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両利きのテニス初心者だけど、気づいたら美少女参謀とプロを目指してた  作者: 二刀
第3章 相模テニストーナメント編

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37/43

第34球 決勝②「自分自身の力」


=== 千両利士 ===


 第一セット。


試合が始まってすぐに分かった。源さんは噂どおり、いや、噂以上の選手だった。


フラットの速球がベースラインの深くに何度も突き刺さる。フラットは回転を抑えた鋭い球。


直線的な球筋だから面を抑えてコントロールしておかないとアウトになりやすい。けれど源さんのショットはどこを突いてもしっかり返ってくる。ボールコントロールと粘りが桁違いだった。


俺は両手フォアで左右に振られても追いつく。トップスピンで深く押し込む。甘い球にはショートクロス。持っているものを全部、使ってなんとか、源さんに食らいついていく。


第一ゲーム、お互いのサービスを、キープ。第二ゲームも、キープ。第三、第四。一ゲームも、譲り合わない。


気づけばゲームカウント<4-4>


ハァ、ハァ、くそっ、源さん、すっごくしつこい。


どこのコースを狙っても粘り強くボールを返してくる。しかも、少しでも返球が甘くなればすかさず、コースを変えてウィナーを狙ってくる。


ベースライナーでしかもカウンターも得意なのかよ。速球を速球で返されたら息をつく暇もない。


ここまでお互いサーブゲームをキープしてる。このままじゃタイブレークになる。できればその前になんとかブレイクしたい。


このサーブゲームを取って次をブレイクしないと。——フゥ、集中。


トスを上げる。膝を曲げ、体をしならせ、解放ッッ!


ズバンッッ!



=== 源烈 ===


——フゥ、千両、こいつやりやがる。


両手フォアだけを武器にしてここまで来たかと思っていたが違った。


他も練習して自分の武器を伸ばしている。


トップスピンで深く沈めてくる。かと思えば鋭いショートクロスで角度をつけて狙ってくる。


サーブもなかなか早い。気を抜くとすぐにエースを取られそうだ。


ほんと千両、なかなかやるな、こいつ、これで初心者だってのか!


——しかも千両を見てると、なんでか、俺が野球をやってた頃を思い出しちまう。


もう思い出したくないってのによ!





中学二年の頃、俺は元シニアの、そこそこ有名選手だった。地元じゃ有名で、やっぱりそこそこ名前の知られたチーム。その四番バッターだった。


チームが強く、有名になってきた。それで目をつけたんだろう、別のチームを見ていたらしい有名コーチが就任した。


これからもっと強くなれる、チーム全員が賑わった。俺も、そう思っていた。


でもその有名コーチが一人、新しいメンバ―を連れ来た。


——調子物で、大した実力はなかった。けれどコーチや監督の受けは良かった。大人に取り入るのが上手かったんだろう。


……結局、そいつに四番を奪われた。


冗談じゃない。点を取ってきたのは俺だ。俺が打ってきたから勝ち上がってきた。自分が四番のほうがチームに貢献できる、と何度も何度も監督に訴えた。


でも取り合ってもらえなかった。それどころか、逆に難癖をつけられた。


お前は、チームの和を乱してる、と。


……は? どういうことだよ。なんでだよ。実力で勝ち取った場所をコネで奪われて、文句を言ったら和を乱す、だと。


反抗も虚しく、俺は理不尽にチームから追い出された。


……もう、チームプレーにうんざりだ。


それから個人で活躍できる場所を探した。そして、テニスを知った。


テニスは自分自身の力で勝ち抜ける。誰にも頼らない。誰のコネも、空気も関係ない。


コート上で、強いヤツが勝つ。それだけだ。自分だけが強さの証だ。


監督も、コーチも、チームメイトも必要ない。そして俺は一人でここまで来たんだ。





テニスを始めて二年半、ようやく決勝まで来た。


ここを勝ち上がって、全国に出て、そして俺はプロになるんだ。誰の力もかりず自分一人の力で。


千両は同じ野球出身だという。


こいつは面白いヤツだ。三か月でここまで、決勝まで来ただと。ほんととんでもない新人だな。


プレースタイルもなんだか少し似てるような気がする。こいつとのラリーは楽しい。滅多にいない本気でぶつかれる相手だ。


カウント<30-30>


ラリーが続く。一瞬も気を抜けないな。


——ここが正念場だな、ゲームは<4-4>。ここで俺がブレイクできれば次はおれのサーブ。一気に形勢が傾く。


あいつも同じことを考えてるはずだ。つまりここはお互い全部出し合って、強い方が勝つ。


つまり、まだ未完成で成功率は高くないが……、ここで()()を出すしかないってことだ。


ラァッッ!! ドパッッ!



=== 千両利士 ===


「おおおーーーッッ」

「スゲェーーー」

「なんか、さらにストロークのスピードがあがらなかったか……?」


ゲーム<4-4> カウント<30-40>


なんだ……、急に源さんのストロークが前のめりになり始めた。


そのせいで、ただでさえ速い源さんのストロークがもう一段、スピードが増した気がした。


くそっ、ここは取られるわけにはいかない。ここを取られると次は源さんのサービスゲームだ。


……セカンドサーブ、センターでッ!! ドッッ。


ドカンッッ!!?


「わーーーーーー」

「おいおい、リターンエースだーーー!」

「ここにきて、マジハンパねー」

「源ぉーーーかっこいいぞーー」

「ブレイクだーーー」


「ゲーム<4-5> コートチェンジ」


審判がコールをする。


はぁ、はぁ……。やられた。


俺はさっきの……源さんのショットを考えていた。


たぶん待ち構えてたんだ。次のセンターにきたら、もう一度()()をするって。


俺は自分のサーブにリターンエースをとられた経験があった。


二ノ宮、二ノ宮優斗君。


藤ヶ谷オープンジュニア。なすすべ無く負けてしまったあの試合。


二ノ宮君がギアを上げて、俺のサーブからリターンエースを取った。


これは…、たぶんライジングショットだ——。



【作者あとがき】

 スプリットステップはとてもタイミングが難しいです。

 あれを簡単に使いこなせるテニヌの人たちがすごいんです。

 引き続きよろしくお願いします。



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