やっと報酬をもらえると思ったらまさかの最終難関が待ち受けていた
ギルドに戻ると、受付嬢は真剣な表情で手紙を読んでいた。
「あ――」
俺達に気づいたらしい。
「めちゃくちゃ真剣だったが、何かいい条件でも書いてあったか?」
「はい。村長に必要なスキルや知識は、他村の村長が教えてくださるそうです。他にも優遇がありまして……悪くない条件だと思います」
悪くない、か。
確かに、条件は悪くないように聞こえた。
だが、それだけじゃないだろ。
必要なのは、絶対。
「なぁ、報酬は?」
「そこですか?」
そこだろ。
手紙を受け取り、ざっと読む。
教育体制あり。
支援あり。
報酬、かなり良い。
……羨ましい。
受付嬢を見る。
落ち着きすぎている。
「なぁ。なんでそんなに冷静なんだ?」
「あ……。じ、実は、前村長から、次は私にと話をいただいていましたので」
「は?」
「親戚なんです。ですが、まだ未熟だと断っていて……それで、あんな人が村長に」
“あんな人”と呼ばれる始末。
日頃の行いって、大事だよな。
それにしても、ここまで冷静なのには、地盤があったからなのか。
「ここまで来たら、もうやります。何もしないまま諦めるのは、やめました」
拳を握る。
目に迷いはない。
……大丈夫そうだな。
「あ、最後の仕事をしなければ」
「なんだ?」
「貴方達に報酬を」
「喜んで!!」
アルカとリヒトの冷たい視線?
知らん。
・
・
人込み、キツい。
六百万がなければ絶対歩かん。
「大丈夫ですか?」
「俺が大丈夫に見えるなら眼科行け」
「心配しただけなのに……」
「心配するなら六百万をくれ」
「冗談言ってますけど、顔色本当に悪いですよ?」
……え? マジで心配されてるの?
「本気で心配してる?」
「当たり前です」
あー、そうだった。
こいつは、本気で優しい奴だった。
「大丈夫だ」
「でも――」
「冗談だって。ほら、置いていかれるぞ」
前を見ると、アルカ達は俺たちを気にせず普通に進んでる。
この、薄情者。
と、言いたいけど、心配されるのもめんどくさいから薄情くらいがちょうどいいかもしれない。
「はぐれても連絡手段ありますよ?」
「そういう問題じゃない」
「大丈夫です、ゆっくり行きましょう! 私が支えますから!」
……手、握られてる。
「その支え、必要ある?」
「あります!」
満面の笑み。
……まぁ、いいか。
前を見ると、アルカと目が合う。
逸らされた。
…………あれ?
もしかして。
いや、やめろ。
恋愛沙汰は勘弁だ。
過去にストーカー三連コンボ食らった俺だぞ。
冤罪で殴られかけたこともある。
俺は、恋愛に関しては、巻き込まれ体質なんだよ。
「……俺を巻き込むなよ」
「え?」
「なんでもない。行こう」
――手、まだ繋いでるけど大丈夫かこれ。
変なイベント、起きないよな?
「はぁぁぁぁ……」
※
「あの二人、付き合っているのですか?」
「いや、まだだ」
「“まだ”?」
「リヒトは多分自覚してないが、好きだな」
「出会って日が浅いのに?」
「カガミヤは大丈夫だ。俺、人を見る目には自信があるんだ」
「信じがたいのですが……」
「言動が正義でも、行動が伴わなきゃ意味ない。カガミヤは逆だ。口は悪いが、やることはやる。……金が優先なのが少し考え物だけどな」
アルカの言葉に、受付嬢は小さく笑った。
「……そうですね」
※
そこから静かに少し歩くと、受付嬢が立ち止まった。
「着きました。ここです」
木造平屋。
三段階段。
両開き扉。
「ここは?」
「ギルド所属者が報酬を受け取る場所です」
「よし入るぞ」
「顔色良くなりすぎだろ」
「黙れ」
俺は頑張った。
ダンジョン攻略だけのはずが、村長指導までやった。
報酬喜んで何が悪い、六百万を求めて何が悪い!
「では、会員証を出してください」
「…………え?」
「え?」
…………え?
会員証?
俺、持ってないんだが?
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