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両利きのテニス初心者だけど、気づいたら美少女参謀とプロを目指してた  作者: 二刀
第2章 テニス雌伏編

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22/43

第20球 鍛錬の日々


 ピピピ、ピピピ。目覚ましの音で目を覚ます。まだ外は薄暗い。


 ……ふわぁ。正直まだ眠いが体が慣れた。ジャージに着替えて、顔を洗って寝癖を直して家を出る。

 

 五キロほど走った。最初の頃はこれだけで膝が笑ってたけど今はもう平気だ。

 走り終えて家に帰って軽くシャワーを浴び、支度をして学校に向かった。

 

 毎朝のランニングを含めたこのルーティンはもう日課になっていた。


 *


 学校に着いたら、朝練だ。

 

 まだ誰もいないコートで、ボールを手早く準備した。ランニングで準備運動は済んでいる。

 コーンをおいてからサーブを打つ。それから自動球出し機をセットし、ストローク練習。

 

 もちろん記録は取る。何本入ったか、どんな感触だったかとかも。

 藤崎に言われてからはただ打つだけじゃなく、振り返ることを意識するようになった。


 打ちっぱなしにせず一本一本の意味を考える。

 いわく、「練習は、量も大事だけど、振り返りがもっと大事」らしい。


 前の俺ならこんなこと考えもしなかっただろうな。


 *


 授業もちゃんと受けた。

 テニスばっかりやってると思われそうだけど、勉強だって手は抜かないようにする。聖蹊はもともと進学校だしな。

 

 ……まぁ正直に言うと朝早く起きてるぶん眠い。三時間目あたりで意識が飛びかける。

 そして途中で腹が減ってこっそりおにぎりをはむったりもする。昼休みまでなんとか我慢だ。


 *


 放課後。

 藤崎と、栗原さんと一緒に、部活に向かう。


「きっしん、今日も朝走ってきたの? よくやるっすねぇ」

 

「おう。もう走らないと逆に気持ち悪いんだよな」

 

「うわ、完全に沼にハマってるじゃないっすか」


 栗原さんは相変わらず気さくだ。同じクラスだし最近はよく話すようになった。

 この前の藤ヶ谷オープンジュニアではベスト4まで行ったらしい。すごいな。

 

 でコートに着いたら――いよいよ地獄の「基礎」トレーニングが始まる。


 *


 基礎トレと言ってもただの腕立てや腹筋じゃない。やることが山ほどあることが地獄なんだ。


 まずは体幹の強化。

 テニスって腕の力だけで打つもんだと思ってたけど、全然違った。


 体全体を使って場面に応じたストロークを打つ。そのために体の軸がしっかりしてないとダメなんだそうだ。

 プランクとか、インナーマッスルを鍛えるやつをひたすらやる。地味なのにめちゃくちゃキツい。


 次に下半身の強化。

 正しい姿勢でゆっくりスクワット。これが……また……効く。終わる頃には太ももが産まれたて小鹿のようにぷるぷる震えていた。


 それからスイングスピードを上げる訓練。

 ゴムチューブを、瞬間的に、思い切り引っ張る! ……スイングが速ければ速いほど回転がかかるからだ。

 

 有名なトッププロのスイングスピードは、120~145km/h、平均回転速度は4,900rpmとかわけのわからない数値を生み出すそうだ。

 おれはまだ1300rpm……。これからこれから。今はその速さを生む筋肉を鍛える。


 ストローク速度を上げる訓練もある。

 重いゴムボールを腰の回転だけで遠くに思い切り投げる。腰の回転運動が重くて速いストロークを生み出すそうだ。

 あんまりやると腰を痛める事もあるからちょっと注意がいる練習だ。


 *


 走力トレーニングも欠かせない。

 ただ長く走るんじゃなくて、運動と休息を繰り返す「インターバルトレーニング」のほうが、テニスには効くらしい。

 

 左右に何度も全力ダッシュ。それからシャトルランを連続でした。

 テニスのラリーの平均的な運動時間と、ポイント間の休憩。それを想定して負荷をかける。できるだけ疲労がたまりにくい体を作ることが目的だそうだ。

 

 このシャトルランもちゃんとデータとして記録される。速さじゃなくて、どれだけやったかの記録だけど。


 毎日やってる感が数字で見えると、不思議とモチベーションが下がらない。……見える化って大事だな。

 藤崎の言ってたことが理にかなっていることが分かる。


 最後にフットワークのトレーニング。

 テニスのフットワークって意外と重要なんだ、これが。ちゃんとステップを踏まないと打点が合わない。

 

 しかもただ合わせるだけじゃなくて、狙いに応じて変えなきゃいけない。


 チャンスボールは、高い打点で叩きたいから、それに合った足運び。相手の低く滑るスライスには、腰を落として、低い打点を保つ足運び。

 

 さっきの走力トレが「疲れない体」を作るためなら、こっちは「素早く、正確に、打つ体勢に入る」ためのやつだ。

 もつれてコケる、なんてカッコ悪いことはしたくないからな。


 これはラダーっていう、はしご状の道具を使うのが基本。足をスムーズに動かすための、ストレッチも欠かさない。


 *


 ……で。

 ここまでやってようやくボールを使った練習ができる。


 全部こなすと結構な時間が経ってる。正直もうへとへとだ。

 でもボールを打たないなんて選択肢はない。むしろここからが本番だ。

 

 聖蹊は女子の学生寮がある。テニス部にも寮生がいて、遅くまで練習に付き合ってくれる子がいる。本当に助かってる。


 やる練習は、藤崎が組んでくれたメニューだ。

 サーブ、ストローク、トップスピン、スライス。最近、回転数やサーブの速度、ストローク速度が目に見えて上がってる気がする。基礎トレが効いてきている証拠だ。


 例のコース打ち分け練習も進化した。九分割だったコートが、十八分割になった。

 市川さんの要求がどんどんえげつなくなる。……この部、厳しい女子しかいないんだが(白目)。


 サーブの訓練。

 藤崎が言うにはトスを上げてから、テイクバックに入る。この一瞬の静止した姿勢を「トロフィーポーズ」って呼ぶらしい。

 ……トロフィーポーズ、すごい名前だ。優勝カップ持ってるみたいだからか?


 そんでもってこのサーブってやつが奥が深い。

 下半身と上半身のひねり、膝のバネ、広背筋、腕のしなり。体のいろんなところを連動させて、初めて威力のあるサーブが打てる。

 うまく噛み合うとサーブの速度がぐっと上がった。これは素直に楽しい。


 しかもサポートチームの子が逐一フォームのデータを取ってくれてる。

 フォームが間違ってたらすぐ直せるのは嬉しい。一人でやってたら変な癖がついてたかもしれない。


 最近は、ネットプレーの練習も始まった。

 ネットプレーはこれまであんまりやってこなかった。でもシングルスはどんな状況も想定しておかないといけない。

 

 藤ヶ谷オープンの田中君もネットに出てきた。二ノ宮君にも前で決められた。だから自分も覚える必要がある。


「ほ、ほら~、こうやって構えて、相手の打つタイミング、方向をよく見るんだよ——」

 

 ネットプレーにはボレーと、スマッシュ、足元や、正面に来たボール、色々なかたちがある。

 これは、むぎ先輩――大塚紬先輩が、すごく親身に教えてくれる。ネット前の先輩はマジで動きが素早い。

 教え方もうまくて、かなり参考になる。


「うらうらー、そんなへっぴり腰じゃ、私の球は返せないぞー。しっかり立てぇーい!!」

 

 逆にかぐら先輩――神楽恵先輩は、ボレー練習の球出しをしてくれるんだけど、これが……また本気のストロークを打ってくる。

 

 いやほんと怖いんだよ。長身からの高い打点のジャンプショット。何度受けても慣れない。


「お、今のはいいボレーじゃん、やるじゃん」


 でもおかげで――かぐら先輩より遅いボールはだいぶ平気になった。荒療治だけど効果はありそうだった。


 *


 そんな練習を続けてたら、あっという間に三週間が経った。六月も最後の週になった。

 今の俺のパラメータはこんな感じだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

総合評価

 サーブ    E-←G+

 フォア    E-←G+

 バック    E-←G+

 フットワーク E+←F+

 ネットプレー F+←G-


サーブ成功率

 1ST 66%←55%

 2ND 49%←40%


サーブ平均速度

 1ST 140km/h←135km/h

 2ND 85km/h←80km/h


トップスピン平均回転数

 フォア 1450RPM←1300RPM

 バック 1450RPM←1300RPM


ショートクロス成功率

 フォア側 45%←30%

 バック側 45%←30%

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ふへへ……」

 

 おっと変な声が出た。うん、ちょっとずつだけど上がってきてる。

 (ほぼ)オールGは、脱出した。ヨシ!


 こうやって成果を数字で確認できるのはやっぱりいい。きつい練習も報われてる気がする。


 ……ただ。一つだけ心配ごとがあった。


 それは、練習相手が、部活の中にしかいないこと。

 部活のみんなには、本当に世話になってる。それは間違いない。


 でも俺がこれから出る大会は男子の部だ。だったら男子の選手と打つことにも、慣れておかないといけない。


 いや部活の女子がダメとかじゃない。むぎ先輩のボレーも、かぐら先輩のストロークも、めちゃくちゃ勉強になってる。

 ただ、実際に対戦するのは男子なんだから、男子の球の速さやパワーにも触れておきたい。そういう意味なんだ。


 ……どうしたもんかな。

 そんなことをぼんやり考えていたら。

 稲葉コーチからこんな提案があった。


「千両君。よかったら――うちのクラブに来てみないか?」


 

★☆利士君をみた部活の他の子の様子★☆

 

「正直、男子なめてたわ……」

「あそこまで追い込めるの……、マジ半端ないよね」

「みてよこのボールの重さ……もてぬ……」

「筋肉……はぁはぁ……すごい……」


 

【作者あとがき】

  すみません、練習回続きました。

  これでなんとなく利士君の日常が分かっていただいたでしょうか。

  効率的なトレーニングだとこうも違う……ッッ!


  引き続きよろしくお願いします。



【作者あとがき】

  すみません、練習回続きました。

  これでなんとなく利士君の日常が分かっていただいたでしょうか。

  効率的なトレーニングだとこうも違う……ッッ!


  引き続きよろしくお願いします。

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