第124話 ねんがんの!クランハウス!
もいっちょ続いた。
壁に囲まれた屋敷の門を、一番最初にクエストを受けた茉莉ちゃんが預かってた鍵束の鍵のひとつで開けると、まず門番であるらしい、帽子をかぶった、無精ひげの小柄なおじさんが出てくる。
「おう?鍵を持ってるってことは調査のひとかい?宜しく頼むわ」
ただ、鍵がある時点で依頼を受けてるって事が判るようで、言われるのはそれだけだ。
実はこの人、さっきの連中がああだこうだ言ってた時には嫌そうな顔で門の格子越しにそっちを見ていた。
今は彼らの事自体、記憶すらしてなさそう。
これもNPCあるあるだ。切り替えが極めて早い。
というか衛兵さんの挙動を見た感じだと、収監キャラは存在しなかったことになってそう?
(うむ、だいたいそういう内部処理だと思ってよいぞ)
朔夜からも解説が飛んできた。ゲームらしいところ、って奴だね!
この屋敷の鍵は全部預かってきている、ということで、屋敷の門内は勿論、屋敷の中にも入れるので全員で一通りチェックする。
といっても、これといって目立つものはない。家具もほぼ全て持ち出し済みの、ガチで空っぽの空き家だ。
屋根裏部屋や地下室まで見て回ったけど、本当に何も、ホコリくらいしかないんだよね。
鼠とかも出なかったので、そこはいいんだけども。
隅々まで2回チェックしてもなーんにもなかったので、一旦入り口まで戻って、やる気のなさそうな門番さんを見る。
……ん?そういえば、門番って、普通は門の外に立っているものだよね?
調べてみるか……ってあれえ?!
驚いた顔をしてしまったところで、にかり、とこちらを見て笑った門番さんが、すぅっと消えた。
その足には、靴ではなくて……蹄のような、なにか。
玉兎:おいこらホラーじゃないって言ってたろう?!
ひまり:ホラーではないですね、ファンタジーだけど。
茉莉:足が人間じゃなかったですよね?今の門番さん……
北斗:あ、ひょっとして、家つき妖精とかそういう類?
そう、聖獣種って鑑定結果だったんですよね、門番さん!
姿が消えると同時に、何故かその鑑定結果もぼやけて、今にも忘れそうになってるけど……
《クエスト:『ホーンテッド?ハウスの謎』クリア!評価:Exellent!!最高評価を得たため、スキルポイント及び取得エン、名声値にボーナスを得ます》
そして、彼の大雑把な正体をパーティ会話で共有したところでクエストクリアだ。
……ああ、つまりさっきの門番さんに化けてた何かが、噂のもと、だったのか。
そして上がる名声値、って確かカンストしてるとか聞いたような?
なおエクセレントになったのは、なんと北斗さんが正体を完璧に言い当てたからでした!マジの家付き妖精さんだって!!
当然パーティの他の皆も同評価になったので、一旦再び施錠して、冒険者組合に報告に戻る。
オファーはどこでもできるけど、クリア報告は直接しないといかんのです。
「あらまあ、妖精さんだったんですね。そして皆さまは彼に気に入られた、と……
あら、ちょうどよく皆さまクランでの行動で、リーダーさんもいらっしゃるのですね。
あの空き家は最大サイズのクランハウスとしてご利用いただけますが、資金などは如何でしょう?クランハウスはまだお持ちではありませんよね?」
そして受付のおねーさんの方からクリア確認と同時に、まさかのクランハウスの斡旋を受けた。
薄々感じてたけど、このクエ、ほんとにクランハウス関連の導入クエストだったん??
ひまり:これマジでクランハウス導入クエなの?
茉莉:それだとしたらクリアできなかった理由は納得なのです。
はじめ:リーダーがオファーしてなかったから??
玉兎:えぇ……資金条件満たしたのは前ログインでだから、どっちだ……?
(両方じゃな。全フラグが揃わないと受付は反応せんぞ)
そしてクリアしたクエストなので、朔夜からネタバレが入る。
で、これも掲示板に書けないタイプのクエらしい。弾かれる。
「はい、実はあの家の立地が良いので下見を兼ねてオファーしたんです。ちょうど資金もいい感じに貯まったところでして」
「ああ、それなら彼のご機嫌も良くなるというものです。
あの妖精さんは準備のいい働き者を好みますからね!」
なんでも、クランハウスにできる建物には皆あの妖精さんがいて、希望者を試すんだそうだ。
そして契約が成れば、クランリーダーの気に入った姿で出てきて、門番や共有エリアの掃除などをしてくれるんだって!
要するにこれ、我々を試す、クランハウス取得資格試験のためのクエストだったわけだ!!
そりゃ掲示板には書けないわ。対策されたら組合も困るよね!
「そうだったんですね。ではぜひ契約をお願いします」
というわけで、試験だったことには敢えて触れずに話を進める玉兄さん。
無事に一等地の特大ハウス、ゲットだよ!
といってもあくまでも今回のクランハウスはレンタルだ。
なんたって、自分たちで建てる、はまだ実装されていない。職人勢が熱望してるけどね!
完全買い取りとか自前で建てるとかは、多分他の大陸が実装されてからになるんじゃないかなあ、なんとなくそう思うだけだけど。
だって射干玉って、どの町も正直に言えばそこまで広くないし……
正式契約の為に、早速さっきの現場にとんぼがえりだ。
今度は契約の関係で組合の受付さんと事務員さんが一人づつついてきた。
「おうおう、契約だな!リーダーは……その兎耳か。
其方、ワシにどのような姿を望む?なおワシに性別はないから、男女どっちの姿でもよいし、言葉遣いもそれに応じて変更するぞ!」
「あらあらご機嫌ですねえ。普段は最初っからそこまで話題を飛ばさないのに」
「準備が良く評判も良く礼儀も良い。断る理由がないじゃろ?」
玉兎:なんだか褒め殺しって言葉を思い出す……!
ひまり:あはははは……
茉莉:正当な評価だとおもうんですよー。
はじめ:ところで門番さんにはどういう格好をしてもらうのです?
玉兎:普通に強面の熊獣人さん辺りをお願いしようかと。
北斗:製品版でなんかやっかまれが増えたし、自衛に寄せたいよなあ。
ミュー:でも屋内の掃除とかでコワモテ熊さんがうろうろする絵面ってどうなん?
「ああそうそう、外見タイプは2種まで設定可能だぞ。門番と掃除人では職権が違う故な」
パーティ会話を見透かすように妖精さんが述べたので、それなら門番は熊獣人さんでいいね、となったんだけど……
掃除をする人の方をどうするかが決まらない。
メイドさんでいいんじゃない?という女子勢と、それだと妙な輩の耳目を集めそうだと難渋する男子勢。
……ねえ普通それ逆じゃね?男子?
いや、玉兄さんも北斗さんも自制ある大人だってことだな!ヨシ!
「では門番業務に関しては強さを前面に押し出す感じの黒熊の獣人さん、清掃業務に関しては清潔感のある猫獣人、どちらも男性でお願いします」
「うむ、正直性別を揃えて貰えるのはありがたいな!頻繁に切り替わるとたまに間違えるのでなあ!」
結局玉兄さんは両方男性である事をセレクトした。
そしてそれは妖精さんのお眼鏡に叶う行為だったようで、なんか妖精さんが満面の笑顔になりましたね!セーフ!
《クランハウスに関するチュートリアルを開始しますか?》
おもむろにぴこん!と通知音が鳴って、チュートリアルがあるよとポップアップが出る。
当然開始を選択したら、パーティ表示から分離された。個別チュートリアルなんだな?
《あなたはサブリーダーですので、クランハウスに関する複数の権限を得ます。
・共通チェストのアクセス権限を指定することが可能です。
・共有ルームの改装の発動が可能です。
・団員の部屋の割り当ての設定が可能です。
但しこれらの権限はクランリーダーの持つ権限の方が優先されます》
うむうむ。ガイドマップも表示されて、判りやすいね!
《外部共有ルームの改装はメニューからではなく自力での搬入搬出が必要となります。
但し冒険者用かばん経由で家具の出し入れが可能ですので、世間の一般家庭での模様替えほど難しくはありません。
個室の改装も同様です。こちらは自分だけのお部屋を演出可能ですので、予算と床壁の面積が許す限りの改装が可能です》
成程次の個人コンテンツは個室改装ね!把握!
《クランチェストには権限を持つすべてのクランメンバーがアクセス可能な共通チェストと、プレイヤー個人だけが利用できる個人チェストがあります。
共通チェストの初期容量はLLサイズハウスでは5000件、個人チェストは全ユーザー共通で初期値100件です。
スタック品はスタック上限を1枠として取り扱います。また、生き物・パペットは入れられませんのでご注意ください》
おおう、ここで予想外の制限が。パペット、チェストに入らない!
《パペットに関しては、後日『中庭』が実装された時に、放し飼いできる仕様を検討中です》
そして補足説明が。パペットの放し飼い……おもしろそうだな……?
説明を聞き終わったら、玉兄さんと手分けしてメンバーの権限整理をしたらもうログアウト時間だ。
元祖の方は製品版勢殆どいないから全員許可でいいよねー、って雑に決めたのにね!
さーて、暫く部屋改装で遊べるぞー!ってだめだその前にレベル上げだ!!
称号追加[家妖精のお気に入り]
ハウスクエスト報酬の称号のワーファーはディギーさん達。




