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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第1章
83/118

83話 終わりの始まりの日



5月第3週土曜日


買い出しも終わり結城が手際よく冷蔵庫に購入した物を入れていく

当たり前のように。

もう手馴れたものだった。


澪桜は結城が買ってくれたトイレットペーパーや洗剤や柔軟剤などを補充していた。


まるで同棲カップルのような光景。


「安達さん。全部入れ終わりました」

そう言ってエコバッグを畳んでいく


「ありがとう結城さん。今日はどうしようか?もうお昼……になっちゃったね。少し帰り渋滞してたからねぇ」


「そうですね。疲れた?大丈夫?」


心配する結城、何よりも澪桜が大切。


「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。

それより結城さんのが渋滞のせいで疲れたでしょう?

……どうだろう?今日は家でゆっくりするかい?」


穏やかな口調で聞く


「ありがとう……俺も大丈夫だよ、全然疲れてないし。

でも……そうだね、せっかくの提案だから……俺もそうしたいな」


優しく返す


2人の関係はもう親友とは言えない。

2人だけは未だにそれに気付かない。

会話も空気も何もかもおかしいのに───



「じゃあ……お昼は何にしようか?んー。

ぺぺたまでも食べるかい?パスタ!

野菜たーーーっぷり入れて!それとコーンスープ……粉のやつ!」


シシシっと笑う

子供みたいな無邪気な笑顔にキュンとする結城


「ぺぺたま食べたい。安達さんのパスタ美味しいから」


「ニンニク効かせるよぉぉ?」


「いいよ。ふたりで臭くなったら何も怖くないでしょ」


ニヤッと笑って返す

いつもの掛け合い

いつもの空気


心地よくて愛しくて、何よりも大切な時間


「もう食べる?今12時半だけど。」


「そうだね。食べよっか。後でもしどこが行きたくなったら言って?どこでも連れて行くよ」


「いいよぉ。今日はゆっくりしなよ。あたしの家娯楽が一切何も無いけど。……あ、花札ならあるよ?」


「……何でよりによって花札なの。」


「好きなんだよ。柄が」


そう言いながら冷蔵庫の中から野菜を出していく


「柄……」


結城はパスタを戸棚から出し、食器を準備する


「オセロもあるよ♪」


クルッと振り返って言った


「一人暮らしで誰も家に呼んだことなかったのに?」


野菜を洗い、澪桜に手渡していく


「うん。一人で次の手を予測しながらずーっとやってた。」


渡された野菜を澪桜は手際よく切る


「悲しすぎる……」


「その代わり私オセロ強いよ!?」


「うん。勝てる気がしないよ……色んな意味で」


お湯を沸かしフライパンを準備した

流れるような2人の作業。

息ぴったりでもう指示すらない。


結城は自分の家のように物の位置を把握し

その事に澪桜は何の疑問も抱かない


不気味で歪で……狂った関係。

でもそれは……親友という括りだからの事。


だからこそ愛しくて切ない。


話をしながら流れるように作業し

あっという間にぺぺたまが出来上がった。

材料は家にあるもの。

今日はレタス、玉ねぎ、しめじ、ウインナー、もやし、えのき

というラインナップだった。

それと即席のコーンスープ。


結城は結構食べるので多め。

澪桜は少なめ。


いつものルイボスティーを入れて

結城がちゃぶ台に運ぶ


食べる準備が整ったら2人は座って手を合わせる


「「いただきます」」


当たり前のような……光景。


「……今日はもやしを入れてみました☆どう??」


楽しそうに聞く澪桜


「……めっちゃ合うね!もやしとパスタって想像もしてなかった。おいしー!」

もぐもぐとどんどん食べ進めていく結城。


「でしょー!?意外と合うのよ。店じゃ出てこないよね!?もやしパスタ」


「ウインナーともやしの組み合わせがまた美味い。これまた作って?」


むぐむぐ食べながら結城は満足そうに言う


「ふふふ。そんな気に入った??簡単だから結城さんのご要望とあらば、いつでも作ってあげるよ」


結城の頬張る顔を眺めながら

幸せそうに澪桜は微笑んだ


「っ!!!」


喉に詰まりそうになる。

最近澪桜さんの表情と言動でドキッとする事が増えた

勘違いしたくなるような顔

甘いセリフ───


なるべく意識しないように努めているのに

彼女がそれを許してくれない


「っゴホッゴホッ!!!っすみませっ……」


「だっ……大丈夫かい!?ほら!これ飲んで!!」


急いでルイボスティーを渡し

背中を摩る


華奢く優しい手……温もりが背中に伝わり

結城は電気が走ったように過敏になる

ビクッ!


今その手を引き寄せれば抱き締めることのできる距離に

彼女が……いる。


鼻をくすぐる甘い香り、柔らかな吐息

押し倒せる───距離

すぐ側に……ベッド……


「だっ!!大丈夫ですから!!!」


つい大声が出てしまった

ハッとして澪桜を見ると

驚いた顔をして止まっていた


「…………」


「すみません!!大きい声出してしまって……本当に大丈夫だから」


慌てる結城


「そうかい?また鼻に入らなかった??君は少し背筋を鍛えるべきだねぇ。どうも嚥下力が低いようだ」


首を傾げて見当違いなアドバイスをされた

しかも的確に。


……嚥下力て……


さっきまで脈打っていた心臓がスンとなる。


「鼻には入ってないし……俺まだ20代なんだけど。」


虚しい声が澪桜の部屋に響いた



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