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俺の報酬を早くくれよ…………

 おっさんの顔付近の壁が、炎魔法で黒く焦げてしまった。


 ――――ちっ、狙いが逸れた。後ろからの叫び声に気を取られた。

 途中で炎の勢いを緩めたから、この程度で済んだのが幸い……か。


 振り向けば、閉め忘れたドアの奥にいるヤンキー二人が俺を見ていた。

 さっきの叫び声は、おそらく馬鹿な方だな。


 二人の表情、村長を大事にしているのが伝わってくる。


「……助かったな、お前」

「っ、な、は?」

「あの二人がいなかったら、俺はもしかするとお前を殺していたかもしれん」


 壁を凹ませてしまったが、いいだろ。

 足を下ろし、頭をガシガシと搔く。


 村長は、俺の後ろにいるヤンキー二人を見て、後悔しているような顔を浮かべ俯いた。


 …………あいつらのことは大事に思っていたんだな。

 人を大事に思える心は、あるんだな。


「上に立つのならまず、村を外の奴らによく見せるのではなく、内側の信頼を勝ち取り、村の人達を大事にしろ。やり方はなんでもいい。明るく声かけるのも、裏で支えてやるのも。それは、村長であるお前が決められる事案だ。せいぜい頑張るんだな」

「…………」


 なにも、反応なし、か。


 俺の言葉は、ちゃんとこいつの耳に届いたのか?

 …………どっちでもいいか。今より少しでも村をマシにしてくれれば俺はどうでもいいわ。


 ――――あ、そういや。

 今は、村の安否より聞かねばならんことがあるんだった。


「なぁ」

「…………なんだ」

「報酬、くれるんだよな?」


 その場にしゃがみ、目線を合わせながら言うと、おっさんが目を丸くした。

 数回瞬きしたかと思うと、急に笑い出す。


 なんだよ、馬鹿にしてんのか。


「わかった。報酬はくれてやろう。正規の報酬――……」

「の、三倍だ」

「…………ん?」

「三倍だ」

「い、いや、二倍…………」

「三倍だ」

「……………………はい」


 よし。やっと、やっと手に入る。

 俺の、報酬!!!


「今、炎の玉で脅してなかったか?」

「気のせいだ」


 おっさんが二倍と言いかけた時、右手に小さい炎を作りチラ見せしただけだ。脅したわけじゃねぇ。


 ひとまず、俺の仕事はここまでだ。


 あぁぁぁぁああ!! つっかれたぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!! 


 なんで報酬をもらう為にここまでやんないといけなかったんだよ。

 ふざけんなよ、なんなんだよ。簡単にもらえるようにしろよ。


 いや、普通はギルドから簡単にもらえるのか。

 今回の事態が異常だっただけで。


「はぁぁぁぁぁあああ…………。腰が痛い、肩凝った、目が霞む」

「その発言、俺のじーちゃんが言ってっ――……」

「それ以上言ってみろ、おめぇの鼻が曲がるぞ」

「|ふひはへんれひた《すみませんでした》」


 アルカの鼻を摘み、黙らせる。


 自分でおっさんと言うのはいい。だが、お前が言うのは駄目だ。

 俺はまだ二十代。後半だろうと二十代だ、反論は認めない。


 俺とアルカが戯れていると、おっさんがまだ微かに震えている声で質問してきた。


「ぬしは、何者だ」

「違う世界から転移してきた、二十代の一般ピーポーです」

「んな訳なかろう」


 本当のことを言うと、おっさんに呆れられた。なんでだよ。


「おい」

「なんだ」

「わしは、やり直せるのか? やり直しても良いのか?」


 …………へぇ、なるほど

 流石に、今回のは効いたらしいな。

 ここまで変わるとは思っていなかったが、いい傾向だ。


 だが、だがな?

 それを俺に聞いてどうする。


「やり直したいと少しでも思うのなら、思うがままにやればいい。俺は知らん」

「…………わかった、これから頑張るとする。それより、後ろに転がされている二人を、もうそろそろ解放してはくれないか?」


 あぁ、そういえば、縄でぐるぐる巻きにしていたんだったか。


「はぁ…………、わかったわかった」


 ぐるぐる巻きにされているヤンキー二人に近付いて行くと、リヒトが走って来るのが見えた。


「カガミヤさん!」

「おっ、来たのか?」


 リヒトが不安そうに俺達を見回すが、事態はいい方向に収まったと言ったら安心したらしい。


 その後は二人を解放してあげ、村長から報酬をもらい帰宅しようと村長の家から外に出た。


 もう、問題はないだろうしな。


「最後に良いか、転移者よ」

「…………なんだよ、聞くなら一回にまとめやがれ。めんどくさいな」

「またわしが何かすれば、そなたが出て来るのか?」

「もしやお前、反省してないな?」


 その言い方だと、俺が怖いから従うように聞こえるぞ。


「いや、反省はしている。もう、ぬしと関わり合いたくない」

「それ、本当に反省してんのか? 俺がいなかったら、また自由にやるつもりじゃないだろうな」

「そんなことはしない。もう、あいつらを危険な目に合わせたくはないからな」


 村長の目は、ヤンキー二人に向けられている。

 そうか、こいつもやっとわかったのか。大事な奴が危険に晒される恐怖と、怒りを。


「…………お前は、今まで色んな人から大事なもんを奪ってきた。俺があいつらを殺しても、お前に文句を言う資格はない。そんな立場に、お前はいる」

「わかっておる」


 後悔はしているみたいだな、それなら良かった。



 この後、俺達は今度こそ三人揃ってギルドへと戻った。


 もう、村長は大丈夫だろう。

 なにより、報酬をもらったから俺がここに居る理由はもうない。


 さてさて、今日はこの後報酬を眺め、ゆっくりと体を休めようか。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 村長さんがなかなか心を入れ替えたり考えたを改めたりしなさそうだと思っていましたが、ヤンキー二人のおかげで(?)村長さんなりに考えるきっかけになったのかな(´・ω・) ここで村長さんを殺して…
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