精霊って本当に珍しいんだな
「これが、この村に隠された真相だ」
「なるほどな」
胸糞悪い話だな。
「だから、俺は絶対にダンジョンを攻略して、この村を改変したいんだ」
「改変自体は攻略しなくても出来そうだけどな」
「え? それはどうやって…………」
「村長を殺そう」
「絶対駄目だからな!? なに言ってんの!?」
当たり前のように言うと、何故かアルカが止めて来た。
現状、俺より怒りが募っているのはアルカのはずなのに、なぜ止める。
まぁ、後始末とかがめんどくさいから流石に殺しまではしないけど。
「ひとまず、順番をしっかりとしなければ相手の言葉に負ける。権力はどんな言葉、魔法よりも強いからな」
すべてが作戦通りにはいかんだろうし、後はその場で考えようか。
※
村の奥の奥へと向かうと、どんどん人はいなくなる。
建物も少なくなっていき、空気が冷たく感じる。
地面が乾き、枯れ木が並んでいた。
「活気があると見せつけていた村の奥は、寂れてんな」
ギルドから出て、もう二十分以上経っている。
まだ建物すら見えてこないのは、さすがに遠くないか? 疲れてきたんだが……。
「まだ付かないのか?」
「あともう少し、ほら。見えてきただろ」
アルカの指さす方を見ると、建物の屋根っぽいのが見えてきた。
何もない所にポツンと建っているからわかりやすい。
もう少し近づくと、建物の全体が見えてきた。
木製の大きな家。屋根は藁ででき、出入り口の前には三段の階段。
なんか、ポツンと建っているから変な感じ。
嫌われているのがめっちゃわかるんだけど。
「本当にここなのか?」
「間違いないぞ。前村長がここで何度か人を集めて宴会とかしていたんだ。建物は何もせず、そのまま引き継いだはず」
へぇ、そうなのか。
でも、おかしくないか?
「前村長は人気者だったんじゃないのか? こんな寂れた場所で生活していたのか?」
「普段は静かに過ごしたい人だったらしく、自らここに建てたんだとよ」
「ふーん」
まぁ、それは今回の件には関係ないから、いいわ。
「今の村長は、こんな寂れた所は気に食わないと騒いでいるみたいだけどな」
「だろーな。お前の話しか聞いていないが、プライドが天にまで届きそうな程に高いのは安易に分かる」
建物から少し離れたところまで来たが、人の気配を感じない。
留守か?? まぁ、もっと近づけばわかるか。
「んじゃ、行くか」
意気揚々と足を踏み出し、建物に近付いてみる。
――――カチッ
…………ん? カチッ??
一歩踏み出した足元から、なにやら怪しい音が聞こえた。
「あれ、なにこれ」
下を恐る恐る見ると俺が踏んでいる地面に、さっきまではなかったはずの魔法陣が現れた。
円の中に丸太のような絵が描かれている魔法陣、これは?
疑問に思っていると、アルカが目を見開き大きな声を上げた。
「これ、トラップ魔法だ!!!」
アルカの叫び声と共に、俺達を囲うように大量の丸太が迫ってきたー!?
※
村長の建物の中には老人二人と、知里達が話していたモヒカン二人が座っていた。
フローリングの上に絨毯が敷かれ、大の大人が三人いても余裕で余るほどの広さはある。
壁側には小さな本棚が置かれ、奥には布団が畳まれていた。
そんな部屋の中心には、七十代位の老人が肘置きに寄りかかり本を読んでいた。
静かな空間が続いていた時、壁側に座っていたモヒカンヤンキーが目を開け老人を見た。
「村長」
「どうした、何かあったか?」
村長と呼ばれた老人が、男性の声に目線だけを向ける。
「外に仕掛けていたトラップ魔法が発動しました。侵入者です」
「ほぉ、なるほど。だが、あのトラップ魔法で引き返しただろう。それか、死んでしまったか」
顔をあげ、楽し気に高笑い。
顔に深い皺が刻まれ、垂れている目は不気味に歪む。
「いかがいたしますか」
「一応、確認だけはしておけ。もういないと思うがな」
「了解」
村長の言葉を最後に、ヤンキー二人は顔を上げ返事をした。
立ち上がると両開きの扉を開き、部屋の外へと姿を消した。
残された村長は目を細め、扉を見続ける。
「…………ふーむ。何やら、胸騒ぎがするのぉ。良からぬことが近づいているような気がする。警戒だけはしておくか」
※
アルカが叫ぶのと同時に、全方位から俺達に向かって複数の丸太がぶっ飛んできただとぉぉお!?
「flame!!」
駄目だ、全方位攻撃からだと間に合わない!!
『ご主人様!!!』
――――ゴォォォオオオオオオ!!
っ、スピリトが飛び出し、炎の竜巻で全ての丸太を焼き尽くしてくれた。
う、うわぁ。これが、精霊の力。
空高くまで炎の竜巻が上っている。
い、一瞬のうちにいろんなことがあり過ぎて、唖然としてしまった。
「大丈夫か、カガミヤ」
「死んだ」
「死んでないじゃん。怪我もないみたいで良かった」
気持ち的に死んだんだよ、マジで今回は死ぬかと思った。
スピリトが居なかったら無傷ではなかったな。
『ご主人様?』
スピリトが俺の顔を覗き込んでくる。
「いや、助かったぞ、スピリト」
『良かったです!!』
少し褒めただけで満面な笑みか。
なんか、周りに純粋な奴らが集まって俺が浄化されそう。
そんな阿保なことを考えていたら、叫び声が聞こえた。
「お前らがこれをやったのかぁぁあぁぁああ!!!」
叫び声が聞こえた方を見ると、そこには馬鹿な方のヤンキーが驚愕の表情を浮かべて俺達を指さしていた。
「現状を見るに、貴方達がトラップ魔法を跳ね返したのでしょうか?」
後から冷静ヤンキーも現れ、周りを見ながら分析していた。
「みたい、物理的に」
「どうやって……。そう簡単に切り抜けられるほど甘いトラップではなかったはず」
サングラス越しだから目元は見えないし、口元もマスクで隠している。
それでもわかるほどの驚きっぷりだ。
こいつらの反応からして、今まで切り抜けた人はいなかったんだろう。
俺もギリギリだったし、スピリトがいなければタダでは済まなかった。
「安心しろ、俺じゃなければ危なかった。このトラップは使えるな」
すり寄ってくるスピリトの頭を指で撫で、肩に乗せる。
このくらいはしてやらないとな、助けてもらったし。
「まさか、あんたにそんな力があったなんて………ん? それは……」
冷静ヤンキーが俺の肩辺りを指さしてきた。
スピリトが気になるのか?
「まさか、精霊か?」
え、なに。さっきより何倍も驚いてない?
大丈夫? サングラスがずり落ちてますよ?
確かに精霊は希少らしいけど、そこまでなのか?
いや、驚くか。
俺もいきなり目の前にツチノコが現れたら驚くもん。
「なぜ、精霊を持っている。どこで手に入れた!!」
「え、どこでと言われましても……。おめぇらがアルカ達を行かせたんだろ? あの、Sランクのダンジョンに」
言葉を失ったヤンキー二人は、お互いに顔を見合せ、頷きあったあと何を思ったのか。腰に巻いていたホルスターから一丁の拳銃を取り出した。
「……………………え?」
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