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※なぜ人の上に立つものはこんなにも腐ってんだよ

「くっそぉぉぉおおおお!!! また負けた!! ぜんっぜん勝てねぇ」


 青空の下、アルカの悲鳴が響き渡る昼過ぎ。

 綺麗な青空が広がる中、俺の耳が壊れそうになっていた。


 今日もまた、アルカに付き合い模擬戦中。

 何度も何度も戦闘を行っているから、アルカの癖や戦闘方法などを理解してきたなぁ。


「だが、最初より手合わせの時間が長くなっているんしゃないか? 休憩時に外にいるリヒトに聞いてみろ」

「もう一回!!!」

「話を聞け」

「もう一回!!」

「休憩だ休憩、俺は疲れた」


 アルカが後ろで何かを言っているみたいだが、俺は疲れたんだよ。

 強制的に終わらせなければ、体力馬鹿に永遠に振り回されるだけになる。


「はぁ……。早く、ライセンスをゲットさせてくれ……」


 こんなことしていても金の足しにもならねぇ……。

 金の足しになるライセンスが早くほしい。


 汗を拭いながらシールドから出ると、リヒトがタオルと水分を渡してきた。


 気が利くな、助かる。


「サンキュー」

「いえ、アルカに付き合ってくださり、ありがとうございます」

「まったくだ。マジで本当に疲れた」


 ボトルに入っている水を飲んでいると、アルカもリヒトから同じく、タオルと水を受け取り飲み始めた。


 やれやれ、今日はもう休みたい。

 頭も体も疲れたわ。


『────主様』

「ん? どうした?」


 いきなりアビリティに呼ばれた、なんだ?


『強い気配を感じます。二人組です。一人からは悪意を感じます』

「っ、なに?」


 悪意が込められている、気配?

 ほっといたら、さすがにまずいか……。


 くそ、めんどくさい、行きたくない。けど、胸騒ぎがする。


「…………ちょっと、席外す」

「どうしたんだよ、カガミヤ」

「なんか、ほっといてはいけない気配を感じたらしい。アビリティが」


 タオルと水をリヒトに渡し村の方へと走ると、二人も着いてきた。


 今は村の裏手にいるから、すぐ気配の正体を知れるだろ。


 走っていると、徐々に辺りが暗くなる。

 上を見ると、暗雲が立ちこめていた。しかも、セーラ村にのみ。


「──っ、な、なんだよ、あれ」


 近付けば近づくほど風が冷たくなっていく。


 確実に、何かが村に来ている。

 村を襲うつもり……なのか?


 後ろを走っていたアルカが村で起きている事態を把握したのか、青い顔で俺の手を掴んできた。


「待ってくれカガミヤ、今行くのは非常に危ない」

「それは肌に刺さる感覚でわかる事だ、わざわざ言わんでもいい」

「来ているんだ、村に、来ちまっているんだよ!!」


 おい、それだけ叫ばれてもわからんぞ。

 いや、やばい奴が来たのはわかるが……。


 アルカはこの気配の正体がわかったのか? 掴んでいる手が、震えている。


 リヒトもアルカと同じくらい顔を青くし、立ち止まった俺の隣に立った。


「セーラ村に、管理者が来ているんだと、思います。アマリア様ではない、違う、管理者が……」


 管理者、だと?


 セーラ村を改めて見ると、風に乗って邪悪な気配が俺達に届く。

 微かな人の悲鳴や、逃げまどう音までも聞こえてきた。


 くっそ、なんでだよ、アマリアからは感じなかったぞ。

 こんな、戦慄が体を突き抜けるような感覚。


 足が震えている、冷や汗が止まらない。

 でも、行かないと。


 なぜかわからんが、行かないといけない。

 そんな気がする。


「カガミヤさん、行くんですか?」

「…………心底行きたくないけど、行かないといけない気がする」

「それなら、私も行きます」


 俺を見上げて来るリヒトが、力強く言い切った。


 顔はまだ青く、俺の腕に添えている手は微かに震えている。

 紅色の瞳は恐怖でなのか、揺れていた。


「無理をするな、お前らはここに居ろ。さすがに危険だ」

「嫌です、私も行きます。カガミヤさんにだけ危険な目に合わせる訳にはいきません」


 うわぁ、これは何を言っても聞いてくれないやつじゃん。


 隣に立つアルカを見るけど、何も言わないだけで、決意はリヒトと同じっぽい。


「……わかった、好きにしろ」

「「はい!!」」


 二人の返事を聞き、再度村へと走り出す。



 近付くと、当たり前だが気配が強くなる。

 前を見ながら走っていると、村の出入り口に二人の人物が立っているのが見えた。


 顔はフードで隠れていて見えないが、身長的に一人は男性なのはわかる。

 おそらく俺と同じくらいの背丈。


 もう一人は子供のように小さい。

 アマリアと同じくらいかな。背中に背負っているライフルがものすごく大きい。


 黒ずくめの人物が手に持っているのは、赤黒い何かが付着している袋。

 子供なら一人くらい入りそうな大きさの袋だな。


「……おや? まさか、私達から逃げない人がいるなど。思いもよりませんでしたよ」


 っ、背後から近づいて来た俺達に気づいた? 


 声を掛けられ足を止めると、二人は俺達の方へと振り向いた。


「…………早くこれを置いて行こう。ここに用無い」

「そうですね。では、これをお返ししましょうか」


 高い声が二人、一人は少年のような声。

 もう一人は、地声が元々高いのか、聞き取りやすい声。


 俺達の方を向いたかと思えば、二人は会話を交し、手に持っていた袋を投げ捨てた。


 グシャッという嫌な音が聞こえ、気になり目線を移すと、言葉を失った。


「…………え」


 投げ捨てられた袋の口が少しほどけ、中の物がほんの少しだけ見える。

 後ろにいるアルカとリヒトも見えたらしく、驚きすぎて声が出ていない。


 それも、そのはず。


 袋から見えたのは、人の手。

 若くは無い、年老いているような手だ。


「では、お返ししましたよ、この村の村長さんを」


 そん、ちょう?


「ルール違反ギリギリを攻めていましたが、それもそれで駄目な事です。なので、少しだけ罰を受けていただきたく、ゆっくりと四肢を斬り落としていました。体がもたなかったみたいですねぇ、途中で気を失ってしまいましたよぉ〜」


 身長が高い方が、くすくすと笑いながら当たり前のように言っている。


「…………なんで、そこまで……。村長は確かにクソだったが、思い改めていたのに……」

「思い改めても意味は無いのですよ。だって、罪は罪。犯した罪は、消えません」


 口調は一定だが、楽しんでいるような空気を感じる。


 袋は小さな子供が一人入れるくらいの大きさ。大人がどんだけ体を小さくしても入りきるのは不可能。


 つまり、袋の中には、バラバラに解体された元村長が入っているはず。

 袋の隙間から血が流れ、地面を赤く染めていた。


 俺が返答できずにいると、小さい方が大きい方の服を掴み急かす。


「ねぇアクア、早く行こう」

「そうですね、クロ」


 二人は何事もなかったように行こうとする。


 いや、いやいや、待てよ。

 確かにこいつは、人が行ってはいけない外道な行いをしていた。


 だが、ここまでするか?

 消えない罪を償わせるには、まだ他にも方法はあったはず。

 

 あいつは考え直していた、後悔していた。

 今までも、村への物資の調達はしていたし、村自体は守っていた。


 少なからずこんな外道でも、いなければもっと沢山の人が死に、村自体が存続出来なかっただろう。


 体をバラバラにされるとか、こんな扱いはされなくてもいいはずだ。


 二人が、居なくなる。

 俺達に背を向ける。



 ――――――ドクンッ



 待て、行くな。


 俺のこの気持ちはどうしてくれるんだ。

 この、心の底から湧き上がってくるような。気持ちの悪い感覚をどうしてくれるんだよ。


 心臓がドクンと跳ねる、自然と魔力が右手に集まる。


 俺の魔力が体からあふれ出てしまい、管理者二人は去ろうとした足を止めた。


「この気配、もしかして貴方ですかぁ?」


 アクアと呼ばれていた人が、俺の方を振り返る。


 都合いい、このまま何も言わずに去って行かれてしまえば、俺のあふれ出てしまった魔力(怒り)が宙ぶらりんとなってしまうからな。


「あぁ、俺だよ。ちょっと、魔力の制御ができなくてね」


 素直に言うと、アクアは振り向き「へぇ」と、何故か楽しげに口元を横に引き伸ばす。


「なぁ、聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「何ですかぁ?」

「どうして、ここまでやった?」

「ここまでとは?」


 これは、本当に分かっていないのか。

 それとも、すっとぼけているだけか。


「村長のことだ。こいつは、確かに罪を犯していた。だが、悔い改め、また違うやり方で村を守ろうとした。そんな奴に、ここまでする必要はあるのか?」

「必要? 私は知りませんねぇ。ただ、罪を犯した、だから言われた通りの罰を与えた。ただ、それだけです」


 ………な、んだと?


「は? それは、誰に言われたんだ?」

「言ったら駄目って言われているので言えませんよぉ」


 なんなんだ、こいつ。

 言われたからこんなことまでしたのか? 言われただけで、ここまでするのか? 


 罪悪感とかは、ないのか?


「なに、その顔。もしかして、うちらに楯突こうとか思っているの?」

「おや。もし、クロが言ったような事を考えているのでしたら、やめておいた方がいいですよ。死体がまた増えてしまう」


 その言葉。逆らったら殺すと、公言しているようなもんじゃねぇか。


「……へぇ、そっか。なるほどね」


 これが管理者か。本当に、アマリアが特別だったんだな。


 ……人に罰を与える人は必ず必要、それは正しい。だが、限度を考えられない奴は、人に罰を与える資格はない。


 こいつらに、人に罰を与える資格など、ない。


「もう、いい。話をしても意味は無い」

「そうですかぁ~」


 話しても意味は無い、俺も冷静じゃないし、しっかりとした話し合いは出来ない。


「だから、実力行使で行く」

「ほう、それは、どういうことですかぁ?」


 決まってるだろうが、わかってるだろうが。


 右手に炎魔法を灯し、前に突き出した。


「俺と戦え、管理者」

挿絵(By みてみん)


ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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