52話 猫かぶり
「おい、周に電話しろよ」
刺身を食べながら山本が言う
「ぶふっ!それ名案です!」
笑いながら親指を立てる松井
「えっ!?なんで!?」
澪桜がたじろぐ
なぜか分からないが、この2人の前で電話したくない
……物凄く。
「誘わなきゃだろ?ほら、早く電話しろ」
「……じゃあ山本さんが誘えばいいじゃないですか!」
ふいっと目線を外しコーラを飲む
「……別にいいぜ?……でもお前、俺の前の周とお前の前の周の違いを知ってショック受けるなよ?」
不吉な事を言う。
そしてすぐさま行動に移した
スピーカーで電話する。
「……お前ら、声出すなよ?」
呼出音が鳴る
……
……
……
……中々出てくれない
延々と流れる呼出音。
仕事終わったよ!と先程LINUで言っていたのに。
澪桜がそう思っていると
プッ
結城がようやく電話に出る
「おう!周ぇ!今良いか??」
明るく話しかける山本。
『…………何?』
一瞬の静けさの後に
とても冷たい声が響く。
ピリッとした空気。
びっくりする澪桜
(え……これ……結城さん!?)
だが慣れているのだろう。
山本は気にせず続ける。
「今日、9時からカラオケ行かねぇか?」
単刀直入に誘った。
敢えて他のことは一切言わない山本
顔がニヤついてる
『……はぁ。なんで俺がお前なんかとカラオケ行かなきゃ行けねぇんだよ。
しょうもねぇ事で電話して来んな
馬鹿が。死ね!』
ブチッ
通話終了
言いたいことだけ言い放ち結城はあっさりと電話を切った
「……」
「……」
「……はいー!フラれましたー!」
両手を広げてケタケタ笑う山本
なにかの1発芸のようだ。
「キッツ!!!思ってた以上に結城さんキッツ!!!毒舌王子!!!」
爆笑する松井
自分の知る結城じゃなさ過ぎて
唖然とする澪桜。
(何今の……あんな口調で話すの!?え!?あれが素!?毒舌が凄い!!!)
理解不能に陥る
「はーーーーおかしっ!次お前の番だぞ?ひひひ!ほら、早く電話しろよ」
腹を抱えて笑う山本
澪桜に催促する。
流石にたじろいだ
「いっ……いや……あの様子だと私も断られますよ!?めちゃくちゃ不機嫌だったじゃないですか!?
嫌ですよあんな辛辣に対応されるの!!」
物凄い不安に駆られる
「「いやいやいやいや、まさかそんなハズない!」」
シンクロした2人が言う。
「大丈夫だから、アイツが噛み付くのは……ひひっ俺だけだよ。」
楽しそうに笑った
(結城さん……出てくれないんじゃないかな)
恐る恐る結城に電話する
……呼出音
鳴ったと思ったら今度はすぐに結城の声が聞こえた。
『もしもし!?安達さん?!どうしたんですか!?まだ飲み会のはずっ……何かあったんですか!?だっ大丈夫!?』
とても優しい何時もの結城の声
かなり心配してくれている。
思わずホッとした澪桜。
「えっと……あのね。」
安心して事の経緯を話そうとした。
するとスマホを奪われる
(スピーカーにしろ。)
結城に聞こえないように囁き
山本によってスピーカーにされた。
あわあわとする澪桜
目の前の2人は楽しそうにニヤついている
『……安達さん?話して?』
甘く低い声。
「!!!!!」
松井が心臓を殺られる。
思わず仰け反った
反則級の攻撃
先程の冷たさとは180°違う想像以上の甘さだ
澪桜は松井のオーバーリアクションに呆れつつ続きを話す
「……山本さんに誘われて、沙也加ちゃん……ほら、松井さん。あの子と3人でこの後カラオケ行こうってなったんだよ。……良かったら結城さんも一緒に行かないかい?」
『え??
俺も行っていいの?……安達さんがいいなら俺もついて行く。』
結城は素直に応える
子犬のようだ。
(……ギャップが凄い)
澪桜は思った
『……ん?……山本がさっき言ってたのはその事か。
なんかね、さっき電話かかってきたんですよ。
……あいつ言葉が足りなさ過ぎだろ。』
ボヤく結城
そこに山本が声を出した
「悪かったな!言わなくても察すると思ったんだよ。安達も来るか確認すればよかったじゃねぇか!
あの断り方はさすがの俺でも傷付いたわぁぁ〜死ねはないよぉぉ。」
『え!?!?なっ……なんで!?』
焦る結城
「お疲れ様でーす!今スピーカーになってまーす!結城さん、普段あんな辛辣なんですね!びっくりしました!!」
面白がって追い討ちをかける松井
この二人は似た者コンビ。
『っっ!!!!えっ……じゃあ……さっきの山本との電話……』
更に動揺する。
「……ごめん。あれ、スピーカーで山本さんかけてて
……私も聞いたよ。いや……しかし、あれが結城さんの素だったとは……」
澪桜が率直に感想を言った
『いやああああああ!やめてえええええ!!!違う!違うんだよ安達さん!!!!!あれは素じゃないよ!?』
電話口で必死に言い訳する結城
「いや、何が違うんだよお前。いっつもあんな感じで言うだろ。俺の事臭ぇとか死ねとか毎回毎回」
「え?いつもなんですか?やばっ笑」
プププっと笑う松井
『やめろぉぉぉぉ山本お前!!安達さんの聞いてる傍でっ!!!!!ぶっ殺すぞクォルァ!!!!!!』
はい。墓穴。
「おおお。……ある意味男らしい一面を垣間見たよ。結城さん。何かのヤンキー映画のようだ!」
物凄いド迫力の声に
パチパチと手を叩いて
感動する澪桜
『……安達さん……やめてお願い。……もう俺お母さんでいいから。』
静かにつっこんだ。




