命は、そう簡単にきえねぇんだよ
話を早く進めたくて単刀直入に聞いたら、アルカの声が鼓膜を破った。
いや、破る一歩手前でした。
あー、耳が痛い。
「な、なんだと? 金?」
「そうだ。ダンジョンを攻略したんだ、それ相応の報酬をもらう権利がこっちにはある」
「ダンジョン攻略をしたのは嘘だろ。お前らのような雑魚がダンジョン攻略など出来るはずがない」
…………へぇ、出来るはずがない、ねぇ……。
へぇー、なるほど。
「なぜ、嘘だと言い切れる?」
「Bランクのお前らがSランクのダンジョンを攻略など無理な話。現実を見るがいい」
ビビっていたおっさんが、いきなり勝ち誇ったように高笑いをし始めた。
気持悪いの感情しか出てこない。
「現実しか見てないから安心してくれ。逆に、現実を見れていないのはお前だろ」
「なに? どういうことだ」
ここからが、本当の勝負だな。
「なぁ、いつ、俺達がSランクダンジョンを攻略したと言った? お前はここのギルドから発注されるダンジョンを全て頭の中に入れているのか? それならすごい記憶力だ。だが、さすがに信じられんから、証明に今日発注されたダンジョンをすべて教えてもらえるか?」
「は? い、いや、そういう訳では…………」
焦り始めた。
自分の失言に気づいたらしいな。
「なら、なんだ。なんでお前は、Bランクのこいつらが、Sランクのダンジョンに入れ込まれたことを知っている」
「ほ、報告があったからだ」
「ほう。報告があったということは、お前はその発注を容認したんだな? 間違いで送り込んだと俺は聞いていたんだがなぁ。すこーしばかり、おかしくないか?」
「し、仕方がないだろ。報告が来たのが遅かったんだ」
嘘を吐けば吐く程、穴は広がる。
もう、お前は、言い逃れなど出来やしない。
「遅かったからと大事な村人が間違えて、死ぬかもしれないダンジョンに送り込まれたのを容認したのか?」
「間違えたのは仕方なかろう……」
「お前は間違いが何回も起こっているのに改善も何もしなかったと? 人間以下の微生物だな。いや、微生物に失礼だ。この、微生物以下の下等生物が」
「なんだと…………?」
おっさんに近付くと、慌てた様子で制止して来た。
「それ以上近づいたら、どうなるかわかっておろうな」
「わからん。だから、近づく」
再度歩みを進めると、おっさんはなぜか後退。逃げるように下がる。
「なぁ、間違いが何度も起こっているのに見て見ぬふりをするのは村長のやることか? 俺は何度も言っているが、こいつらは死んでいたかもしれねぇんだぞ。それがわかっても、お前は何もせず傍観。それは村長のやることか?」
おっさんは顔面蒼白、背中を壁にぶつけ逃げられなくなり、黙って見上げて来た。
「なぁ、お前は村人の一人死んでもいいとか思ってんだろ? なら、村長一人死んでも問題ないよなぁ? 村長だろうが、この村に住んでいる”村人”なのには変わりない」
「な、何を言っている……。わしは村長だぞ、この村で一番偉いんだ。お前のような者が殺してもいい存在ではない」
まだ、言うか。
これは、少々痛い目を見てもらわんといかんな。
ポケットに手を入れたまま、足を振り上げた。
「なっ――」
――――ドカン!!
「…………あ、あぁ」
おっさんの顔付近には、大きな穴が壁に出来た。
「…………村長だからと、何をしても良い訳じゃねぇ。村長だからと、権力を振りかざしても良い訳じゃねぇ。村長だからこそ、村人を一番に考え、支えてあげ、認められる存在になるんだよ。恐怖心で支配されている者達が、お前に本当の忠誠心は向けない」
歯をガタガタと震わせ、見上げてくる。
そんな顔を浮かべたところで、俺の気持ちは変わらん。
そもそも、上に立つ者の思考じゃねぇんだよ、今のこいつ。
「人の命を簡単に捕らえるな、そんなに安いもんじゃねぇ。人間の命は簡単に亡くなっちまう。でも、残された人の心には残り続けるんだ。だから、人の命は儚く、重たいんだ」
――――俺の記憶の片隅にも残っている。
何も思っていなかったにしろ、どんな相手だったにしろ。
命が散った事実は、頭の片隅に残り続ける。
どんなに悪い奴でも、関わっていなかったとしても。
名前を知り、頭に少しでも刻まれてしまえば、もう完全には消えない。
「だが、お前はどうだろうな。村人の中に記憶として残るのか。それとも、忘れられるのか。試してみる価値はありそうだな」
「な、何をするつもりだ…………」
「安心しろ、痛みを感じることなく、気持ちの良い場所に送り届けてやるよ。地獄と言う名の、お前にとって心地の良さそうな場所にな。漏らすんじゃねぇぞ、くそじじぃ」
野球ボールくらいはある炎の玉を右手に作り出し、足で逃げ道を封じる。
いまだに体を震わせ、鼻水や涙を流し助けを求めて来た。
「今までの自身の行いを悔い、あの世で後悔しな」
右手を前の出し、炎を食らわせ――……
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!」
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