エピローグ
戦いが終わった後の太平洋には、再び静けさが戻っていた。時折、波の音が僅かに聞こえてくる。俳人でもいれば、一句出来てしまいそうな静けさだ。
突然海面に、巨大な飛沫が上がった。飛沫はすぐに海に戻っていった。数秒経ってから、再び飛沫が上がった。それからまたひとつ、またひとつと、大きな飛沫が上がる。
デスジラスの残骸だった。砕け散ったデスジラスの肉片や機械部品が、海面に墜落していたのだ。雨のように降り注ぐ残骸が、そこら中で水飛沫を上げている。
デスジラスの頭部が落ちてきた。他と同じく海面に激突し、盛大な飛沫を上げた後、ゆっくりと海中に沈んでいった。海中に入ってきた巨大な物体を、魚たちは遠巻きにした。時折立ち上ってくる気泡にぶつかりながら、デスジラスの頭部は、深遠の闇の中へと沈んでいった。
それが海底にたどり着いたのは、それから間も無くだった。鋼の装甲で覆われた巨大な頭部が、ゆっくりと砂地に横たわった。
何も、動くものは無い。ほとんど、何も見えない。静寂の広がる海底は、そこに満ちる暗黒によって支配されていた。
一瞬にして支配は破られた。”雷”がほとばしったのだ。そうとしか形容できないような、すさまじい閃光だった。海底の砂地が一瞬のうちに照らし出され、そこにいた魚類や甲殻類が、慌てて砂の中に潜り込み、逃げていった。
しばらくして閃光が消えた。
そこにもう、あの巨大な頭部は存在していなかった。
逃げた生物たちが、恐る恐るその場所に戻ってきた。巨大な障害物が消えてしまい、甲殻類同士は縄張り争いを再会し、魚類は再びプランクトンを追い始めた。
暗黒の海底に、不気味な静けさが広がった。




