本人をよそに話を進めないでください
「僕はこの世界を仕切っている管理者であるうちの一人。主にギルドの管理をしている、アマリア。今後、よろしく」
まさか、こんな餓鬼が管理者の一人だったなんて……。
見た目は普通の子供。
まぁ、目が子供の目ではないけど、こんな餓鬼が本当に噂のようなことをしているのか?
「なるほど。んで、君はいくつなの?」
「それは何を聞いているの? 魔力量?」
「年齢」
「年齢…………あー」
え、指折り数え始めた?
やっぱり、結構な年齢なのか。
いくつだ?
まさか、三桁越えとかする感じか?
「…………見た目年齢的には、三十八かな」
「何その言い方。それに。見た目年齢は普通に餓鬼だぞ」
今のお前の年齢は小学生だぞ、三十八の訳ないだろう。
「今の姿が本来の姿じゃないからね」
「偽っているのか??」
「子供の姿の方が色々話しやすいでしょ?」
「はいはい」
いやぁ、なんか、もっとすごい年齢を想像していたから、呆気に取られてしまったよ。
三十八歳ねぇ~、三桁か四桁くらいが来いよ。
「まぁ、年齢に関してはどうでもいいわ。それより、色々聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「別にいいけど……」
ん? アマリアが何故か周りを見て顎に手を当ててしまった。
何を考えているんだ?
同じく周りを見回してみると、あれ。何となく、視線が集まってる?
耳打ちしている人までいるし、なんだろう。
「…………あ」
そういえば、管理者ってこの世界では有名人なんだっけ。
みんなの恐怖の対象で、誰でも知っている存在。
目立たない訳がなかった。
「…………目立たない場所、無いの?」
「ある」
「そこに行こう」
「わかった」
アマリアに聞くと、すぐに答えてくれてすぐに歩き出した。
良かった、これでこの煩わしい視線から開放される。
アマリアの後ろをついていき外を歩いていると、どんどん見覚えのある景色に移り変わる。
村の奥へいき、寂れた場所に。目の前には、ポツンと経っている小屋。
この小屋は、前の村長が住んでいた小屋で、今はヤンキー二人の住処となっていたはず。
え、今は駄目じゃないか?
だって、ここにはもう意気消沈しているヤンキー二人が…………。
遠慮なくアマリアがドアを開いてしまった。
中には――――あれ、誰もいない?
「ヤンキー二人が、いない?」
「あの二人なら気にしなくていいよ。僕が回収した」
「え、回収?」
「管理者としてではないよ、僕自身が動いてのこと。今は、違う所を寝床にしている」
へぇ、そうなんだ。
…………管理者。噂通りだったら危険なんだろうけど、目の前にいるアマリアはどうしても危険人物とは思えない。
纏っている空気は周りの人と変わらないし、普通。
警戒しなければならない人物には思えないな。
「適当に座っていいよ」
「わかった」
アマリアは村長が座っていた部屋の中心に座る。
俺も絨毯がある所に座りたいから隣に。
アルカとリヒトは遠慮気味に部屋の隅に腰を下ろした。
元受付嬢とは、ここに向かう前にもうわかれている。
「それで、何が知りたいんだっけ」
「まず、やっぱり気になるからもう一度聞かせてほしいんだ、おめぇの見た目。それは魔法? それとも元々成長しない体とか?」
「魔法だよ」
やっぱり魔法か。
それ以外考えられないけど。
「逆に僕から質問。答えるばかりではこちらにメリットがないからね」
「あ、はい」
そこはちゃっかりしてんなぁ。
質問は別にいいが、答えられることはないと思うぞ。
「何が知りたいんだ?」
「君の魔力は今、どうやって抑えられているの?」
「わからん」
やっぱり、答えられない質問だった。
アマリアから呆れた目――いや、違う。
なんだ、こいつの目、気持ち悪い。
蛇のようなねちっこい視線、まるで俺を見定めているような感じで鳥肌が立つ。
くっそ、早くここから逃げ出したい。
『――――ここからは私が説明します』
「うおっ!? お、おう。ま、かせた?」
視線から逃げるように目を逸らしていると、アビリティが突然出てきた。
ある意味、助かったな。ねちっこい視線が俺から逸れた。
「…………君は?」
『私は前主によって命令され、チサト様を主に従える事となりましたアビリティです」
「前主はもしかして、今封印されている人かな」
『はい』
「…………そう」
ん? 今、アマリア、微かにだけど、動揺しなかったか?
肩がピクッと動いたような気がしたんだけど、気のせい?
『…………なにか』
「いや、ちょっと驚いただけ。また、君と話すことになるなんて思わなくてね」
『今、話すことではありません』
「そうだね」
アビリティとアマリアがなんか話しているけど、俺、話に入れない。
…………当の本人、置いてけぼりで話を進めないでください。
『管理者に封印された前主は、私の後継者を探す為、転移魔法を発動。私がチサト様をこちらの世界に転移させました。魔力などは前主の物を付与しております』
「本当に前主だけの魔力なの? とんでも魔力だけど」
「僕の機械を壊すほどだし」と、小さな声で呟きやがった。
悪かったってば、許してよ。
『私は言われた通りにしました。ですが、何故か倍の能力を付与されており抑えるのが難しい状況。元々持っていた魔力が多く、それに加え前主の魔力が上乗せされた可能性があります』
「なるほどね」
おい、待て。
今の話、俺も聞いてないぞ。
つまり、俺は元々魔力が多かったが、それを知らなかったアビリティが言われた通りカケルのを上乗せした。
さらに魔法やスキルも付与してチートにしてやった、で、いいのか?
「なんとなく理解できたよ。それで、ギルドへの登録目的はなに?」
「それは俺が説明する。金です」
『違います。前主の封印を解く為、ダンジョン攻略が必要。ギルドに登録しなければ行動が制限されます』
いや、だから俺は第一の目的は金、第二の目的としてカケルの救出なんだってば。
…………待って!?
それ伝えていいのか!?
だって、アマリアは管理者だろう?
カケルの封印を解くためにとか言ったら、絶対に阻止してくるだろ!?
「確かに、ギルド登録すれば優遇もされるし、いいと思うよ。こちらとしても、ここまで強い魔力を持っている者を野良にしておくのは勿体ない。だから、認めてあげる。追い返す理由がないしね」
「え? 良いの?」
「逆になんで駄目なの?」
「い、いやぁ、ありがとうございます」
よ、余計なことは言わないでおこう。
せっかく簡単に認めてくれたんだから、このままスムーズに進めたい。
「それじゃ、僕は爆発した部屋の後始末申請と、君のギルド登録を認める資料作成しないといけないから行くね」
「あ、少し待って」
「なに?」
腰を浮かせたアマリアの肩を掴み止めると、素直に止まってくれた。
「まだ、話がしたい」
俺の言葉に、アルカとリヒトが目を開く。
アマリアも少し驚いていたが、すぐに浮かした腰を元に戻してくれた。
「まず、この世界ってダンジョン攻略の数だけ上の立場に行けるという認識で合っているのか」
「そうだね。強さが目に見えてわかるから」
「それはギルド内だけ?」
「うん。ダンジョン攻略に行けるのはギルドの人間のみだから、当然なんだけど」
「あ、そうなんだ。俺は行けたけど」
いや、行けたというか、瞬間移動したって感じだな。
目を覚ますとダンジョンだったんだよなぁ。
「転移されてきた君なら、何があっても納得出来るよ」
「へー」
アルカとリヒトも、ここまでの柔軟性を持っていれば頭を悩ませなくていいのに。
「一つ言いたいんだけど、正直ダンジョン攻略はそう簡単じゃない。君の実力は本物だけど、後ろの二人はまだまだ子供。大丈夫?」
「俺達だけじゃないからあ大丈夫だろう、きっと」
「ほかに誰かいるの?」
「うん。出てこい、スピリト」
名前を呼ぶと、静かに顔の近くに姿を現した。
俺の髪に隠れるなよぉ、人見知りだったのか?
「…………精霊持ち?」
お、初めてアマリアが固まった。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




