第34話 メンテナンス延長のお知らせ。
メンテ延びたんでリアル回だよ。
翌日起きたら、メンテナンスが始まったお知らせと、メンテナンス時間が延長されたお知らせがメールの方に届いていた。
まあベータ版だしね、しょうがないね。
今回は掲示板もクローズ中らしくて、外部のスクショ探しくらいしかすることがなさそうだから、日曜日だけど、午前中は勉強とジムでの鍛錬に充てる。
「瑞希さん、パッチノートの更新部分は見ました?」
「ん?まだです。メンテ延長で昼イチログインも無理そうだから、食べてからゆっくり見ようかと」
「んぎぎ、羨ましい……」
「そういえば第二陣も当たらなかったですね」
昼食の席で花枝さんに聞かれたので答えたら、藤垣内さんと魚売さんからも反応があった。
「あー、ベータ版の間は1住所2人までの制限解除はされないそうですよ」
推定とはいえ、アルファ組が断言してたから、そこは間違いないはずだ。
「製品版待ちですかぁ、また応募からか……」
「純粋に人数問題でベータ落ちた人には優先応募枠が自動付与ですよ」
落ち込む藤垣内さん、クールに説明する魚売さん。
「つまり製品版ではいっせーの!ができる?」
「スケジュール次第ですね」
そして何となく思い付きを口にしたら、これにもクールな回答の魚売さん。
確かにそうね。3人は仕事の一環として私のゲームに付き合って貰ってる。
まあやれば3人ともそれなりにゲームを満喫してはいるんだけど。
「そういえば花枝さん、今更ですけどパーソナライズ種族って出たクチです?」
「いえ、私には出ませんでしたね。仮に出たところで、ジョブ選択がない時点で選ばないとは思いますが」
ふと思い出して聞いてみたら、花枝さんの答えは安定の職人一直線スタイルだった。
「パーソナライズ種族?なになに?」
「最初のスキャンデータに何らかの偏りがあると特殊種族が選択肢に出るのよ。
ベータでも製品版でも1回しか表示されないそうだから、レアリティだけで選ぶのはアリ。
但しジョブ制限とかいろいろ厳しいから説明はよく読むこと?」
「製品版のファーストをそれにしてセカンドキャラを普通に作ることもできるそうですけどね」
興味を示した藤垣内さんにまず私が説明し、解説不足の分を花枝さんが追加してくれる。
「ほほう。面白そうだけど、ジョブ制限あるのはビミョーね?」
「実際私のキャラ、符術師っていうお札投げるジョブしかできないのよね。今のところは満足してるけど」
「瑞希さんはレアリティでキャラクターを選ぶタイプではないと思いましたが」
「かわいかったのよ!自分でキャラクリするのが無理だと思うくらいに!」
引き続き解説してたら魚売さんから疑問が出たので、正直に回答する。
いやほんとに好みドンピシャだからね、ひまりちゃん。
「確かにひまりさん……瑞希さんのキャラ、かわいいですよね」
「え、見てみたいけど、ゲーム内でしか見られない?」
花枝さんもひまりちゃんがカワイイのには同意してくれたのだけど、そこで藤垣内さんが更に興味を増した様子で質問してきた。
「スクリーンショットは外部サイトにも貼っていいから、ひまりちゃんは割と簡単に見られると思う……」
「今出回ってるキャラクター単位のスクリーンショットで断トツの一位ですからねえ」
多少遠回しに回答したら、花枝さんがさっくりネタバレしてくれた。ぐぬう。
「なお自分では貼ってません」
「そりゃそうよね……」
そもそも外部掲示板とかブログってあんまり使わないし、わざわざそんな場所に自分のスクショ貼る趣味もないのです。
撮影はいっぱいしましたけど!
ゲーム内のスクショは自分の登録メールアドレスに飛ばせるので、そっちに一旦送ってから保存しなおすというちょっと迂遠な作業が必要だけどね。
フレンドのメールアドレスに送ることもできるけど、そっちは枚数制限がある。
自分なら10枚まで添付可能、フレンドへは3枚までだ。
そして本体への保存は150枚まで、ということで、毎日ログアウトした後でメールでせっせと添付して送る→確認してから次のログイン時に古いスクショを消す、という作業をやっております。
ひまりちゃん自撮りシリーズは花枝さんにも分けている。
そうすると花枝さんからも選り抜きひまりちゃんと称して、アンファルで撮影したスクショが飛んでくるという次第ですね!
たまにアンファルのつむじとか撮った奴混ぜてます。身長差!
自撮り以外は皆で記念撮影!みたいなやつとか、日常のひとコマ的なショットとか、たまにモンスター。歩き茸がぼけーっとしてるとことか、鶏のもふちりとかね。
そんな感じで例によってがっつりめのお昼ご飯(今日はミートボール入りのトマトパスタとチキンサラダだったよ)を終え、まずはメールを再度チェック。
うん、メンテナンス、夕方まで延長。まあしょうがないね、ベータだしね。
それからVR機器側にも通知ランプが点滅していたのでチェックしたら、これはフレンドメールがミューちゃんから。
メンテ明けリアル30分後に集合、とのことなので『りょーかいスタンプ』だけ送っておく。
VR機器側のメールはスタンプだけ押して返信に代えることができる。楽ちんで宜しい。
それとは別にキリカちゃんから、これはレベリングの相談。
これはスタンプじゃなくてちゃんと返信をする。
といっても我々ノリで駆け抜けたので、ボーナス目当てで生産職の人誘ってみたら?くらいしか言えることがないなあ。
それに今日のバージョンアップで経験値回りも少し緩和するはずだよね?主にレベル差補正。
そこら辺の事もあるから、まずは一回いつものパーティで外出てみないとなんともいえないかも、と追記しておく。
まあ生産職ボーナスは残るはずなんで、いちばん確実なのは職人さん募集することだろうなあ。
キリカちゃんもLv15にはなったそうだから、職人さんが集まるかどうかが謎だけど。
いや、職人スレのどっかでLv18まで上げないといけない話が出てたな?内容的にアンファルが書いてた気がするけどあの説。
「花枝さん、職人もLv18推奨って話あれ調理人限定なんです?」
「ほかの職の話は聞いていませんが、Lv15制限のあった薬師・調理人・錬金術師は恐らく共通仕様だと思いますよ」
メンテ明けまで掲示板も見られないので、台所で何か仕込んでいた花枝さんに直接質問したら、そういう回答。
「成人と成年は別、みたいな?」
「ほら、この国でも成人は18にしてもお酒たばこの解禁は20のまま、って議論を今しているでしょう?私の調理の師匠の話ではあんな感じでしたね」
言われてみれば納得だ。
成人年齢の変更については去年くらいから国レベルでの論議が始まっているけど、現状では変更しなくてもいいんじゃないかという感じ。
この国まだそこまで若年層減ってないからねえ、欧米と違って。
政権与党は時々変わるけど、基本的には保守が強い。
そのせいでもないんだろうけど、私が生まれる前に神祇庁が名前だけ復活している。
但し明治期の似た名前のそれと違って、やってる仕事は俗にいうオカルト関連の始末、だ。
私以外のクラスメイトがバスごと消えた案件も神祇庁預かりになり、ついでに言えば私の引き籠り式保護を決めたのもこの省庁だ。
要するに私の『出掛けると周囲のものを壊す体質』はオカルト案件なんですね。
そりゃそうだ。流石に物理法則的におかしいもん。因果関係の心当たりもないし。
しいて言えば、あの事故の件より前にそんなことは一回も起こっていない。
だから、あの件と関連があるんだろうな、って事しか分からない。
そもそも私がこちらに残れたの、シートベルトがぶっちり切れたせいだからね。
シートベルト以外に壊れたものはなかったように見えたけど。
あの人たち、どうしてるのかなあ。
死んではいない、とはどういうわけか、確信できるんだけど。
……まあいいか。
手の届かないところにいる人たちの心配をしてもしょうがないし。
ただ、一人だけまあまあ仲が良かった、あの時も隣の席だった、賀名生久美子だけは気になるなぁ。
元気にしてればいいんだけど。
「……瑞希さん?」
考え込んでしまっていたらしい。花枝さんが心配そうな声だ。
「あ、うん。神祇庁の予算ってどこから出てるのかなって考えてた」
とっさに嘘を吐く。
多分だけど、クラスメイト関連の事は、私が干渉してはいけない、そんな気がするんだ。
だから、それなりに親しい人が居たことは、教えない。
事故から取り残されたときに、そう決めたんだから。
やっと序の案件に触れたぞ。
予算は……税金だけではないらしい、とだけ。




