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隠された村の真相

 テーブルの上にある野菜サンドを口の中に入れると、シャクシャクと新鮮な音が鳴る。

  

 作り立て? 野菜、新鮮だなぁ、普通に美味い。

 最後の一口を頬張り、呑み込む。

 これだけでもう満足だな。


 珈琲の香りも鼻をくすぐり、気持ちが落ち着く。

 飲みやすい温度だし、最高の朝だ。


「朝食を楽しむのは良いが、早くこれからを考えようぜ?」

「今の時間くらいは楽しませてくれよ。これからめんどくさいことを起こしに行くんだから」


 俺の様子に呆れているアルカの隣では、リヒトと元受付嬢と楽しそうに何気ない会話をしていた。


 いや、元受付嬢は無理に笑ってんな。

 リヒトもそれに気づいているけどあえて楽しく、くだらない話をしている。


 全員がサンドイッチを食べ終えたところを見計らい、話している二人に声をかけるか。


「おい」

「は、はい」


 二人は慌てた様子で俺を見た。


「これから村長に直談判しに行こうと思っているんだが、居場所しってっか?」

「…………やっぱり、行くんですね」

「行かねぇとお前もやばいだろ」

「うっ。す、すいません。お願いします」

「へいへい」


 努力はするから、早く村長の居場所を教えてくれ。


「村長の家なら俺も知っているぞ」

「アルカも知っているのか。なら、案内をお願いできるか?」

「おう!!」


 アルカがすぐに立ちあがった。

 もっとゆっくりしていたかったが早く終わらせたいし、俺も行くか。


 リヒトも立ちあがると受付嬢が途端に泣きそうな顔を浮かべた。

 一人だと心細いか。


「リヒト、こいつと一緒にいてやれ」

「え、で、でも」

「同性同士の方が安心するだろ。交渉くらいなら俺とアルカで十分だしな」


 リヒトは受付嬢の様子を見て、素直に頷いた。


「わかりました」

「おう」


 ドアを開けると、リヒトに名前を呼ばれた。


「カガミヤさん」

「なんだ?」

「信じています」


 振り向くと、柔和な笑みを浮かべているリヒトが俺を見ていた。

 …………むず痒い。


「…………へいへい」


 頭を掻き、このむず痒い感覚を払う。

 そのまま何も言わずに、アルカと共に廊下へと出た。


 ※


 ギルドの外に出ると、またしても人、人、人。もう、死にたい。

 

 目の前の光景に絶望していることなどお構いなしに、アルカが「早く行こうぜ」と言ってきた。

 もっと、俺を心配しろよ。


 町を歩き始めること、数分。気温が上がり、熱くなってきた。

 スーツのジャケットは脱いできても良かったかもな。


 首元から空気を取り入れようとパタパタ動かしながら周りを見るが、何度見ても人まみれ。店の勧誘の声が飛び交い、活気が凄い。


「無理やり動かされているとはいえ、このままでもいいんじゃねぇの?」

「見た目だけなら明るくて楽しい村だよ、ここ。でも、違うんだ」

「何が違うんだよ」


 聞くと、アルカは顔を俯かせてしまった。

 怒っているのか悲しんでいるのかわからない表情。


 こいつは一体、何を抱えている。


「…………これは、俺がなんでギルドに所属したのかの話になるんだが――――」


 え、そんなところから始まるの? 

 眠らないようにしないと駄目じゃん。手短にお願いします。


 ※


 俺がまだ餓鬼の時、兄と両親が沢山遊んでくれたんだ。


 兄は体が弱くて、ベットで横になっていることが多かった。

 それでも俺に心配かけないように優しく笑ってくれて、俺はその笑顔が好きだった。


 母親とは一緒に買い物に行ったり、父親とは仕事の手伝いをして、凄く楽しかった。


 その時はまだ前村長がいて、今みたいに歪んではいなかったんだよ。


 前村長は誰にでも笑いかけ、優しく接していた。

 俺も何度か声をかけてもらい、話したことがあった。


 愛嬌があり、大きく、しっかりとした手で頭を撫でられるの好きだったんだ。


 村のみんなも村長が大好きで、村長のために活気のある村へと、みんなで力を合わせここまで大きくさせたんだ。


 でも、幸せは長く続かない。


 前村長が病によって倒れてしまった。

 いい歳だったのもあり、それはもうあっさりと逝ってしまったんだ。

 その時は村のみんなが悲しみ、涙で溢れていた。


 前村長の通夜の時、村の人達で村長について話していた。


 楽しい思い出話などに花を咲かせ、惜しむように周りの人と前村長について話している。そんな光景を俺は、外から見ていた。


 深く関わっていなかったにしろ、優しく笑いかけてくれた人がいないとなると、心に大きな穴が空いたような感覚があった。


 心臓が締め付けられるような感覚があり、苦しくもあった。


 その時、通夜に使っていた前村長の家の外から、大きな足音が聞こえ始め周りの人達は口を止める。


 そこには、現村長がニマニマと。

 気持ちの悪い笑顔を浮かべ立っていたんだ。


『やっと死んだか。これで、この村は俺のもんだ』


 当時の俺は、その言葉の意味を理解出来なかった。


 それからが地獄の始まり。

 両親は無理やり外に駆り出され、朝から晩まで働かされた。


 体が弱い兄は家で出来る仕事を無理やり頼まれ、胸を押さえながらも毎日やっていたんだ。


 やらなくてもいいと思っていたが、やらなければお金はもらえず、生活が出来なくなると言われていた。

 まだ子供の俺も外で雑用をやらされた。


 周りを見てみると、村の人達も同じ目に合わされているらしく、苦痛の表情を浮かべていたんだ。


 でも、その表情を浮かべることさえ許されず、笑顔で過ごさなければ減給。

 何かを言えば、ただ働き。


 だから、誰も何も言えず、ただ心のない笑顔だけが満ち溢れた村になってしまった。


 そんな日常が続く訳もなく、兄は心労で病気が悪化してしまった。


 動けなくなった兄はさすがに休み、給料の半額分は支給された。

 けど、今までの無茶が体に蓄積されており、瞬く間に亡くなってしまった。


 両親は兄が死んでしまったことで心が折れ、自殺。


 残された俺は何も考えられず、両親と同じことをすればまた家族に会えると思って、親の首に巻かれているロープを握った。


 その時、間一髪で村の人に見つかり、止められて俺だけが生き残ってしまった。


 何をすればいいのかわからないまま生活していると、ギルドの話を聞いたんだ。


 この村にもギルドがあり、ダンジョン攻略し続ければ上の立場に立てることを耳にした。

 もしかしたら村を改変できると思い、俺は入団を決意したんだ。


 ギルドでリヒトと出会い、二人で何とかダンジョン攻略をして来た。


 二人でギルド付近を歩いていると、村を見回っている村長が俺を見つけて、声をかけてきたんだ。


『お前は、あのくそも役に立たなかった親と、体が弱くすぐに力尽きた兄の弟か。そんな甘ちゃんな奴らに囲まれながら育った奴が、ギルドに所属できたとはなぁ。まぁいい、今後も俺の為に頑張ってくれや。俺の名前を世に知らしめる手伝いをしてもらおう」


 肩に手を置かれた時、嫌悪と憎悪が沸き上がった。


 体が勝手に動き、何も考えられず拳を握る。

 次の瞬間に村長は、頬を腫らし鼻血を垂らしながら地面で気絶していた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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