけない気配を感じたらしい」
顔を上げた瞬間、それが見えた。
セーラ村の上空に、黒い雲。
明らかに人為的な暗雲。
「──っ、な、なんだよ、あれ」
俺が唖然としていると、アルカが腕を掴んだ。
「ど、どうした?」
アルカも、リヒトも、顔が青い。
震えている。
問いかけると、アルカは黙ったまま。
代わりにリヒトが答えた。
「セーラ村に……管理者が来ているんだと思います。アマリア様ではない、別の管理者が……」
管理者?
村を見る。
風に乗って邪悪な気配が届く。
悲鳴。
逃げ惑う足音。
……なんだよ、これ。
アマリアからは感じなかった。
体を貫くような戦慄。
足が震える。
冷や汗が止まらない。
逃げたい。
行きたくない。
でも――
なぜか、行かなければいけない気がする。
「カガミヤさん、行くんですか?」
「……心底行きたくないけどな。でも、行かないと後悔する気がする」
「それなら、私も行きます」
リヒトが力強く言い切る。
顔は青い。
手は震えている。
それでも、瞳は逸らさない。
「無理するな。ここにいろ。危険だ」
「嫌です。カガミヤさんだけ危険な目に遭わせません」
「俺も行く!! 二人だけで行かせるか!」
……はい、止まらないやつ。
「……わかった、好きにしろ」
「「はい!!」」
三人で走る。
※
近づくほど、気配が濃くなる。
村の入り口。
二つの影。
フードで顔は見えない。
一人は俺と同じくらいの背丈の男。
もう一人は子供ほどの小柄な体。
背中には巨大なライフル。
黒ずくめの男が持っているのは、赤黒い何かが付着した袋。
子供一人は入る大きさ。
「……おや? 私達から逃げない方がいるとは。驚きですねぇ」
声をかけられ、足を止める。
「…………関係ない。早くこれを置いて行こう。ここに用は無い」
「そうですねぇ。では、命知らずさん達、これを預けますねぇ〜」
二人は袋を放り投げた。
――グシャッ
嫌な音。
袋の口がほどける。
――――見えた。
「…………え」
人の手。
老いた手。
「お返ししましたよ。この村の村長さんを」
……そん、ちょう?
「ルール違反ギリギリを攻めていましたからねぇ。それも駄目です。なので、少しだけ罰を。ゆっくり四肢を斬り落としていましたが、体がもたなかったみたいですねぇ。途中で気絶しましたよぉ〜」
くすくす笑う。
当たり前のように。
袋の隙間から血が流れ、地面を赤く染める。
……なんで、ここまで。
「思い改めても意味はありませんよ。罪は罪。犯した事実は消えません」
楽しんでいる。
絶対に。
袋の大きさ。
大人がそのまま入るのは不可能。
つまり、中はバラバラ。
二人が背を向ける。
去ろうとする。
――――ドクンッ
待て。
この感情はどうすればいい。
胸の奥から湧き上がる、気持ちの悪い熱。
心臓が跳ねる。
自然と魔力が右手に集まる。
溢れる。
「……その気配、貴方ですかぁ?」
アクアと呼ばれた男が振り向く。
都合がいい。
「あぁ、俺だよ。魔力制御が下手でね」
アクアが楽しげに笑う。
「聞きたいことがある」
「何ですかぁ?」
「どうして、ここまでやった?」
「ここまでとは?」
本気でわからない顔。
それとも演技か。
「村長のことだ。罪は犯していた。だが、悔い改めていた。そこまでやる必要はあるのか?」
「必要? 知りませんねぇ。罪を犯した。だから、命じられた通り罰を与えた。それだけです」
………は?
「誰に命じられた?」
「それは言えませんねぇ」
言われたからやった?
それだけで?
罪悪感は?
「もしかして、うちらに楯突く気?」
「えぇ? それはやめた方がいいですよぉ。死体がまた増えます」
逆らえば殺す。
当然のように。
「……へぇ、なるほどな」
これが管理者。
アマリアは、やっぱり特別だった。
「もういい。話は無意味だ」
「そうですかぁ〜」
理屈は、通じない。
なら――……
「だから、実力行使だ」
「ほう?」
右手に炎を灯す。
前へ突き出す。
「俺と戦え、管理者」
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