終幕
その後神原は、最初の依頼主である南条芳江に会った。
神原は別府に了解を得た上で、「週刊 TRUTH」の発売前の記事の原稿を芳江に見せた。
芳江は「ええ。私もここ最近、ずっと息子の様子を見ているうちに、段々、こういう事だったんじゃないかと思うようになっていました。…覚悟していましたわ」とため息をついた。
「でもね、探偵さん。息子は更生しようと努力しています。もう二度と、痴漢などはしないと思います。それにドクターの話では、皮膚移植の手術になるかもしれませんが、治療出来ない事もないとの事ですので、少し私どもも心が明るくなっているんですよ。この度はお世話になりました」
翌週、「週刊 TRUTH」の最新号に、真相が掲載された。
世間の反応は様々で、大きなニュースとなった。
世の男性達の中には震撼する者もいた。
女性達の中には、女性の味方の三姉妹が捕まってしまったことを残念がる意見もあったし、被害者A(朝倉)の母への同情もあった。
「人って、悲しい生き物よね…」多嘉恵さんがため息をついた。
「メランコリックだね、多嘉恵さん」圭助がからかった。
「だって、つくづく世の中の不公平を感じるんだもの。結局、持って生まれた運ってものがあると思うのよね。圭助君のように生まれれば、モテるし、痴漢になんてなる心配ないけどね、容姿に恵まれなかったり、色んな理由で女性に縁がないまま大人になってしまう人もいるでしょ? それに環境や育てられ方にもよるけど、マザコンになったりもするわけよね。やっぱり生まれ持った運ってあると思うのよね」
「いや、ありがとう」圭助がちょっと顔を赤らめて笑った。
「多嘉恵さんのいう事も一理あるね。でも一つ言わせてもらうけど、痴漢って、ハンサムでもモテても関係なく、なる人はなるらしいよ」
芳田も今回の事件で、自分なりに痴漢について調べたり考察したりもしていた。あくまでも、作品のネタとしてだが…
「あら、そうなの? じゃあ何で、そうなっちゃうの?」
「わからないけど、一種のストレス、というか精神的な病気みたいなもんじゃないかな」
芳田にも、それは未だに疑問だった。
「なんでもかんでも病気って言えば許されるわけじゃないよ。心が弱いから変な犯罪に走るんだよ。甘えるなってんだ」
「神原、それは正論だが、弱者にはキツい言葉だと思うよ」芳田が反論した。
「そうよ、神原さん。あなたは悪い人じゃないけど、もっと優しくならなきゃ。…それはそうと、いつお寿司、連れてってくれるの?」
神原は、すっかり忘れていたのを隠すように、ニヤッと笑った。(完)




