第123話 クエストなのに対人トラブル?!
続いた。
LLサイズ空き家は、ご領主様の館から、道1本だけ挟んだところにある。
ご領主様の館の周囲にはお堀もあるので、そこまでご近所感はないんだけどね。
他の町だと、ご領主様の館が見える範囲っていうのは貴族の館で囲まれていて一般人は住めないんだけど、この町には、諸事情でそういう『貴族の住民』が一人もいないのでね……
なので、現地に行く前に組合で確認してみたところ、実はこのハウスのレンタルには制限条項がいろいろ付いていた。おもにクランリーダーの名声度とNPC好感度なんだけども。
但し、今日みたいにクエストを受けてこなすだけなら別に関係なく出入りできる。
これもクランハウスとして使うようになるとクエストの発生場所が変わるんじゃないかとは思うんだけど……
まだ実例がないので何とも言えない辺りだねえ。
『この空き家には、幽霊の噂がある。クランハウスとして貸し出すにしても体裁が悪いから調べてくれ』
ってのがオファーしたクエストの内容だ。
先に受けてた茉莉ちゃんとはじめちゃん曰く、1回目調べた段階でもう、『幽霊』ではないのが丸わかり、らしいんだけどね。
ただ、二人でやったときは、3回やって3回とも、2回目の調査が発生しないで失敗になっちゃったらしいんだよね。
そのパターンは、多分前提フラグが何か欠けてる奴だとは思うんだけど……
クエストの中にクランハウスとして、って話が出てくる時点で、どうもクランハウスそのものに関連するクエストな気がするんですよね。
だからホラーの気配にしり込みする玉兄さんにもオファーして貰ったんだけど。
さて、人数が増えた今回はどうなるかな……?
ところがだ。
クエスト用にパーティを組んで現地に着いたら、なんかもう一組、空き家の様子を伺っているっぽい人たちがいる。
伺っている、というか、男女数人で、男の人が大声で説明しているっぽいけどパーティ会話っぽくて、外部の我々には会話してるってことしか判らない!仕様!
ベータの頃も、三陣来てからはキャラクター表示制限してなかったから、その頃からいる人なら、フレンド以外でもそれなりに見知った顔は多いんだけど……
ヒューマンの金髪ややマッチョ系のお兄さん、それにこれも金髪のボンキュッな、そのくせ童顔っぽいお嬢さんx3っていう、海外のハイスクールドラマみたいな組み合わせ自体が、全く見覚えないなあ?製品版組かな?
「げ、符術師が来ただと?」
「えー、この立地が欲しいのにィ!」
「やだぁあんなの割り込んできたら勝てないんじゃないのぉ?運営に贔屓されてんでしょ?」
なんて通常会話の声が聞こえてきたので、なんと彼らもLLハウス狙い勢であるらしい。
北斗:わざわざトークモード切り替えてまで、嫌な言い方するじゃねえか?
玉兎:この立地が欲しいと来たけど、贔屓発言からするに、製品版組だろうかね?
ミュー:ここ名声度とNPC好感度両方ないと無理なエリアだぞー?
茉莉:全員クラン名隠してるんですね。
ひまり:あれ?ってことはクランリーダーいないんだ?
はじめ:へんですねえ?クエストだけなんでしょうか?
玉兎:それにしては発言がどちらかといえばクランハウス関連だけ、っぽいんだよな。
クランハウスの下見なら、大抵の場合クランリーダーが来てるはずで、クランリーダーって所属クラン名は隠せない仕様なんですよね。
組合のヒト曰く、リーダーはこそこそすんな、だそうですよ!
贔屓云々は製品版組の一部が言ってるのは掲示板でも見た。
GM勢に、そう見えるならレガシー鯖以外でのプレイがお勧めですよ、とか軽く流されてたけど。
「こんにちはー!下見ですか、クエストですかー?我々は両方ですが!」
なのでさっさと声掛けしてこちらの状況ははっきりさせておく。
言い方的に余り好かれてない気配はするけど、今は気にしない。
「下見だと?うぜえな、ここはオレらが先にツバ付けたんだぞ!」
「それは内見と初期費用入金は済んでるって事でしょうか?」
ツバ付けた発言が余りにダサいので、思わず容赦なくツッコミを入れる。
ここを舞台にした、建物内に入室可能なクエストが発動している時点で、その2つは行われていない可能性が極めて高いんだよね。
つまり、相手のヒューマンのお兄さんの発言は、恐らくでまかせだよ!
玉兎:ひまりさんが容赦ない。
ひまり:明らかに好かれてない上に嘘つく相手に容赦する必要はないですねー。
北斗:嘘っつかでまかせだよなこれ。
はじめ:おとなげなーい。
ひまり:うっ否定できない。
茉莉:いやひまりさんじゃなくて相手の顔が。
「こ、これからするんだ!」
「クエスト受領してないようでしたら、先に調査入りますけど」
「だめだ!!ここはオレらが使うんだ!!勝手に入るんじゃねえ!!」
「え?正規クエストの妨害は冒険者組合から警告出ますよー?」
だーめだこりゃ。クエストの仕様も調べたことないタイプだこれ。
彼らを調べたけどクラン情報以外のキャラクター情報は丸見え、全員Dランクだ。
クランハウスを取るには構成員の半数がCランクじゃないといけないから、彼らのクラン人数次第では、そもそも最低要件を満たしていないのでは?
ひまり:通報いち、かなー?
玉兎:その前にNPCが動きそうで怖い。
北斗:それ良くないな……いや俺らは関係ないだろうけど。
運営が動くより先にNPCが動いた場合、恐らく彼らの好感度がガタっと下がるんだよね……
しょうがない、GMコールするかぁ。
と思った時にはもう遅かった。
領主屋敷の衛兵さんが数人こっちに走ってきましたね!
「うわあ衛兵さんが早い」
「そりゃあ彼、声がでかいから……どっちみち審査で弾かれるよあれ」
「クランハウス要件も調べてない人っぽいしなあ」
「うるせえぞ!何を勝手なことをごちゃごちゃと!」
「そこの貴様!Dランクの小僧!領主様の屋敷に聞こえるような大声とは何事か!!」
「えっ何雑魚NPCが何を」
判りやすいようにわざわざ通常会話で警告してあげてるのに、それか。
レガ鯖でもこんな人いるんだねえ。
彼の後ろの女の子たちはずっとパーティ会話で何か言ってるけど、そこまでは判らない。
と思ったら怒鳴ってた男性からすすすっと離れた。
「えっお前らなに」
「ごめんなさい、やっぱりこのクラン抜けます!無理!」
「私たち嘘つかれて連れてこられただけで関係ないんですゥ」
「……この立地が欲しいとかぶっこいてたの貴女ですよね?」
「クエスト受領もクランハウス申請もしていないようなのに割り込み、なんて言葉も使っていたね」
どうやら女子たちは男性に見切りを付けたようだけど、聞こえてたからねー?同罪だよー?
という訳で玉兄さんと二人で聞こえていましたよアピールだ。
そして男一人女3人の推定同クランパーティは、おもむろに路上から掻き消えた。
……収監キマったっぽいね。
衛兵さん達はその状況を見ると、何事もなかったように我々に無言で敬礼だけして去っていった。
あれえ?これはどういう挙動なんだろう?
玉兎:ここの衛兵管理してるの、GMらしいぞ。
ひまり:へえ?AIで動かしてるって話の?
玉兎:恐らくね。まあ彼ら、まともにこのゲームの仕様も調べていないようだったしねえ。
北斗:雑魚呼ばわりとか、NPC好感度の存在自体知らない言動だよなぁ、あれ。
茉莉:でも、ひまりさんでもぶっこくとか言うんですねえ。
ひまり:うっ
はじめ:ずっとおちついて応対していてかっこよかったー!
我々が妨害を受けた側扱いになったんで、後日彼らの処遇が流れて来たんだけど、パーティ会話で全力で暴言ぶっぱしてキャッキャしてたそうで、全員BANでしたってさ。
製品版勢、このレガシー鯖に入れるのって既存勢からの紹介を受けた人だけなのに、良くそんな性格悪い人の煮凝りみたいなクランができたもんだね?
と思ってたら後日当該クランのリーダーらしき人が菓子折り持って謝罪に来た。
なんか身内に脅されて無理やり招待コード発行させられたメンバーがいたんだって……
……普通に犯罪者だった……やばたにえん……
菓子折り、アンファル印だったので笑いをこらえるのがちょと大変だったよね……
ええ、中身、試食しまくった奴だった……
当然美味しいのは判ってるので、あとで皆で頂きました!
なにはともあれ、厄介プレイヤーは排除されたのでひと段落だ。
厄介というか、あの人たち、このゲームでマジで何がしたかったんだろう感はないでもないんだけど。
ひまり:そもそもこのゲーム、全ログサーバーに残る仕様だって知らないんだろうなあ。
玉兎:全部なのか……
茉莉:眷属との会話もある程度残るとかなんとか聞いてます。
はじめ:言語化して考えてるとはかぎらないのにねえ?
北斗:ある程度再構築とかはしていそうだなあ。
ミュー:謎技術……!
ひまり:それはいいけど、クエ進めようー?
そう、時間は!有限なので!クエスト進めるよ!
今回のBAN組は紹介の過程にも問題があったようで……お外でもひと騒動あるだろうけど割愛。




