5話 こんばんは。
車を店から少し離れたコインパーキングに停め、急ぎ足でBAL Lagoonに向かう。
繁華街を抜ける道すがら飲食店のガラス窓に映し出された自分に目が行く
また不安が過ぎる
(俺……変じゃないかな)
(なんて声かけよう)
(俺の事覚えてないよな……)
(なんて話振ろう?どんな話が好きかな。)
(……友達になれるかな)
いろんな思考が飛び交って心臓はダンシングインザ体外だ。
失礼、もとい爆発寸前だ。
スマホアプリを見ながらようやく店にたどり着いた。
息を切らさないよう早足程度にしたはずなのに緊張しすぎて全速力で来たかのように息が上がる……
(落ち着け……落ち着け。今日しくじったら……一生後悔する。絶対に失敗は許されないんだ。)
だって彼女は人生で初めて出会った唯一無二の存在なのだから。
ふーーーー……
と深呼吸をし、重い木製のドアを開ける。
ゆっくりと店内に足を運んだ。
店員と目が合った。すかさず寄ってくる
落ち着いた表情で少し微笑む
先程までの初々しい少年は影を潜め、
そこには柔らかい印象の男性が立っていた。
「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」
女性店員が頬を少し赤らめ上目遣いで聞く。
目線を落とし薄く口を開く
「いえ、連れに呼び出されましてね。探しても宜しいですか?」
ゆっくりと笑みを深め優しく尋ねた
そう、これが普段の完璧な甘いマスクを使いこなす姿だった。
そこに感情はない、ただ円滑にしたいだけ。早く彼女の元に行きたいから。
「……はい!ど……どうぞ」
ザワザワとし始める店内、女性客の色めき立った視線をものともせず、優雅に───そして一瞬で山本を見つけ出す
(……いた!)
そして山本の座るカウンターに並んで座る女性が二人。1番奥の女性。……夢にまで見たあの……涼し気な印象の美しい彼女。
一瞬心臓が跳ね上がったが、もう一度、静かに息を整えゆっくりと近づいて声をかけた。
「こんばんは、遅くなってすみません。」
優しく甘いテノールボイス、少し籠った感じの声が余計に色気を纏う。
松井が興味津々とばかりに振り返った。
一瞬止まり顎が外れるのではないかと思うほどあんぐりした顔で言う
「うっわ!!!!ものすっごいイケメン来た!!!!」
「だろ!?!?ほらー言っただろ!?謝れ松井!!」
ガハハ!となぜか自慢げな山本。
(こいつっ……もうちょい早めに言えよ!!
……まぁ今回に限り、感謝はしてるけどな)
そしたらもっと入念に準備出来たものを……と嬉々として笑っている山本を見て静かにため息をついた。
先に目が合った松井に向かい丁寧に挨拶をした。
そして。
松井の左隣の女性が……振り返る
念願の……彼女と──────目が合う。
一瞬息を飲んだ。
緊張が走る
ゆっくり息を吐き声を出した。
「初めまして。結城周と申します。」
深く微笑み、澪桜に挨拶をする。
「初めまして。私は安達澪桜と言います」
透き通るような少し高めの綺麗な声。
椅子から降りて頭を下げ丁寧に挨拶をしてくれた。
(……礼儀正しい人だな。)
余計に胸が高なる。
「……すみません、席が確保出来なくてカウンターなんですが、私の隣でも大丈夫でしたか?もしあれでしたら山本さんの隣……」
結城はその提案にギョッとする。
いやいやいやいや!!やめて!!!アラサーの男同士がこの狭いカウンターに隣り合わせなんてものすごく絵面がキツイから!!!
(いや……でも安達さんの隣りなんて、彼女が嫌か。)
そう思いなおし、残念そうに「そうですね」と言おうとしたら、すかさず声がした。
「おい。何の嫌がらせだよ勘弁してくれ」
山本が心の底から嫌そうに返事してきた。
(ナイス!山本!!!)
さっきまでなんかムカつくから脇腹に1発くれてやろうかと思っていたのに一気に神の如き存在に格上げだ。
「……私の隣でも大丈夫ですか?」
申し訳なさそうに心配した顔で聞く澪桜。
「はい。是非。もし安達さんがご迷惑でなければ……」
結城ははにかんで嬉しそうに答えた。
澪桜はその言葉を聞き少しだけ頬を弛める。
自分の荷物をずらし席を開けた
心臓が高鳴る
(……好印象だけでいい。残すんだ……頑張れ俺。)
結城は心の中で自分に何度も言い聞かせた




