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アンジェリカは第二王子のコンラートと結婚させられることになった。
ペドロ国王としては、アンジェリカを手放すという選択は、そもそも考えていなかった。彼女の能力はこの国にとって絶対的に必要なものであり、王室で保有する必要があると考えていたからだ。
これは王命であり、今度も彼女に選択の余地が無かった。しかし今回のことをアンジェリカは嫌だとは思っていない。第二王子コンラートは、ヘンリックから庇ってくれる唯一の人物。優しい人柄は彼女にもよく沁みていた。
夫婦になってから聞いた話だが、コンラートはずっとアンジェリカに片思いしていたらしい。
勿論、アンジェリカが貢献し続ける限り、国から侯爵家への支援も打ち切られることはない。彼女はヘンリックから洗脳的に、婚約破棄をしたら終わりだと思わされていただけだった。
そしてヘンリック並びにエステルはどうなったのかというと、ガリアス帝国の隣の国に運ばれることとなった。
オークの国だ。
そこに住むオークというのは少し変わっていて、メスしかおらず、他種族のオスを常に必要としている。特に人間は好まれ、尚且つ王族ともなると、かなり重宝されるようだ。
ゼーレがガリアス帝国という強国と隣り合い、その生存戦略に心を砕いていたように、ガリアス帝国も、さらに強大なオークの国との付き合いに腐心し続けていたのだった。
ヘンリックは滅多に手に入らない王族という格好の貢ぎ物だ。オークからは大変に喜ばれる。もしかしたら貢ぎ物となったことが、彼が生涯で上げた外交成果の中で、一番大きなものだったのかもしれない。
ちなみにこのオークの国は十数年後、打倒されることになる。その際助け出された人間の中に、「自分は元王族だ」という、老人のように痩せこけた男が一人居たというが、それがヘンリックだったかどうかは、まだ誰も知らない。
エステルも同様にオークの国へ送られた。この国で人間の女はすぐ処分されるのだが、彼女は五か国語を話せるので、通訳として生きる道があるだろう。
ただ逃げ出してきた人物の話だと、少しでも失敗するとムチで打たれる環境であるため、どちらにしろハードモードであることに変わりは無い。
改めて王太子妃となったアンジェリカは、より一層語学を磨き、情報の収集にも努めた。
ペドロ国王は、コンラートはあまり王向きの性格ではないと感じているようだが、アンジェリカはそう思わなかった。
彼は優しく、人の痛みが分かる。だからこそ汲める民意もあるだろう。
それでも足りないところは、しっかりフォローし、支えれば良い。
コンラートのことは心から支えたい。アンジェリカは今、心からそう思うのだった。
おわり




