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社会不適合者の恋愛論  作者: 澄泉
第1章
80/117

80話 大人とは



「ふぅーおなかいっぱい!」


満足そうにお腹を摩り二乱から出る澪桜

寄り添いながらニコニコと同じようにお腹を摩り

話しかける結城


「ね〜!美味しかったぁ!俺人生半分損してた気分!またふたりで食べに来ようね!」


「でしょう!?豚骨ラーメンは美味いのだよぉ!また来ようね!次はこってりにするのかい!?」


「するする!!絶対する!」


豚骨談議に花を咲かすふたり

澪桜は楽しそうに結城に言う


「いつか、私の地元の美味しいラーメン屋さんに……結城さん連れて行ってあげたいなぁ」


ピタッと止まる足


……それってどういう意味?

二人で君の地元に旅行に行こうってこと?

期待しちゃうよ俺

……それでもいいの?


「……その時はご家族にもご挨拶に行かないとね」


跳ねる心臓を抑えながら低く静かに呟いた。

違う意味を込めて───


「そうだね。紹介するよ、もう既に気に入られてるからきっと泊まれって言われるだろうね!大変だよ〜ウチのお父さん聞き魔だから!根掘り葉掘り聞かれるよぉ?寝かせて貰えないかもねっ」


ケタケタと笑う

それがどういう意味か深く考えていない事がすぐ分かった。

伝わらない事が歯痒くて、気づいて欲しい欲求がついに限界を超える


「安達さん……俺は君にとっ───」


「あれ?澪桜先輩に結城さぁん?」


甘く可愛らしい声が2人を呼び止める

澪桜はびっくりして振り返った


「え?沙也加ちゃん!?」


「ふぁい。2人はデートれすか?」


かなりもう出来上がってる。

毎回毎回、ほんとにこの子は……


「おー、お前らどしたぁ?こんなとこで」


気怠いハスキーな声が聞こえてきた


「……山本」


結城が呟く。

途中で邪魔が入った事で

少し冷静になれて内心ホッとしていた。


───俺は君にとってどんな存在?───


そう……聞きそうになった。

君の中で俺の位置が

俺の立場が

変わったんじゃないかって

期待……してしまってる。


君は優しくて純粋で……とても残酷な人


聞けば必ず後悔する事くらい……分かってるのに、傷付く事くらい分かりきってるのに。


君の言動、行動ひとつで俺は天国にも地獄にも行ける。

どんなに傷付けられてもいい、君にならどんなに振り回されても構わない。

だから───


目を瞑った

やめろ。俺は一生親友でいるって誓ったばかりだろうが。


立ち止まって思考し深く呼吸する結城に山本が心配そうに声をかけた


「大丈夫か?どうした」


「なんでもないよ」


「山本さんまで!こんなとこで何してたんです?沙也加ちゃんめっちゃ出来上がってますけど!?」


2人に近づく澪桜

腕にまとわりつく松井を連れて


「こいつがさぁ……酒奢れってカツアゲしてきたんだよ」

「「カツアゲ……」」


シンクロする澪桜と結城


「澪桜先輩!行きましょ!ほらぁ!飲みましょ!」


「いや、私たちは今ラーメン食べたばかり……」


「まぁまぁ、付き合えや!ちょっとくらい」


「……え?行くの?何で!?」


当たり前のように結城の肩に腕を乗せる山本

意味も分からないまま

無理やり連行された。


───


少し落ち着いたカフェバーのような所

結城と澪桜はアールグレイを飲む


未だ酒をかっ食らう目の前の可愛らしい女の子。

……でも目が据わっていた。

隣の山本は知らぬ顔


「いいですかぁ?澪桜先輩、わらしは忠告します!」


ビシッと結城を指差した

ビクッと反応し目を見開く



「この男と縁を切ってくらさい!!ダメですこの男は遊び人れすよ!!」


「はぁ?」


鋭いナイフのような視線を送り結城が冷たく言い放つ


「結城さん、相手は酔っ払い。シラフの君が本気で相手しないの。大人気ないよ」


ビシッっと裏手で胸元を叩かれ制止された

飼い慣らされた犬のようにしょげる


「……ごめん。」


「ブハッ」

山本が笑う

結城はそれを静かに睨みつけた


「何でそんなこというの?沙也加ちゃん、こないだのカラオケの時は結城さんとも仲良くしてたじゃない。」


諭すように澪桜は優しく話す


「らって……酷すぎますよ……澪桜先輩が可哀想。なんなんれすか?そのネックレス!!」


「んん?ネックレスぅ?……あ!!!すげえの付けてる!!」


今更気づく山本


「ネックレス?これがどうしたの?」


「それ、いくらしたんれすか!?結城さん!?」


直接聞く松井

結城はフンッと鼻を鳴らす


「覚えてない。金額なんか見てないから」


「絶対うそれす!そんな忘れる金額じゃらいはずれす!」


「え!?これそんな高いの!?」


山本だけ楽しそう


「多分れすが……山本さんの給料3~4ヶ月分は飛びますよ」

じろりと結城を睨む

結城は目線を逸らし素知らぬ顔。


「ええええええ!?すげえ!!!」


澪桜も驚く


「え!?そんなに!?」


「事実無根だなぁ。」


それでも結城は気にしない


「それを誕生日プレゼント??遊び人にきまってますよ!金を持て余した極悪非道な遊び人れす!」


「さっきから何なんです??松井さん、大の大人が言っていい事と悪いことも区別つかないんですか?

金額の事といい、人格批判といい、とても不愉快なんですけど。」


言い返す結城

とても冷たい目線で松井を射抜く


あまりの眼力に松井は血の気が引く

その空気を察知してまた澪桜が止めた


「こら!結城さん!!気持ちは分かるけど酔っ払いを本気で相手しない!」


「うぅ。」

また小さくなった


「……お前犬みたいなのな。」


クックッと笑う山本。

こいつ、なんでこんな部外者的な位置なんだよ。

この状況お前がなんとかしろよ


だんだん腹が立ってくる結城


「何かあったの?沙也加ちゃん。

山本さんこれ、どうゆう状況なんです?」


「それがさぁ、俺もさっぱりなんだよ。聞いても答えねぇ、でもやさぐれる。絡む。……あぁ。女ってめんどくせぇ」


頭を搔く


「沙也加ちゃん。私は共感が苦手。解決策を考えてしまう……それでもいいなら話してごらん?」


「澪桜先輩すきぃぃぃ!」

澪桜にキスしようとする松井の顔面を片手で止め

ディフェンスをする結城

かなりご立腹


「俺らも聞いてやるから話してみろよ?な?そしてもう酒はやめろ!」


ジントニックを奪い取った


「あああ!私の酒ぇ!……うう。」


隣に置いてあったチェイサーを取り一口飲んで落ち着く。

そして静かに話し始めた


「……医者の合コン行くって言ったの、覚えてます?あれで知り合った外科医の1人と連絡先交換したんです。

何度かデートしたんですが、その人、優しくて思いやりあって……すぐ好きになりました。言葉遣いも丁寧で、レディファーストで……何でもない日にプレゼント用意してくれたりして……」


「なんか……周みたいなやつだな。」


山本が言う

ギョッとする結城


「はあ!?」


自覚なし


松井は山本の言葉に頷き、更に続けた


「顔は……そこそこでした。でも私は彼が好きで好きで。

何度目かのデートの日、1度だけ……関係を持ちました。でもそれから連絡が無くなりました。私は好きだから許した。彼も好きだって言ってくれてた。それなのに……私は彼にとってただの遊びでした。久しぶりに本気で好きになったのに……」


辛そうに語る


「そうだったんだ。だから結城さんにその人の面影を重ねて八つ当たりしちゃったのか。」


「ああー。なるほど、だからあんなこと言ってたのかお前」

いつか職場で泣いていた日の事を思い出す山本。


結城だけは不本意で面白くない。

正直、そんなヤツと俺を一緒にするなんて名誉毀損にも程がある。

安達さんに嫌なイメージ植え付けるな。


「それ、自業自得ですよね?松井さんの。」


泣きそうな松井が睨みつける

全く意に返さない結城は綺麗な顔のまま頬杖をつく。


「男はね、相手のためにカッコつける場合と自画自賛する為にカッコつける場合とあるんですよ。多分彼は後者。

そこに引っかかって勝手に好きになって勝手に体を許したのは松井さん。

相手はラッキーとばかりにそこに食いついた。

そしたら彼女面してきたから慌てて逃げた。

……まあそんなとこでしょ。


ようは君の見る目がなかった。ただそれだけですよね?」



ナイフのように鋭い言葉

だが正論すぎて反論できない。

山本と澪桜も固まってしまった。


「それにそんなカスみたいな男と俺を同列に並べて考えてる時点で人を見る目が無さすぎる。俺はそんな出来た人間じゃないけど、倫理観だけはしっかりしてるつもりですよ?

だから君は……合コンもやめるべきですね。」


「は!?出会いすら諦めろってこと!?」


「そうじゃないですよ。……もっと人間性を見極めてから付き合えってこと。合コンなんて、大半は体目的の遊びで来る男ばかりだろうしね。もちろんそれだけとは限らないけど、見極められなければ同じ事。君には圧倒的に人を見抜く経験値が足りない。」


「でもそれじゃ……異性と出会えないっ」


「出会えるよ。君はまだ若い。焦るんじゃなく、人を見る目をまず肥えさせることですね。

自分が自分を大切にしないと……人に大切にして貰えないからね。」


全て話し終わった後、長いまつ毛を伏せストローに口をつけた。


「っ……結城さん……」


結城の的を得た言葉に思わず感動する松井。


2人のやり取り……

というか、結城の言動に呆気にとられる山本と澪桜


「っ……酷いこと言ってすみませんでした。軽率でした」


とうの松井はすっかり酔いも冷め、罪悪感に駆られてしっかりと謝罪した。

結城は笑って返す


「傷付いた後じゃ仕方ないしね。いいよ、もう気にしてない」


「お前……案外大人なんだなぁ……」


山本が感心した。


「結城さん……ポンコツじゃなかったんだ」


澪桜も感心する

結城の大人な価値観に触れ

感動すら覚えていた


「2人とも酷くない?」


悲しくなる結城


「結城さん!ありがとうございました!私目が覚めました!

結城さんは顔だけ壮絶なイケメンで中身気持ち悪いけど!いい人ですね!!気持ち悪いけど!!」


松井がニコニコしながら言った

うん。褒めてない


「はあああああああ!?!?!?!?」


さっきまで大人だったのに、台無し。


「あはははははははははは!きも……気持ち悪いっあはははははははははは!!たしかに!!!」


爆笑する山本


「山本さん!結城さんが傷付くから!!気持ち悪くないよ!ちょっと変なだけだよ!?」


澪桜が残念なフォローをした


「安達さんまでっ!!酷い!……俺気持ち悪いんだ……」


結城は一人凹んでいった。




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